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10章 壁外世界
392 水中スキル
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水中用スキルを取得したので、海に潜ってスキルの検証に移る。
まずは『水中視』。検証も何も、潜って目を開いたら、陸上と変わらない視界になっていた。
『暗視』と『遠目』の2つも併用することが可能だったので、有用性の高いスキルだ。
次に『水中呼吸』。始めこそ怖かったけど、1度試してみたら、陸上と全く変わらない呼吸が出来てしまった。
魔力消費も起こらないようなので、水中で魔力回復することも可能だ。
そして思ったよりも不思議な能力になったのが『環境適応:大』である。
水中での水の抵抗をほぼ受け付けなくなり、陸上と変わらない速度で動作できるようになった一方で、全く意識していないと水圧と一緒に浮力も無効化してしまうらしく、放っておくと底まで沈んでしまう。
泳いだりすると必要な抵抗を感じたり、浮上したいと思うと浮力が戻ってくるんだけど、なかなか扱いが難しくなってしまった気がする。
水圧をほぼ無効化出来ているので、深海バトルは問題がなくなったわけだが。
「水中戦自体は問題なさそうだね。トーマがせっかく教えてくれた泳ぎはあまり必要なくなっちゃったけど。
水は確かに存在していて触れているのに、陸上と同じ動きが出来るのは違和感が凄いけどさ」
「そうだな。こうなってくると重要なのはやはり緊急回避方法かもな。
ランドビカミウリ戦でもユリバファルゴア戦でも、ジャンプの重要度は高かった。
水中だと空間魔法はほぼ使えないから、別の手段を考えないといけないな」
水の抵抗がないおかげで、生活魔法でもそれなりに高速移動は出来ているんだけど、結局はそれなりの速度でしかない。緊急回避に使える速度を目指すなら、それなりで妥協するわけにはいかない。
「それと船の用意と、今回もなにか海の生物と仲良くなりたいところだよね。スナネコたちの能力を考えると、原生生物の存在は無視できないよ」
「確かにな。海の生物っていうと何が来るかな。戦闘力で言えば鯱とか来てくれると嬉しいんだけど」
「シャチ? それってどんな生物なの?」
「ん、単純に俺らが居た世界の水中動物の中の最強格で、人懐っこい生物なんだよ。生態としてはほにゅ……、いや、魚みたいなもんだな。かなり頭は良いらしいけど」
哺乳類って言っても多分通じないよな? なら魚でいいだろ。
「へぇ~。頭が良くて人懐っこいって聞くと、ペルやスナネコたちを連想させるね。実際に遭遇できるかは分からないけど、ちょっとだけ楽しみになってきた」
「俺もシャチやイルカとかと仲良くなれたら嬉しいんだけど、なんせ世界が違うからなぁ。どんな生物と出会えるかは俺も楽しみだ」
水中で陸上と同じ動きが出来るようになったのなら、慣らしはこれ以上必要ない。
この先は開発、発明が必要になってくる段階だ。
ジャンプが使用不可能な水中において、なにか水中ならではの要素が欲しい。
海からあがって、商工ギルドに向かう。
「タイデリア家から船職人を紹介してもらうことになってるんだけど、話は通ってるかな?」
「えぇえぇ聞いておりますよ。今連れて来ますね」
商工ギルドで紹介されたのは、ヴェルトーガの運河で水運に使用されている船を作っている職人だった。
如何にも大工さんといった風の、体格の良い初老の男だ。
「ディオーヌ様から話は聞いとるよ。なんでも海に出たいとか?
しかし、海に出る船なんて作った事はないからのう。正直言って期待に沿えるかどうか」
ヴェルトーガで1番の船大工という話だったか、思ったより謙虚な態度だった。
でもそうか。運河で運用する船と、外洋に出るための船では、根本的に別物になってしまう。船大工と一括りにされて困るのはこの人なんだな。
「勿論ディオーヌ様には最大限協力したいのは山々なのだがの。
とりあえずうちで作っとる船と、実際に船が運航するところを見てもらおうか」
まずは造船所に案内してもらう。気分は完全に社会科見学だ。
不勉強だから造船の知識なんてないけど、確か地球では注文が来る前に、殆ど骨組みを完成させた物をストックしてあるとか何かの作品で読んだ気がするけれど、ヴェルトーガの造船所には出来上がっている船はなく、船の部品らしい大型の木材や金属が保管されている。
「船を作るのは、現在使用している水運船が壊れたりした時だな。普段は作らん。需要もないしの。
注文が来たらパーツを運河まで運び出して、そこで組み立てていくのだよ」
なるほどねぇ。
最近覚えたリモデリングがあれば、パーツの接合は簡単だもんな。
あえて船の形にして保管しておかなくても、組み立てはすぐに完了するわけか。
「そんで、あれがうちで造ってる船だなぁ」
船大工の指した先には、大型で幅広の、如何にも運搬用に造りました、という船が停泊して荷物を降ろしているところだった。
素人目に船の良し悪しなんて判断はつかないけれど、完全に水運目的に造られた船でエリアキーパーと戦えるかと言えば、微妙だろうな……。
ん? でもあの船は帆船じゃないな? 帆やマストがない。ということは別の動力があるのか?
「済みません。船について全く知らないので教えて欲しいんですけど、あの船ってどうやって進んでるんですか?」
「ああ。水中で羽型の装置を回転させてな。それで推進力を得てるんだ」
「へぇ? プロペラ……、推進装置があるんですね。良かったら見せてもらえません?」
造船所に戻って推進装置の実物を見せてもらうと、完全にスクリューだった。
どうやら魔導具らしく、魔力を流すと回転し、推進力を発揮するそうだ。
魔力を流すと回転する、か。
どっかで聞いたような気がするな。
そんなことを考えながらシンの背中をみた時に、1つのアイディアが思い浮かんだ。
まずは『水中視』。検証も何も、潜って目を開いたら、陸上と変わらない視界になっていた。
『暗視』と『遠目』の2つも併用することが可能だったので、有用性の高いスキルだ。
次に『水中呼吸』。始めこそ怖かったけど、1度試してみたら、陸上と全く変わらない呼吸が出来てしまった。
魔力消費も起こらないようなので、水中で魔力回復することも可能だ。
そして思ったよりも不思議な能力になったのが『環境適応:大』である。
水中での水の抵抗をほぼ受け付けなくなり、陸上と変わらない速度で動作できるようになった一方で、全く意識していないと水圧と一緒に浮力も無効化してしまうらしく、放っておくと底まで沈んでしまう。
泳いだりすると必要な抵抗を感じたり、浮上したいと思うと浮力が戻ってくるんだけど、なかなか扱いが難しくなってしまった気がする。
水圧をほぼ無効化出来ているので、深海バトルは問題がなくなったわけだが。
「水中戦自体は問題なさそうだね。トーマがせっかく教えてくれた泳ぎはあまり必要なくなっちゃったけど。
水は確かに存在していて触れているのに、陸上と同じ動きが出来るのは違和感が凄いけどさ」
「そうだな。こうなってくると重要なのはやはり緊急回避方法かもな。
ランドビカミウリ戦でもユリバファルゴア戦でも、ジャンプの重要度は高かった。
水中だと空間魔法はほぼ使えないから、別の手段を考えないといけないな」
水の抵抗がないおかげで、生活魔法でもそれなりに高速移動は出来ているんだけど、結局はそれなりの速度でしかない。緊急回避に使える速度を目指すなら、それなりで妥協するわけにはいかない。
「それと船の用意と、今回もなにか海の生物と仲良くなりたいところだよね。スナネコたちの能力を考えると、原生生物の存在は無視できないよ」
「確かにな。海の生物っていうと何が来るかな。戦闘力で言えば鯱とか来てくれると嬉しいんだけど」
「シャチ? それってどんな生物なの?」
「ん、単純に俺らが居た世界の水中動物の中の最強格で、人懐っこい生物なんだよ。生態としてはほにゅ……、いや、魚みたいなもんだな。かなり頭は良いらしいけど」
哺乳類って言っても多分通じないよな? なら魚でいいだろ。
「へぇ~。頭が良くて人懐っこいって聞くと、ペルやスナネコたちを連想させるね。実際に遭遇できるかは分からないけど、ちょっとだけ楽しみになってきた」
「俺もシャチやイルカとかと仲良くなれたら嬉しいんだけど、なんせ世界が違うからなぁ。どんな生物と出会えるかは俺も楽しみだ」
水中で陸上と同じ動きが出来るようになったのなら、慣らしはこれ以上必要ない。
この先は開発、発明が必要になってくる段階だ。
ジャンプが使用不可能な水中において、なにか水中ならではの要素が欲しい。
海からあがって、商工ギルドに向かう。
「タイデリア家から船職人を紹介してもらうことになってるんだけど、話は通ってるかな?」
「えぇえぇ聞いておりますよ。今連れて来ますね」
商工ギルドで紹介されたのは、ヴェルトーガの運河で水運に使用されている船を作っている職人だった。
如何にも大工さんといった風の、体格の良い初老の男だ。
「ディオーヌ様から話は聞いとるよ。なんでも海に出たいとか?
しかし、海に出る船なんて作った事はないからのう。正直言って期待に沿えるかどうか」
ヴェルトーガで1番の船大工という話だったか、思ったより謙虚な態度だった。
でもそうか。運河で運用する船と、外洋に出るための船では、根本的に別物になってしまう。船大工と一括りにされて困るのはこの人なんだな。
「勿論ディオーヌ様には最大限協力したいのは山々なのだがの。
とりあえずうちで作っとる船と、実際に船が運航するところを見てもらおうか」
まずは造船所に案内してもらう。気分は完全に社会科見学だ。
不勉強だから造船の知識なんてないけど、確か地球では注文が来る前に、殆ど骨組みを完成させた物をストックしてあるとか何かの作品で読んだ気がするけれど、ヴェルトーガの造船所には出来上がっている船はなく、船の部品らしい大型の木材や金属が保管されている。
「船を作るのは、現在使用している水運船が壊れたりした時だな。普段は作らん。需要もないしの。
注文が来たらパーツを運河まで運び出して、そこで組み立てていくのだよ」
なるほどねぇ。
最近覚えたリモデリングがあれば、パーツの接合は簡単だもんな。
あえて船の形にして保管しておかなくても、組み立てはすぐに完了するわけか。
「そんで、あれがうちで造ってる船だなぁ」
船大工の指した先には、大型で幅広の、如何にも運搬用に造りました、という船が停泊して荷物を降ろしているところだった。
素人目に船の良し悪しなんて判断はつかないけれど、完全に水運目的に造られた船でエリアキーパーと戦えるかと言えば、微妙だろうな……。
ん? でもあの船は帆船じゃないな? 帆やマストがない。ということは別の動力があるのか?
「済みません。船について全く知らないので教えて欲しいんですけど、あの船ってどうやって進んでるんですか?」
「ああ。水中で羽型の装置を回転させてな。それで推進力を得てるんだ」
「へぇ? プロペラ……、推進装置があるんですね。良かったら見せてもらえません?」
造船所に戻って推進装置の実物を見せてもらうと、完全にスクリューだった。
どうやら魔導具らしく、魔力を流すと回転し、推進力を発揮するそうだ。
魔力を流すと回転する、か。
どっかで聞いたような気がするな。
そんなことを考えながらシンの背中をみた時に、1つのアイディアが思い浮かんだ。
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