僕は隣国王子に恋をする

泡沫の泡

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第2章 僕はオリヴァー王国第一王子の誕生会に出席したくない

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パーティーの後は各来賓に部屋が与えられ、そこで一夜を明かしてから帰国となる予定であった。
ゲスト用の部屋だとしても、やはり豪華絢爛で自分には違和感があった。

「すごいお部屋だね、雪姉さま」

そうねぇと漏らす姉さまは、ぱっと顔を上げると囃したてるように言った。

「ところで結月、いつの間にルーク様と仲良くなっていて、姉さまは驚いたわ!」

「あ……それは」

「しかも、ルーク様のあんな優しい顔初めて見たわ! やっぱり、結月の美しさに惚れてしまったのではないかしら!!」

「もう、姉さまったら何を言ってるの」

珍しく興奮した姉さまにプッと吹き出して笑う。

「まぁ! これはほんとうに滅多にないことなのよ!」

わかったよ、と返事をしてベッドに横になる。
わ、ふかふかだ。
よく眠れそう。

「ほら、姉さまも横になろう。疲れたでしょう」

僕に倣って、姉さまもふかふかのベッドに沈む。
お互いに顔を見合わせる。

「おやすみ」

挨拶を交わし、深い眠りに落ちていった。




さて。
どうやって、ユヅキを手に入れようか。

やはり、ユヅキはオリヴァー城にいた男女からも話題に上がっていた。白銀の妖精、天使、様々な呼び名がつけられていたが、どれもふさわしいと思う。
宰相と呼ばれる私にふさわしいあの美貌。

3人の部下を連れ、暗い廊下を歩く。
頭の中で作戦を練る。
タイムリミットは明日の女中共が起きる時間まで。
深夜なら騎士の目さえ欺けば、大丈夫であろう。
ユヅキには睡眠薬と麻痺薬を、ユキ様には睡眠薬を注射して、ユヅキを屋敷まで馬車で連れ帰って、それから、それから。

気がつくとユヅキとユキ様の眠る部屋の目の前に着いていた。

さぁ、作戦決行だ。




女中の一日は長い。
新米の私なら尚更のことだ。
心配性な私は、勤務時間外であってもできることをやってしまいたい性分。
今日は少し遅い時間まで残ってしまった。

ふと、15メートルほど前をイーサン宰相が部下を引き連れて歩いているところを発見する。
なにか怪しい物品も持っているが、医療器具だろうか。
なぜこんな時間に?

ある一室の前で立ち止まった。
物陰に隠れて、私は様子をうかがった。
あそこは、日輪の国のお二人がいる部屋だ。

これは一大事!
国王陛下に報告せねば!!
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