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10章 壁外世界
394 海洋調査に必要なもの
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スクリューの相談をした3日後、マーサ開発の着脱式スクリューの試運転にヴェルトーガの海へ。
完成したスクリューは、俺の予想よりも凄い装備品だった。流石はマーサとしか言い様がない。
マーサの開発した装備は、通常の装備品の上から着脱できるもので、両肩の後ろに2つ、両足首の後ろ側に1つずつスクリューを装着できる。
ここまででも充分すぎる性能なのだが、『魔力探知』を使うことで4ヶ所のスクリューを個別に作動させることが出来る。操作に慣れたら細かい姿勢制御に使える筈。そして両足首の後ろのスクリューは更に、足首の後ろから足裏まで動かすことが可能だ。
極め付けはシンが提案した緊急回避システム。
まだテストしていないので効果のほどは不明だが、これが使えると緊急回避として充分な性能を発揮してくれるはずだ。
「それじゃ早速練習しようか。慣れないうちは少し距離を取って、お互いの邪魔にならないように気をつけようぜ」
「了解だよ。どの程度の速度が出るか分からないもんね」
シンと充分に距離を取って海に飛び込んだ。
スキルのおかげで、地上と水中に差を感じない。視界も呼吸も全く阻害されないってのは本当に凄い。
放っておけば浮力が足りずに海底まで沈むので、海底に足をつけてから両肩のスクリューを作動させる。
「うおおおおおおお!?」
スクリューを作動した途端、物凄い勢いで前方にすっ飛ばされた!?
すぐにスクリューを停止させて、生活魔法で姿勢制御をする。
何とか停止し後ろを確認すると、今の一瞬で数十メートルは吹っ飛んだらしい。
速度は申し分ないけど、制御が難しすぎる。スクリューの回転が速すぎるのか……?
まるでなんの抵抗もなくすっ飛ばされたれたみたいな……。
もしかして、環境適応で水の抵抗がなくなっているから、宇宙空間でいきなり加速してしまったような状況と同じだったのか……?
宇宙ではスクリューは機能しないけど、ここには水が存在している。なのに俺に対してだけ、水の影響がなくなっている。なるほど、水中に居ながら水の影響がないって事は、地上で感じる空気抵抗すら影響していない状態というわけかぁ。
スキルがないと絶対に実現できない、擬似無重力空間というわけだ。スキル凄すぎかよ。まさかマジの宇宙空間でも生身で居られるんだろうか? この世界に宇宙空間があれば、の話だけど。
ちょっと早すぎるんじゃないかなぁとは思うけど、エリアキーパーと戦う事を想定するなら、出力を絞るよりも、この挙動を使いこなすほうが無難だろう。
考えたくはないけど、ユリバファルゴアよりも巨大な可能性だってある。移動速度は早いに越した事はない。
でもちょっと、シンのアイディアで取り付けた緊急回避装置、試すのは怖すぎるよな?
と言っても本番までに1度は試さないといけないんだよな……?
うわぁ試したくねぇけどやるしかねぇ~……。
覚悟を決めてヴェルトーガと向き合う。
緊急回避で吹っ飛ばされるのは前方の予定だ。ヴェルトーガに背を向けて試してみたら、ヴェルトーガに戻ってこれないなんて事態になりかねん。念には念を押しておく。
シンのアイディアは簡単に言えば、俺がユリバファルゴア戦で自由落下の位置エネルギーの方向性を無理矢理変えたあれだ。ひたらく言えば、魔法効果で衝撃を増幅して殴るって奴?
背中の中心に撃鉄のような物を装着し、『魔力探知』で操作する。威力はさほどでもないのだが、ウォーハンマーやガントレットに使用されているお馴染み素材のグランドタートルの甲羅を使っているため、衝撃が増幅されるという仕組みだ。
うん。改めて思い返すと、やっぱり悪い予感しかしないな!
使いたくねぇ~……!
――――覚悟を決めて魔力を込める。
背中の撃鉄が引き絞られているのを感じる。
なんでこんなに体張らないといけないんだろう?
最近は芸人でも体張る機会減ってるよな?
ええい! いったれ!
ガチン。
「ぶわああああああああああああああああああああああああああああああぶええええっ!?」
背中に感じた衝撃は痛みを感じるほどではなかった。
けど今視界が真っ暗で何も見えない……!
く、今俺に何が起こってるんだ……!?
複合センサーを起動し情報を集めるんだ……!
なんて慌てていたけど、センサーによると、俺は海底に頭から突っ込んで埋もれているだけのようだ。
1人でバタバタしちゃってめっちゃ恥ずかしい。
顔を引き抜いて周囲を確認すると、ヴェルトーガの街が間近まで迫っていた。
どうやら陸に近付くにつれて浅くなっていたおかげで、ヴェルトーガに突っ込む事態だけは避けられたらしい。
先ほど立っていた場所から一瞬でヴェルトーガまで戻ってきてしまったか。
しかも埋もれた深さもまぁまぁ深かった。海底が砂じゃなかったらダメージ入ってたかも。
緊急回避手段としては申し分ない速度ではある。実際ザルトワシルドアと戦う場合には遮蔽物なんてないんだから、怪我の心配もないだろう。
それでもこれは気軽に練習できる性能じゃないなぁ。どうしようか?
これで沖まで吹っ飛ばされて、ヴェルトーガが見えない位置まで移動してしまった場合、遭難の可能性が普通にありえる。水中でゲートを使用できないのも確認済みだしな。
やっぱり案内人が必要だな。ヴェルトーガの人々はあまり海に詳しくないようだから、スナネコたちのような原生生物の案内が絶対に必要だ。
仮に俺が吹っ飛ばされて行方不明になっても、迎えに来てくれるくらい海に詳しい生物の案内が。
ま、結局はそこに落ち着くんだよな。
原生生物の発見と協力。これなくしてエリアキーパーに挑むのは、ただの自殺行為であることを思い知ったわ。
完成したスクリューは、俺の予想よりも凄い装備品だった。流石はマーサとしか言い様がない。
マーサの開発した装備は、通常の装備品の上から着脱できるもので、両肩の後ろに2つ、両足首の後ろ側に1つずつスクリューを装着できる。
ここまででも充分すぎる性能なのだが、『魔力探知』を使うことで4ヶ所のスクリューを個別に作動させることが出来る。操作に慣れたら細かい姿勢制御に使える筈。そして両足首の後ろのスクリューは更に、足首の後ろから足裏まで動かすことが可能だ。
極め付けはシンが提案した緊急回避システム。
まだテストしていないので効果のほどは不明だが、これが使えると緊急回避として充分な性能を発揮してくれるはずだ。
「それじゃ早速練習しようか。慣れないうちは少し距離を取って、お互いの邪魔にならないように気をつけようぜ」
「了解だよ。どの程度の速度が出るか分からないもんね」
シンと充分に距離を取って海に飛び込んだ。
スキルのおかげで、地上と水中に差を感じない。視界も呼吸も全く阻害されないってのは本当に凄い。
放っておけば浮力が足りずに海底まで沈むので、海底に足をつけてから両肩のスクリューを作動させる。
「うおおおおおおお!?」
スクリューを作動した途端、物凄い勢いで前方にすっ飛ばされた!?
すぐにスクリューを停止させて、生活魔法で姿勢制御をする。
何とか停止し後ろを確認すると、今の一瞬で数十メートルは吹っ飛んだらしい。
速度は申し分ないけど、制御が難しすぎる。スクリューの回転が速すぎるのか……?
まるでなんの抵抗もなくすっ飛ばされたれたみたいな……。
もしかして、環境適応で水の抵抗がなくなっているから、宇宙空間でいきなり加速してしまったような状況と同じだったのか……?
宇宙ではスクリューは機能しないけど、ここには水が存在している。なのに俺に対してだけ、水の影響がなくなっている。なるほど、水中に居ながら水の影響がないって事は、地上で感じる空気抵抗すら影響していない状態というわけかぁ。
スキルがないと絶対に実現できない、擬似無重力空間というわけだ。スキル凄すぎかよ。まさかマジの宇宙空間でも生身で居られるんだろうか? この世界に宇宙空間があれば、の話だけど。
ちょっと早すぎるんじゃないかなぁとは思うけど、エリアキーパーと戦う事を想定するなら、出力を絞るよりも、この挙動を使いこなすほうが無難だろう。
考えたくはないけど、ユリバファルゴアよりも巨大な可能性だってある。移動速度は早いに越した事はない。
でもちょっと、シンのアイディアで取り付けた緊急回避装置、試すのは怖すぎるよな?
と言っても本番までに1度は試さないといけないんだよな……?
うわぁ試したくねぇけどやるしかねぇ~……。
覚悟を決めてヴェルトーガと向き合う。
緊急回避で吹っ飛ばされるのは前方の予定だ。ヴェルトーガに背を向けて試してみたら、ヴェルトーガに戻ってこれないなんて事態になりかねん。念には念を押しておく。
シンのアイディアは簡単に言えば、俺がユリバファルゴア戦で自由落下の位置エネルギーの方向性を無理矢理変えたあれだ。ひたらく言えば、魔法効果で衝撃を増幅して殴るって奴?
背中の中心に撃鉄のような物を装着し、『魔力探知』で操作する。威力はさほどでもないのだが、ウォーハンマーやガントレットに使用されているお馴染み素材のグランドタートルの甲羅を使っているため、衝撃が増幅されるという仕組みだ。
うん。改めて思い返すと、やっぱり悪い予感しかしないな!
使いたくねぇ~……!
――――覚悟を決めて魔力を込める。
背中の撃鉄が引き絞られているのを感じる。
なんでこんなに体張らないといけないんだろう?
最近は芸人でも体張る機会減ってるよな?
ええい! いったれ!
ガチン。
「ぶわああああああああああああああああああああああああああああああぶええええっ!?」
背中に感じた衝撃は痛みを感じるほどではなかった。
けど今視界が真っ暗で何も見えない……!
く、今俺に何が起こってるんだ……!?
複合センサーを起動し情報を集めるんだ……!
なんて慌てていたけど、センサーによると、俺は海底に頭から突っ込んで埋もれているだけのようだ。
1人でバタバタしちゃってめっちゃ恥ずかしい。
顔を引き抜いて周囲を確認すると、ヴェルトーガの街が間近まで迫っていた。
どうやら陸に近付くにつれて浅くなっていたおかげで、ヴェルトーガに突っ込む事態だけは避けられたらしい。
先ほど立っていた場所から一瞬でヴェルトーガまで戻ってきてしまったか。
しかも埋もれた深さもまぁまぁ深かった。海底が砂じゃなかったらダメージ入ってたかも。
緊急回避手段としては申し分ない速度ではある。実際ザルトワシルドアと戦う場合には遮蔽物なんてないんだから、怪我の心配もないだろう。
それでもこれは気軽に練習できる性能じゃないなぁ。どうしようか?
これで沖まで吹っ飛ばされて、ヴェルトーガが見えない位置まで移動してしまった場合、遭難の可能性が普通にありえる。水中でゲートを使用できないのも確認済みだしな。
やっぱり案内人が必要だな。ヴェルトーガの人々はあまり海に詳しくないようだから、スナネコたちのような原生生物の案内が絶対に必要だ。
仮に俺が吹っ飛ばされて行方不明になっても、迎えに来てくれるくらい海に詳しい生物の案内が。
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