僕は隣国王子に恋をする

泡沫の泡

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第4章 僕は療養のためにオリヴァー王国に留まるらしい

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結局洋服の代金までルークに払ってもらってしまった。
ルークは満足そうであるが、僕は気が収まらなかった。

「悪いよ、こんな。……でも、ありがとう」

申し訳なさそうにお礼を述べる。
ルークは満面の笑みを崩さず、僕の頭をなでた。
本当に今日は機嫌がいい様子だ。

「でも、ほんとうに、ルークのお金はルークのために、つかって」

ルークの顔を覗き込むと、優しい瞳とぶつかった。

「……ユヅは無欲だな。私に近寄る人間とはまた違う」

ルークは王子だからゆえ、人間関係には人一倍敏感なのであろう。
王家の権力を取り入れるためだけに近づく人間、お金がほしいだけの人間、その容姿に好意を持っているだけの人間。
きっとルークは、誰かを信じきることが難しい立場にあるんだ。
でも僕は、その誰とも違う。
僕は、ルークの友人として伝えないといけない気がした。

「……ルークは、そのままでいいんだよ。僕はたとえ、ルークが王子じゃなくても、お金を持ってなくても、顔に大きな怪我を負ったとしても、ずっと仲良くするよ」

だから、そんな悲しいこと言わないで。
ルークを抱きしめ、背中を撫でてみる。
おずおずとルークも抱きしめ返してくれた。




二人で並んで歩き出す。
そろそろお腹が減ってきた。

「……ユヅは甘いものが好きだったな」

覚えていてくれたことが嬉しくて、うんと答えた。
不意にルークに手を絡め取られ、そのまま先を進んでいく。
握られた手がこそばゆい。

「あの、ルーク、手が」

流石に恥ずかしくなって顔に熱が集まる。
繋がれた右手と、先を歩くルークの姿に胸が高鳴った。

連れられたのは、オリヴァー王国で有名なパンケーキ屋。
雑誌で見たことがある店だった。

「ユヅが、国民の間で人気なものを食べたいと言っていたから」

ルークに不釣り合いなかわいいファンシーなお店。
入るのも勇気いるだろうに、僕を喜ばせようとこのお店を選んでくれたのだろうか。
ルークは少し照れくさそうだ。

「ありがとう、ルーク。とっても嬉しい」

パンケーキは始めてだ。
日輪の国には羊羹やねりきりなど日輪菓子と呼ばれるものしか基本的にはない。
貴重な体験である。

僕はバナナとクリームの、ルークは僕が迷っていたミックスベリーとクリームのパンケーキを選んだ。
ルークって甘いもの嫌いじゃなかったかな。
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