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ロゼット公爵家にて 4
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三人の懐疑的な視線を浴びながら、レナート様は申し訳なさそうに白状されました。
「・・・媚薬なのです・・・。」
「なっ!?」
「えっ!?」
お茶の香りから感じ取った妙な臭いからして、間違いなく毒だと決めつけていた私とヴィスタは、媚薬と聞いて一瞬言葉を失ってしまいました。まさかレナート様がそのような事を考えるなど、夢にも思っていなかった私は、目の前で唇を噛みしめて俯いている彼を、呆然と見つめることしかできません。
同じく、驚きを隠せないでいたエステルダ様でしたが、その瞳にカッ!と力を込めると、眉を吊り上げてレナート様を睨みつけました。
「どういうことです。」
まるで地を這うような恐ろしい声が、静まり返った部屋の中に重く響きました。
「何故、このお茶に媚薬なんて物が入っているのです!!理由を説明しなさい!!」
「・・・・・。」
「レナート!!」
視線を床に落とし、しょんぼりと肩を落とすレナート様でしたが、意を決したように顔を上げると、エステルダ様に顔を向けました。
「どうしても既成事実を作りたかったのです・・・。」
「なっ!?」
「私は!!もう二度と、アリッサを失いたくないのです!」
「何を馬鹿なことを・・・。 婚約は王命です!!」
「もっと確実なものがほしかったのです。私は、もうアリッサと離れたくない!今直ぐにでも結婚したいのです。・・・ですから、既成事実を作れば、私の卒業まで待たなくても・・・。」
「アリッサ様っ!!そこで顔を赤くして、クネクネしない!!」
「ですが、姉上!!今だって、毒と勘違いしたアリッサは、なんの未練もなく私を捨てて国を出ると言い出しました。自分が国から消えれば、王命すらも効力は消えると言って・・・。」
「ですから、」
「おだまりなさいっ!!毒殺されるくらいなら、わたくしだって国から逃げます!」
「くっ・・・。」
「・・・・・。」
気まずい沈黙に、誰もが視線を逸らしてどうしたらいいのか分からない顔をしていました。
「取りあえず・・・、アリッサ様に謝りなさい。」
嫌な空気に耐えられなくなったのでしょうか、エステルダ様が謝るようにと、レナート様に言いました。
そうしてレナート様は、決して毒ではないことと、卑怯な真似をしてしまったことを、皆の前で頭を下げて謝罪したのでした。
目の前で怒られているレナート様には申し訳ありませんが、媚薬を使ってまで私のことを想ってくださったそのお気持ちをとても嬉しく思ってしまいました。それ程までの愛情を頂けたことに、私の心は感動で震える思いでした。
・・・ですが、媚薬と毒を勘違いして、勝手に要らぬ妄想を広げた挙句、国から出て行くとまで言ってしまった私は、羞恥に顔を歪ますよりほかなく・・・。
それを嫌われてしまったと勘違いしたレナート様の土下座を前に、どうしたら誤解が解けるかと悩んだ私は、自分が出来る限りの微笑みを向けることにしたのです。
「レナート様、こんな大雨で・・・雛達は大丈夫でしょうか。明日、庭園のあの場所に、もう一度連れて行っていただけますか?」
「・・・アリッサ?」
「来年は、あのこ達が親となって戻って来ますね。・・・レナート様、そうやって毎年、二人で見届けて行きましょうね。」
「・・・アリッサ。」
そうして私は、またもやレナート様を泣かせてしまうのでした。
「ちなみに・・・、お二人には媚薬も効かないのですか?」
エステルダ様がヴィスタに尋ねています。
「うーん・・・。毒の耐性はありますが、媚薬は試したことがないので・・・。」
「ふーん、そうですの・・・。ところでレナート?この媚薬はどこで手に入れたのです?なんというお店ですか?・・・して、その効果とは、どのくらいですの?」
「・・・姉上?何故そんなに興味を持って・・・」
「どれくらいの量で効果がありますの?臭いでバレるなら、味の濃いスープでしたら大丈夫かしらね・・・。」
「姉上!!」
何かを察知したレナート様の声に、エステルダ様は何も言わずに美しく微笑むのでした。
「・・・媚薬なのです・・・。」
「なっ!?」
「えっ!?」
お茶の香りから感じ取った妙な臭いからして、間違いなく毒だと決めつけていた私とヴィスタは、媚薬と聞いて一瞬言葉を失ってしまいました。まさかレナート様がそのような事を考えるなど、夢にも思っていなかった私は、目の前で唇を噛みしめて俯いている彼を、呆然と見つめることしかできません。
同じく、驚きを隠せないでいたエステルダ様でしたが、その瞳にカッ!と力を込めると、眉を吊り上げてレナート様を睨みつけました。
「どういうことです。」
まるで地を這うような恐ろしい声が、静まり返った部屋の中に重く響きました。
「何故、このお茶に媚薬なんて物が入っているのです!!理由を説明しなさい!!」
「・・・・・。」
「レナート!!」
視線を床に落とし、しょんぼりと肩を落とすレナート様でしたが、意を決したように顔を上げると、エステルダ様に顔を向けました。
「どうしても既成事実を作りたかったのです・・・。」
「なっ!?」
「私は!!もう二度と、アリッサを失いたくないのです!」
「何を馬鹿なことを・・・。 婚約は王命です!!」
「もっと確実なものがほしかったのです。私は、もうアリッサと離れたくない!今直ぐにでも結婚したいのです。・・・ですから、既成事実を作れば、私の卒業まで待たなくても・・・。」
「アリッサ様っ!!そこで顔を赤くして、クネクネしない!!」
「ですが、姉上!!今だって、毒と勘違いしたアリッサは、なんの未練もなく私を捨てて国を出ると言い出しました。自分が国から消えれば、王命すらも効力は消えると言って・・・。」
「ですから、」
「おだまりなさいっ!!毒殺されるくらいなら、わたくしだって国から逃げます!」
「くっ・・・。」
「・・・・・。」
気まずい沈黙に、誰もが視線を逸らしてどうしたらいいのか分からない顔をしていました。
「取りあえず・・・、アリッサ様に謝りなさい。」
嫌な空気に耐えられなくなったのでしょうか、エステルダ様が謝るようにと、レナート様に言いました。
そうしてレナート様は、決して毒ではないことと、卑怯な真似をしてしまったことを、皆の前で頭を下げて謝罪したのでした。
目の前で怒られているレナート様には申し訳ありませんが、媚薬を使ってまで私のことを想ってくださったそのお気持ちをとても嬉しく思ってしまいました。それ程までの愛情を頂けたことに、私の心は感動で震える思いでした。
・・・ですが、媚薬と毒を勘違いして、勝手に要らぬ妄想を広げた挙句、国から出て行くとまで言ってしまった私は、羞恥に顔を歪ますよりほかなく・・・。
それを嫌われてしまったと勘違いしたレナート様の土下座を前に、どうしたら誤解が解けるかと悩んだ私は、自分が出来る限りの微笑みを向けることにしたのです。
「レナート様、こんな大雨で・・・雛達は大丈夫でしょうか。明日、庭園のあの場所に、もう一度連れて行っていただけますか?」
「・・・アリッサ?」
「来年は、あのこ達が親となって戻って来ますね。・・・レナート様、そうやって毎年、二人で見届けて行きましょうね。」
「・・・アリッサ。」
そうして私は、またもやレナート様を泣かせてしまうのでした。
「ちなみに・・・、お二人には媚薬も効かないのですか?」
エステルダ様がヴィスタに尋ねています。
「うーん・・・。毒の耐性はありますが、媚薬は試したことがないので・・・。」
「ふーん、そうですの・・・。ところでレナート?この媚薬はどこで手に入れたのです?なんというお店ですか?・・・して、その効果とは、どのくらいですの?」
「・・・姉上?何故そんなに興味を持って・・・」
「どれくらいの量で効果がありますの?臭いでバレるなら、味の濃いスープでしたら大丈夫かしらね・・・。」
「姉上!!」
何かを察知したレナート様の声に、エステルダ様は何も言わずに美しく微笑むのでした。
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