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6章 波乱のヴェルトーガ
120 水のタイデリア
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「一応確認なんだけど、これって断る事は可能なの?」
無駄とは思うが一応聞いておく。
「我が主は大変寛容なお方です。もし断られてもそれでお怒りになるとは思いません。
ただ私個人と致しましては、お勧めできません、と申し上げておきましょう」
でしょうねー。
まぁ貴族の不興を買うのは得策ではないのだが。
「突然何の用なのかな?タイデリア・ディオーヌ様だっけ。
今までお会いしたことないはずだよな?」
「我が主の考えを代弁する事はで来ません。
私はあくまで手紙を届けに来ただけですので。
詳細はこちらをご確認ください」
仕方ないので手紙を受け取る。
「手紙に詳細が記されておりますが、3日後に迎えを寄越します。
それまでに『港湾都市ヴェルトーガ』に滞在する準備を整えていただきたい。
ではこれにて失礼します」
去っていく蛇男を見送った。
港湾都市ねぇ?海か川の近くにあるってことなのかな?
家に戻って今の話をみんなに伝える。
手紙は自分で読む前にシンに渡しておく。
「タイデリア……。『水のタイデリア』ですか。しかも当主直々の招待。
なんといいますか、大物に目をつけられてしまいましたね」
「用件は書いてあるの?兄さん」
「いや、僕たちに会いたいとしか書かれていないね。
3日後は向こうお抱えの長距離移動魔法使いを貸してくれるそうだよ。
数日程度は滞在できる準備をして欲しいみたい」
へぇ、長距離移動魔法を体験できるのはちょっと楽しみだな。
しかし『水の』、ねぇ。四大精霊家の一角で間違い無さそうだ。
それでいてハロイツァと違って当主直々のお誘いってのはヤバいな。
ハロイツァみたいに個人と敵対するならまだしも、不興を買ったら家全体と敵対する可能性がある。
「悪い。水のタイデリア家と当主のディオーヌについて、知ってることがあったら教えて欲しい。
俺は何一つ分かってないと思ってくれ」
「では私が解説しようか」とジーンさんが口を開く。
「四大精霊家、水のタイデリア家。現当主のディオーヌはまだ20代じゃなかったかな。
水のタイデリア家は代々女性が当主を務める家でね。
港湾都市ヴェルトーガを中心に、主に水路を使った物流を支えている。
市民の評判も悪くないし、運河と都市を融合させたような町並みは美しいものだったよ」
んー、行ったことはないけれど、パッとイメージするのはヴェネツィアかなぁ。
「ヴェルトーガにも迷宮があるんだけど、ベイクのような積層型の迷宮ではないんだ。
迷宮内は別空間になっていて、階層数が少ない分、1つの階層が非常に広い『開放型』迷宮なんだよ。
なので1階層からも色んな魔物が出るから、初心者には厳しい迷宮だと言われているね」
「へぇ?迷宮にも種類があるんだ」
「ああ。だから冒険者の等級の基準も、ベイクとは変わってくるだろうから気をつけたほうがいいかもね。
勿論ベイクで昇級した等級はそのまま適応されるんだけど」
なるほど。基準が変わるから、同じ等級でも戦闘力が変わってくる可能性があるのか。
「とまぁこんな感じかな?タイデリア家は代々、人類生存圏の拡張よりも現在の領地を重視する方針の家で、現当主のディオーヌ様にも引き継がれているはずだ。
あまり悪い噂も聞いたことがないし、そこまで警戒しなくてもいんじゃないかい?」
でもカルネジア家も、素晴らしい家とか当代様とか言われてる割にはやってることがクソだったからなぁ。
市民に好かれてるってのは良い事だし、カルネジアみたいなクソ貴族でないことを祈りたい。
「まぁ断れるものでもないだろうしなぁ。しゃーないか。
留守中はジーンさんとリンシアさんに家の管理は任せてもいいよね」
「ええ、勿論。旅行のつもりで楽しんで来たらいいんじゃないかしら」
そんなノリで楽しめる招待だといいんだけどねぇ……。
「トーマ、どうする?」
「どうするも何も、断る理由も無さそうだからなぁ。
招待自体は受けるしかないな。あとは可能な限り備えておくくらいか?」
「装備の更新間に合うかなー?」
「それと、行く前にトーマは6等級に上がった方が良さそうですよね」
結構やれることはありそうだな。
「あとは行く前にスキル神殿にも寄っておきたいよな。
トルネに身体能力強化は覚えさせておきたいし」
「そうですね。出来れば魔力感知も覚えたいところです。
バッドオーメンがいきなり出てくるとびっくりするんですよねぇ……」
「魔力感知があってもびっくりする時あるからねー。
今日のうちにスキル神殿行っておく?」
「何が待っているか分からないけど、出来ることはやっていこう。
もし相手取ることになった場合は、ハロイツァなんかよりずっと格上の相手だからね」
タイデリア家が前評判通りの素晴らしい貴族であることに期待しつつ、出来る事はやっておく。
結局はいつも通りの方針に決まったところで、今日も一日頑張りますか。
無駄とは思うが一応聞いておく。
「我が主は大変寛容なお方です。もし断られてもそれでお怒りになるとは思いません。
ただ私個人と致しましては、お勧めできません、と申し上げておきましょう」
でしょうねー。
まぁ貴族の不興を買うのは得策ではないのだが。
「突然何の用なのかな?タイデリア・ディオーヌ様だっけ。
今までお会いしたことないはずだよな?」
「我が主の考えを代弁する事はで来ません。
私はあくまで手紙を届けに来ただけですので。
詳細はこちらをご確認ください」
仕方ないので手紙を受け取る。
「手紙に詳細が記されておりますが、3日後に迎えを寄越します。
それまでに『港湾都市ヴェルトーガ』に滞在する準備を整えていただきたい。
ではこれにて失礼します」
去っていく蛇男を見送った。
港湾都市ねぇ?海か川の近くにあるってことなのかな?
家に戻って今の話をみんなに伝える。
手紙は自分で読む前にシンに渡しておく。
「タイデリア……。『水のタイデリア』ですか。しかも当主直々の招待。
なんといいますか、大物に目をつけられてしまいましたね」
「用件は書いてあるの?兄さん」
「いや、僕たちに会いたいとしか書かれていないね。
3日後は向こうお抱えの長距離移動魔法使いを貸してくれるそうだよ。
数日程度は滞在できる準備をして欲しいみたい」
へぇ、長距離移動魔法を体験できるのはちょっと楽しみだな。
しかし『水の』、ねぇ。四大精霊家の一角で間違い無さそうだ。
それでいてハロイツァと違って当主直々のお誘いってのはヤバいな。
ハロイツァみたいに個人と敵対するならまだしも、不興を買ったら家全体と敵対する可能性がある。
「悪い。水のタイデリア家と当主のディオーヌについて、知ってることがあったら教えて欲しい。
俺は何一つ分かってないと思ってくれ」
「では私が解説しようか」とジーンさんが口を開く。
「四大精霊家、水のタイデリア家。現当主のディオーヌはまだ20代じゃなかったかな。
水のタイデリア家は代々女性が当主を務める家でね。
港湾都市ヴェルトーガを中心に、主に水路を使った物流を支えている。
市民の評判も悪くないし、運河と都市を融合させたような町並みは美しいものだったよ」
んー、行ったことはないけれど、パッとイメージするのはヴェネツィアかなぁ。
「ヴェルトーガにも迷宮があるんだけど、ベイクのような積層型の迷宮ではないんだ。
迷宮内は別空間になっていて、階層数が少ない分、1つの階層が非常に広い『開放型』迷宮なんだよ。
なので1階層からも色んな魔物が出るから、初心者には厳しい迷宮だと言われているね」
「へぇ?迷宮にも種類があるんだ」
「ああ。だから冒険者の等級の基準も、ベイクとは変わってくるだろうから気をつけたほうがいいかもね。
勿論ベイクで昇級した等級はそのまま適応されるんだけど」
なるほど。基準が変わるから、同じ等級でも戦闘力が変わってくる可能性があるのか。
「とまぁこんな感じかな?タイデリア家は代々、人類生存圏の拡張よりも現在の領地を重視する方針の家で、現当主のディオーヌ様にも引き継がれているはずだ。
あまり悪い噂も聞いたことがないし、そこまで警戒しなくてもいんじゃないかい?」
でもカルネジア家も、素晴らしい家とか当代様とか言われてる割にはやってることがクソだったからなぁ。
市民に好かれてるってのは良い事だし、カルネジアみたいなクソ貴族でないことを祈りたい。
「まぁ断れるものでもないだろうしなぁ。しゃーないか。
留守中はジーンさんとリンシアさんに家の管理は任せてもいいよね」
「ええ、勿論。旅行のつもりで楽しんで来たらいいんじゃないかしら」
そんなノリで楽しめる招待だといいんだけどねぇ……。
「トーマ、どうする?」
「どうするも何も、断る理由も無さそうだからなぁ。
招待自体は受けるしかないな。あとは可能な限り備えておくくらいか?」
「装備の更新間に合うかなー?」
「それと、行く前にトーマは6等級に上がった方が良さそうですよね」
結構やれることはありそうだな。
「あとは行く前にスキル神殿にも寄っておきたいよな。
トルネに身体能力強化は覚えさせておきたいし」
「そうですね。出来れば魔力感知も覚えたいところです。
バッドオーメンがいきなり出てくるとびっくりするんですよねぇ……」
「魔力感知があってもびっくりする時あるからねー。
今日のうちにスキル神殿行っておく?」
「何が待っているか分からないけど、出来ることはやっていこう。
もし相手取ることになった場合は、ハロイツァなんかよりずっと格上の相手だからね」
タイデリア家が前評判通りの素晴らしい貴族であることに期待しつつ、出来る事はやっておく。
結局はいつも通りの方針に決まったところで、今日も一日頑張りますか。
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