異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
432 / 580
10章 壁外世界

392 水中スキル

しおりを挟む
 水中用スキルを取得したので、海に潜ってスキルの検証に移る。
 
 まずは『水中視』。検証も何も、潜って目を開いたら、陸上と変わらない視界になっていた。
 『暗視』と『遠目』の2つも併用することが可能だったので、有用性の高いスキルだ。

 次に『水中呼吸』。始めこそ怖かったけど、1度試してみたら、陸上と全く変わらない呼吸が出来てしまった。
 魔力消費も起こらないようなので、水中で魔力回復することも可能だ。


 そして思ったよりも不思議な能力になったのが『環境適応:大』である。
 水中での水の抵抗をほぼ受け付けなくなり、陸上と変わらない速度で動作できるようになった一方で、全く意識していないと水圧と一緒に浮力も無効化してしまうらしく、放っておくと底まで沈んでしまう。
 泳いだりすると必要な抵抗を感じたり、浮上したいと思うと浮力が戻ってくるんだけど、なかなか扱いが難しくなってしまった気がする。
 水圧をほぼ無効化出来ているので、深海バトルは問題がなくなったわけだが。


「水中戦自体は問題なさそうだね。トーマがせっかく教えてくれた泳ぎはあまり必要なくなっちゃったけど。
 水は確かに存在していて触れているのに、陸上と同じ動きが出来るのは違和感が凄いけどさ」

「そうだな。こうなってくると重要なのはやはり緊急回避方法かもな。
 ランドビカミウリ戦でもユリバファルゴア戦でも、ジャンプの重要度は高かった。
 水中だと空間魔法はほぼ使えないから、別の手段を考えないといけないな」


 水の抵抗がないおかげで、生活魔法でもそれなりに高速移動は出来ているんだけど、結局はそれなりの速度でしかない。緊急回避に使える速度を目指すなら、それなりで妥協するわけにはいかない。


「それと船の用意と、今回もなにか海の生物と仲良くなりたいところだよね。スナネコたちの能力を考えると、原生生物の存在は無視できないよ」

「確かにな。海の生物っていうと何が来るかな。戦闘力で言えば鯱とか来てくれると嬉しいんだけど」

「シャチ? それってどんな生物なの?」

「ん、単純に俺らが居た世界の水中動物の中の最強格で、人懐っこい生物なんだよ。生態としてはほにゅ……、いや、魚みたいなもんだな。かなり頭は良いらしいけど」


 哺乳類って言っても多分通じないよな? なら魚でいいだろ。


「へぇ~。頭が良くて人懐っこいって聞くと、ペルやスナネコたちを連想させるね。実際に遭遇できるかは分からないけど、ちょっとだけ楽しみになってきた」

「俺もシャチやイルカとかと仲良くなれたら嬉しいんだけど、なんせ世界が違うからなぁ。どんな生物と出会えるかは俺も楽しみだ」


 水中で陸上と同じ動きが出来るようになったのなら、慣らしはこれ以上必要ない。
 この先は開発、発明が必要になってくる段階だ。
 ジャンプが使用不可能な水中において、なにか水中ならではの要素が欲しい。

 海からあがって、商工ギルドに向かう。


「タイデリア家から船職人を紹介してもらうことになってるんだけど、話は通ってるかな?」

「えぇえぇ聞いておりますよ。今連れて来ますね」


 商工ギルドで紹介されたのは、ヴェルトーガの運河で水運に使用されている船を作っている職人だった。
 如何にも大工さんといった風の、体格の良い初老の男だ。


「ディオーヌ様から話は聞いとるよ。なんでも海に出たいとか?
 しかし、海に出る船なんて作った事はないからのう。正直言って期待に沿えるかどうか」


 ヴェルトーガで1番の船大工という話だったか、思ったより謙虚な態度だった。
 でもそうか。運河で運用する船と、外洋に出るための船では、根本的に別物になってしまう。船大工と一括りにされて困るのはこの人なんだな。


「勿論ディオーヌ様には最大限協力したいのは山々なのだがの。
 とりあえずうちで作っとる船と、実際に船が運航するところを見てもらおうか」


 まずは造船所に案内してもらう。気分は完全に社会科見学だ。

 不勉強だから造船の知識なんてないけど、確か地球では注文が来る前に、殆ど骨組みを完成させた物をストックしてあるとか何かの作品で読んだ気がするけれど、ヴェルトーガの造船所には出来上がっている船はなく、船の部品らしい大型の木材や金属が保管されている。


「船を作るのは、現在使用している水運船が壊れたりした時だな。普段は作らん。需要もないしの。
 注文が来たらパーツを運河まで運び出して、そこで組み立てていくのだよ」


 なるほどねぇ。
 最近覚えたリモデリングがあれば、パーツの接合は簡単だもんな。
 あえて船の形にして保管しておかなくても、組み立てはすぐに完了するわけか。


「そんで、あれがうちで造ってる船だなぁ」


 船大工の指した先には、大型で幅広の、如何にも運搬用に造りました、という船が停泊して荷物を降ろしているところだった。
 素人目に船の良し悪しなんて判断はつかないけれど、完全に水運目的に造られた船でエリアキーパーと戦えるかと言えば、微妙だろうな……。

 ん? でもあの船は帆船じゃないな? 帆やマストがない。ということは別の動力があるのか?


「済みません。船について全く知らないので教えて欲しいんですけど、あの船ってどうやって進んでるんですか?」

「ああ。水中で羽型の装置を回転させてな。それで推進力を得てるんだ」

「へぇ? プロペラ……、推進装置があるんですね。良かったら見せてもらえません?」


 造船所に戻って推進装置の実物を見せてもらうと、完全にスクリューだった。
 どうやら魔導具らしく、魔力を流すと回転し、推進力を発揮するそうだ。

 魔力を流すと回転する、か。
 どっかで聞いたような気がするな。

 そんなことを考えながらシンの背中をみた時に、1つのアイディアが思い浮かんだ。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

処理中です...