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真相
しおりを挟む頻繁に出入りしているであろう侍女がカートを引き摺りお世話をしていた。最初にここへ入った時にはそんなものはなかった。事件直後はまだ痕跡が残る程出入りしていないのだから。
「どうしてこのような事を?貴女は愛されいたはずだわ」
「ふふ、まるで私が犯人のように言うのね。証拠は?」
「……残念ながら、だって一連の事件は皆さんが一枚嚙んでいるのでしょう?」
「まぁ、面白い妄想ね」
王女はおっとりと微笑むと淹れたばかりと見える茶を飲む。その後ろには侍女がいて蒼い顔をしている。震えているのかカタカタと音を立てていた。
「彼女は関係ないわ、ただ私の世話をしているだけ」
「なるほど、関係とは……認めると言う事で宜しいのですか」
「あらぁ、言葉の綾をそんな風に上げ足を取るなんて」
王女はあくまでしらばっくれる様子だ、確かに明確な証拠は何一つない。そして、トントンと指を鳴らして何かを考えている素振りをする。
「あ、姉上。ご無事で何よりでした」
「ああ、取って付けたように言わなくてもいいわ。貴方は私の事が苦手でしょう?」
「い、いえそんな事は」
アルドはその後なんと声を掛けて良いのかわからない様子だ、あれほど大人染みた言動をしていたというのに彼女が苦手であるというのは本当らしい。
「ねぇ、ガンダレイノ伯爵令嬢と二人きりにして貰えないかしら」
「え……何故で……いいえ、わかりました」
有無を言わさず人払いをさせた、さすが王族という威風である。アルドは最後まで後ろ髪を引かれていたが、とうとう外に出る他なかった。
***
「ありがとう、二人きりになれたわ」
「いいえ、さて聞かせたくないほどの事とはどのような?」
「……この国の因習に抵触することに他ならないわ。耳に入れるのも悍ましく憚れるものよ」
王女は辛い顔をしてそう切り出した。
感情を表に出すなど王族としてあり得ないことだ、余程のことであると彼女は身構えた。そして、息を一つ深く吐くと王女は告白した。
「アレはね……私の子なの」王女は視線を出入り口の方へ向けてそう言った。
「え?アレとは……まさかアルド王太子!?」
「ええ、そうよ」
冷えた紅茶を一口含むと王女は続ける。
「誰の子だって話になるわよね、……あの子の父親はダリオビート、私の父よ」
「なっ!?」
あまりの事に気分が悪くなったルチアナは脂汗を吹き出す、だが、その告白をした王女に比べればどうと言う事はないと彼女は居住まいを正す。
「やはり貴女は強い人ね、そしてとても優しい……あの子の出自は墓場まで持って行くつもりよ。言えないものね」
「ボニート王女、何故そんな事になったのですか?」
脂汗はやがて冷や汗と変わり背筋が凍り付いて行くのがわかった。辛すぎる現実だ。
「私は14歳であの子を出産したわ、……はぁ悍ましい!記憶から消したいほどに!」
心を殺されるとは此の事だとルチアナは涙した、彼女の尊厳を踏みにじる愚かな行為と言える。気が狂わなかったのが奇跡に近い。
「妊娠したのは予定外だった、気が付いた時には遅すぎたわ。そして、側室の子として誕生して、……可哀そうに側室は命を奪われた。すべてを闇に葬るためにね」
「なんてこと……では因習とは……その近親相姦ですか?」
「ええ、その通りよ。私は王女として生を受けてからその犠牲になる為に生きてきた。兄達も私を辱めたわ、さも当たり前のようにね!」
そこまで言ってから王女は耐えきれなくなったのか嗚咽をを漏らす。
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