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7章 更なる強さを求めて

185 音魔法の地位向上

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 いつも通り目が覚めて、寝ている2人に軽く悪戯を済ませたら厨房に向かう。
 リンシアさんは毎日夜明け前に起床していると言っていたので、先に厨房に入るのは諦めました。

 今日からは各宿舎から1名ずつ、つまり4名が追加で食事の準備を手伝う。リンシアさん、俺、ハル、リーネ、栄光の運び手から3人、カンパニーから4人と、11人の大人数での朝食の準備だ。なお半数以上は調理経験がないのであまり役には立たない模様。
 自炊が出来るようにあると、何故かカンパニー参加費よりも高額の食費が支給されるので、みんなやる気に満ち溢れている。始めはやる気さえあればいい。

 朝食を食べて、大人組と一緒にスキル神殿に向かう。
 大人組はリーネを合わせて7人、リーネは祝福の儀を受ける意味がないので除外。ということで、11人で同時に祝福の儀を受ける予定だ。
 グレンガは10人くらいまではオッケーって言ってたし、11人なら1回でいけるだろ多分。うちのメンバーはみんな小柄で細身だしな。


「しかし、本当に俺たちも一緒に受けていいのか?金貨6枚分も浮いてしまうことになるんだが……」

「金貨6枚もかかるからこそ、無駄にするのは勿体無いだろ。それにお前らがスキルを獲得できると決まったわけでもないんだから、そんなに恐縮しなくてもいいって」


 お前らが強くなるほど、俺の利益だって大きくなるんだし、ね。

 スキル神殿に到着。
 グレンガに11人を1回で行けるか確認したら、ちゃんと了承してもらった。せふせふ。


「10人というのはあくまで目安だからな。トーマ殿のパーティは細身の者ばかりだし、11人でも魔法陣からはみ出るようなことはないだろう。ならば問題ない」


 なんだかんだと柔軟に対応してくれるリンカーズのサービスは使いやすくていいな。


「異邦人は任意のスキルを取れるけど、シンたちはどうやってスキルが選ばれてるのか分からないんだよな。
 とりあえず今回は『攻撃範囲拡張:小が欲しい~~!』って祝福の儀の間意識してみて欲しい。今の俺たちに一番必要なスキルだと思うから」


 これで3人とも狙ったスキルが取得できたなら、リンカーズの住人もある程度は任意でスキルが取得できるってことになると思う。
 ま、検証数少なすぎてあまり参考には出来ないけど。


「ラーゼリアよ!大いなるその力を今ここに示し給え!」


 早速始まる祝福の儀。11人でも魔法陣にはまだ余裕があった。
 ま、他のパーティと一緒に祝福の儀を受けるのは、これで最後になると思うけどな。


 さてさて4443SPもあるので、2000SPを消費して攻撃範囲拡張:小を間違いなく取得する。残り2443SP。
 これが2500SP行ってれば、もうちょっと選択肢が増えたと思うんだけどなー残念。

 深層集中がかなり気になるけど、ここは500SPの魔法範囲拡張:中でストレージの容量を増やして、1500SPの魔力量増加:中で魔力の底上げをしよう。
 深層集中は魔力を消費して使用するタイプのスキルだと思うしね。50階層の戦闘では魔力の消費量が多いし、攻撃範囲拡張でも魔力消費があることを考えると、基本性能の底上げをするほうが、結局は探索の速度が上がる気がする。

 新たに取得可能になったスキルは1つだけ。


◆◆◆◆◆◆

攻撃範囲拡張:中 (必要SP20000)
攻撃に魔力を纏わせ、効果範囲をより拡張する。
任意発動型。

取得条件
攻撃範囲拡張:小を取得すること。
自身の5倍以上の身長を持つ魔物を倒すこと。

◆◆◆◆◆◆


 必要SPよ……。とうとう5桁いったか。と言っても現時点で1日1000SP以上稼げてるわけだし、全然射程圏内ではあるな。
 取得条件を満たしたのは……、やっぱグランドタートルかな?そう考えるとグランドドラゴンと戦う前に中まで取れる可能性はあるのか。


「リーゼリアよ!大いなるその力を今ここに示し給え!」


 続いて識別である。選別中はやることがないので、次に取るスキルはなにがいいかなぁと考えて過ごす。


「俺も、俺もついにスキルを覚えることが出来たんだ……!」


 スキルを覚えられなくて迷宮に入れなくなっていた『アウタオ』が泣いている。感無量だろう。
 グレンガは今回も識別の説明を放棄してとっとと出て行った。まぁ文句はないが。

 アウタオに限らず、ずっとソロで燻っていた『ソリスタ』と、どん臭いってだけでパーティを追放された『ドルメア』も、泣きはしないが識別の書を見つめたまま硬直している。

 他の3名は別々のパーティで専属のポーターとして雇われているらしい。ポーターはあまり待遇は良くないそうなので、戦えるようになって正式にパーティ加入するのが目標だそうだ。


「おう。スキルを確認したら魔力を通せば識別の書は処分できるぞ。
 もし魔力を流すところまで覚えれなかったのなら、俺が代わりに処分してやる」

「いや、ありがとう、大丈夫だ。魔装術まで取れたからな」

「ありがたい……。本当にありがたい……」

「まさか本当に俺もスキルが覚えられたなんて……。これでまた迷宮に入る決心がついたぜ!」


 3人ともまだ20代前半から半ばといったところだが、リヴァーブ王国基準だとがっつり中年扱いだ。おっさんとして、3人の門出は祝わざるを得まい。


「ソリスタ。アウタオ。ドルメア。お前たちは今のところ1人で迷宮に入っているらしいから、俺から1つ贈り物をしようと思う」


 3人に音魔法のスクロールを手渡す。


「これは音魔法のスクロールだ。リヴァーブ王国では馬鹿にされがちな音魔法ではあるが、実はソロ冒険者の強い味方なんだ。
 最初は難しいかもしれないけど、音魔法を使って周囲の音を捉えると、背後から襲ってくる魔物に不意打ちを受けることがなくなるんだ。
 それに音魔法は戦闘には使えないとは言え、魔力を増やす訓練には充分に使えるんだ。音魔法だと馬鹿にせずしっかり使いこなせるよう訓練して、1人でも迷宮に挑める強さを手に入れて欲しい」

「音魔法に……、そんな力があったのか……?」

「音魔法のスクロールの相場は銀板6枚だ。俺が音魔法を覚えたのは3階層。3階層で安定して稼げるようになれば、銀板なんてすぐ稼げるようになる。
 3階層以上に進めるようになって、いつか銀板6枚返しに来い。それが出来たら、お前らは1人でもやっていける立派な冒険者になってるだろ」

「ああ、必ず返してみせるさ!」


 3人の顔が明るい。スキルを得られたことで自信もついたのかもしれない。

 まぁソロなら3階層を安定して回ってれば、銀板6枚なんてすぐ返せるようにはなると思うけどな。
 ソロで集団戦を問題なく制圧できるようになれば、5階層以降に進出するのも射程に入るだろ。

 おっさん仲間として、ぜひとも3人には成長して成功して欲しいと思ってる。
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