異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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7章 家族みんなで冒険譚2 聖域に潜む危機

528 鍵 (改)

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「生体反応も消えた……。ならこれで決着、か?」


 イントルーダーを超えるほどの女王の巨体が、みるみる地面に融けていく。

 ヴェノムデバイスたちと違って、女王は散り際に毒を撒き散らしたりはしなかった。


 女王の体が完全に融け切ってからもう1度察知スキルを発動するも、周囲には生き物も魔物も残っていないようだった。

 これなら戦闘は終了したと判断しても大丈夫かな……?。


「ティムル。リーチェ。多分倒したとは思うけど、2人は周囲の警戒を続けてくれる?」

「ええ。みんなは魔力枯渇寸前だし、警戒は私たちに任せてゆっくりしててね」

「あーっとダン。ゆっくりする前にニーナの深獣化を解いてあげて」

「っとそうだったね。おいでニーナ」


 ヴァルゴを抱き締めたまま、片手を開いてニーナの飛び込むスペースを空ける。

 するとニーナは俺の胸にすぐに飛び込み……はせず、魔力枯渇を起こしかけているフラッタを抱きしめて、フラッタごと俺に飛び込んできた。


「ダンーッ! 大好きー! 私もフラッタもダンが大好きなのーっ!」

「ニーナお姉ちゃんは末っ子のフラッタを大好き過ぎでしょ。俺も大好きだけどねーっ」


 フラッタとヴァルゴをよしよしなでなでしながら、ニーナの深獣化を解く為に彼女と激しく舌を絡ませた。


 キス魔のニーナは気持ちよさそうにしながらも暫く粘ったけど、深獣化で過敏になったニーナの肉体は快楽に耐えられず、無事に深獣化を解いて夢の世界に旅立っていった。

 そんなニーナの右手には、見たことのないモノが握られている。


「寝ているニーナには申し訳無いけど、先にちょっとだけ確認させてね?」


 お詫び代わりに寝ているニーナの額に口付けしてから、ニーナが握っているものを確認する。


 パッと見の印象は、時代劇などで良く見かける十手のようにも見える。

 しかし十手ほど太くも真っ直ぐでもなく、まるで剣のように薄く伸ばされていて、そして刃にあたる部分は所々欠けたり凹んだりしているな。


「なんだろうねこれ? 不思議な形をしてるけど、これがレリックアイテムなのかな?」

「レリックアイテムかどうかは不明だけど、マジックアイテムではあるみたいね。『正位置の魔鍵まけん』っていうアイテムみたいよ?」


 どうやらティムルは既に鑑定を試したらしく、その結果を教えてくれた。


 魔鍵、鍵かぁ……。

 鍵と言われてみれば、確かに自転車のキーみたいに見えなくもない。


「女王の体を派手に吹き飛ばしちゃったけど、どうやら壊さずに済んだようだね。無事に回収出来て良かった」

「どうなのかしらねー? このマジックアイテムが……デモンズパニッシャーだっけ? アレに耐えられたのか。それとも壊れないように、女王が咄嗟にデモンズパニッシャーの範囲外に隠したのかは分からないわぁ」

「あー……」


 体内がアレだけキモく激しく動いていた相手だ。

 デモンズパニッシャーに危険を感じて、マジックアイテムを庇うくらいの芸当はやってのけそうだなぁ。


 神に作られたというレリックアイテムだから、普通にデモンズパニッシャーに耐え切った可能性も残されているけど。


「……ただねぇダン。話はまだ終わりじゃないみたいなのよぉ」

「ティムル?」


 1度俺に肩を竦めて見せてから、ティムルは少し離れた場所から何かを拾いあげた。

 その何かは手鏡のような大きさの丸いデザインをしていて、その中央には縦長の細い穴が空いていた。


「こっちは『逆位置さかいち魔錠まじょう』ですって。周囲から魔力を集めて正位置の魔鍵に流し込む機能があるみたい」

「魔錠……。錠前なのかこれ。ってことはこの穴は鍵穴ってわけか」

「そして最後が、こーれっ」


 更に離れた場所から、もう1つ何かを拾い上げるティムル。

 その手に握られていたのは、女性を象った真っ白な石像のようだ。


「これは『均衡の祭壇』よ。この女神像の手の平に逆位置の魔錠を載せられるっぽいわね」

「……マジかよ。女王ってレリックアイテムを3つも食ってやがったのか……」


 女神像にセットできるのが魔錠で、セットする位置が手の平で良かったー、などと下種な考えを頭を振って捨てる。

 祭壇っぽさは無いけれど、確かに何かを受け入れるように開かれた両腕の先には何かを載せられそうになってるな。


「どうやらこの3つは、3つでワンセットのマジックアイテムみたいね。どれか1つでも欠けたらまともに運用するのは難しそうよ」

「3つのレリックアイテムかぁ。守人の集落が3部族に分かれていたのもこのせいだったのかな?」


 なるほど。リーチェは面白い発想をしてくれるなぁ。

 だけど恐らく守人の人たちは、このマジックアイテムの存在を認識してなかったと思うよ?


「はい。これらは重要なマジックアイテムに違いないでしょうから、パーティリーダーのダンが預かってね」


 青い瞳を黒く染めながら、俺に逆位置の魔錠と均衡の祭壇を押し付けてくるティムル。

 散らばったマジックアイテムを迷いなく拾い上げてるなぁと思ったけど、どうやら熱視で位置を把握していたようだ。


 けどさティムル。

 今の俺ってニーナとフラッタとヴァルゴを抱きしめているから、渡されたって受け取れないんだよ?


「とりあえずそこに置いといてくれる? 見ての通り、今の俺は両手が塞がってるもんでさ」

「なに言ってるのよ? いつも通りインベントリに収納すればいいだけでしょ?」

「いや、聖域の核である可能性が高いマジックアイテムでしょ? 安易にインベントリに収納して聖域に異常が起きたら嫌じゃんか」

「……ん、その可能性も確かに無くはない、か」


 俺の言葉に一瞬だけ逡巡したティムルは、俺のすぐ脇の地面に2つのマジックアイテムを置いた。


 今まで女王の体内に収められていても問題が無かったのだから、インベントリに収納しても問題はないような気もする。

 けれどインベントリはこの世界とは切り離された謎の収納空間にアイテムを収める魔法だ。

 女王の体内なんかよりもずっと遠い場所であると言えるからな。何か良くないことが起きかねない。


「でもさーパパ。異常が起きないようにって言っても今更じゃない? 周り見てみてよー」


 呆れるアウラに言われるまでもなく、聖域の樹海が滅茶苦茶になったことは分かってるよっ!


 巨大な大木は軒並み倒れ、毒に犯され地面に溶け出し、卵を産み付けられた内部はスカスカになっている。

 幸いにも卵は全て女王と一緒に溶けてくれたようだけど、卵があった部分の木が抉られている事には変わりない。


 ひと言で表現するなら、正に大惨事って奴だな……。


「空が見えなかった聖域の樹海の中央に居たはずなのに、今は空が綺麗に見えますねっ」

「私たちが悪いとは言わないけど、ちょっと放置できない荒れようなの。ひょっとしたらマグエルと……ううん、スポットと同じくらいの範囲の木が倒れちゃってるんじゃないの~……?」


 おっぱいを突き出して空を仰ぐムーリと、やっちゃったなぁという顔をしながら周囲をキョロキョロと見回すターニア。

 聖域の異変を解決したつもりではあるけど、俺達が聖域を荒らしたようにしか見えなくて笑えないなっ。


「なんにしても、守人たち抜きに話をするわけにはいかないな。ニーナもまだ寝たままだし……」

「この惨状を見せるのは酷だと思うけど……。見せないわけにはいかないわよねぇ……」


 ティムルと顔を合わせて、はぁ~~~……っと長い息を吐く。

 命を懸けて森を守ってきた彼らに、この荒れ果てた聖域の樹海を見せなきゃならないとは……。


「エマとラトリア。申し訳ないけど2人で各集落を回って、それぞれの集落から代表者を連れてきてくれないかな?」

「ふふ。了解しました。けどダンさん、私たちと彼らでは転移魔法を共有できませんよ?

「守人たちはほぼみんなペネトレイターに所属してるから。双竜の顎も一旦ペネトレイターに所属してくれれば一気に転移してこれるでしょ」

「あ、そうか。私たちのほうがペネトレイターに参加すればいいだけなんですね。複数のアライアンスに同時参加するなんて、ちょっと信じられないことですけど……」


 いやいや。そんなことを信じられなくってどうするんだよエマ。

 俺なんかトライラムフォロワーに始まって、ファミリアとクリミナルワークスとペネトレイターに同時参加してる状態なんだからね?


 アライアンスの同時参加数に上限みたいなのって無いのかなぁ? 検証はされてるんだろうか?


「それじゃ遅くなる前に行ってきますね。フラッタのことをよろしくお願いします」

「敵の気配はもう無さそうですけど、ここがアウターの内部である事に変わりはありません。不測の事態に気をつけてくださいね」

「大丈夫。俺は動けないけど、俺の家族は最高に頼りになるからさ。ラトリアとエマも気をつけて」


 ちゅっちゅっと口付けをして2人を送り出す。

 3つの集落それぞれで説明もしなくちゃいけないだろうし、多少待たされる事になりそうかな。


 エマとラトリアがアナザーポータルで転移すると、てててっとムーリが近寄ってくる。


「ダンさーん。私もくっついていいですかー?」

「あっ! それならぼくもくっつきたいんだけどっ!? 警戒は怠らないからさっ!」

「ムーリもリーチェも大歓迎だよ、と言っても前面は3人で埋まっちゃってるから、出来たら背中からくっついてもらえるかな?」


 ニーナ、フラッタ、ヴァルゴを抱き締めたまま体を起こすと、すぐさま背中に大質量の柔らかい感触が4つほど押し付けられる。


 俺が家族に埋もれている横で、ティムルとアウラ、それに究明の道標の3人は、俺の脇に置いてあるレリックアイテムに興味津々の様子だ。


「ねぇねぇダンさんっ! このマジックアイテムに触心してみていいかなっ!?」

「えー……? やっても良いけどお勧めはしないよ? 神器レガリアに触れると負担が大きいみたいだし、レリックアイテムの解析なんて試したら同じくらいの負担がかかっちゃうかも」

「くっ……! た、確かにそれは一理あるね……! レ、レリックアイテムを解析するなんて機会、また訪れるとは思えない……! だからと言って命を危険に晒すのは……! くぅぅぅ……!」

「キュールさん落ち着いて。触心は最後の手段にしましょ? まずは触心を使わずに調べてみよーよっ」


 暴走しかけるキュールさんを、どうどうと宥め落ち着かせるチャール。これじゃどっちが大人だか分からないよ。

 もしもチャールが触心を使えたら、キュールさんと同じリアクションだった気もするけど。


 そんな2人に構わず、興味深げにしげしげとマジックアイテムを観察しているシーズ。


「均衡の祭壇だったっけ? これって明らかに女神像だよな? いったい誰を象った像だと思う?」

「そうですねぇ……。魔力を受け止め世界の均衡を保つ女神と言うと、抱擁の女神イザラカルタ辺りじゃないですかねー?」

「抱擁の女神?」


 俺の耳元で当然のように語るムーリの言葉に、思わず聞き返してしまう。


 そう言えば以前テネシスさんとお話をした時、トライラム様が登場する神話は無いって言ってたっけ。

 それってつまり、トライラム様は登場しないけど神話自体は存在してるってことなのか。


 そしてあっさりとその女神の名を口にするのは、トライラム教会のシスターとしてどうなのかなムーリ?


「異界から流れ込む魔力を受け止めているとされる、抱擁の女神イザラカルタですよ。ダンさんはご存じないんでしたっけ」

「神話があるって事自体は知ってたけど、その内容までは知らなかったよ。今度教えてくれる?」

「いいですよーっ。今夜ベッドの上で、たぁっぷりと教えてあげますからねーっ」


 いや、ベッドの上で教えられても、全部ムーリの中に零れちゃうからね?

 何も教えてもらわなくても、たぁっぷりと注ぎ込んであげるけどもっ。


 しかし、抱擁の女神ねぇ……。

 この世界の真実に迫ろうとするなら、神話もちゃんと学ばなきゃいけないかぁ。


「あーそうだった! 教えると言えばーーっ!」


 ムーリ先生による物凄く淫靡な授業風景を想像していると、反対側の耳元でリーチェが突然叫び声をあげた。

 今は補正を利かせてないから、普通に耳が痛いんだよ?


「ダンっ! ジュードテンペストってなんなのっ!? あんなの練習したことも無いよねっ!?」

「んー? リーチェの翠の双眸をイメージして、ジュエルバラージを一旦圧縮して、そして一気に解放したんだよ。精霊魔法によって風の刃も発生したみたいだし、かなり強力な技になったね」

「じゃなくてーっ! 本当にぶっつけ本番であんなの成功させちゃったのっ!? 下手したらぼくのジュエルバラージで撃ち抜かれてたのかもしれないんだよっ!?」

「あっはっは。お前をひと目見たときから、俺の心はとっくに射抜かれてるけどねー?」


 いい加減耳が痛かったので、背後のリーチェの口にちゅっと蓋をする。


 キスと俺の言葉でリーチェはピタッと固まって、湯気が出るんじゃないかってくらい褐色の顔を真っ赤にしている。

 リーチェはいちいち反応が可愛すぎてヤバいんだよなー。ちゅっちゅっ。


「以前フラッタとの合成技を完成させた経験があるからね。同じ要領なら成功する確信があったんだよ。ヴァルゴとのデモンズパニッシャーも同じだね」

「んふー。妾たちの心は、ダンに鷲掴みにされてしまっているのじゃー」

「全身全霊で想いをぶつけても、旦那様はその全てをちゃんと受け止めてくださるんですよねー」


 ユルい雰囲気のフラッタとヴァルゴが、俺の体にすりすりと擦り寄ってくる。

 みんなの心も想いもおっぱいも、常に鷲掴みにして生涯手放す気は無いんだよー?


「翠の暴風ジェードテンペストは広範囲殲滅攻撃って感じだったね。対して黒い砲撃デモンズパニッシャーは、単体向けの高火力攻撃って感じかな? 今後使う機会があるかは分からないけど」

「そうねぇ。魔物相手ならあんな技必要無いんだし……。使う機会が無いことを祈っておくわ」


 肩を竦めながら愚痴るティムル。

 俺だってこんな技を使う機会に遭遇するのは2度と御免だってのー。


 察知スキルがあるので次第に警戒心も解れていき、段々とムラムラとしたエロい雰囲気が強くなっていく。

 激戦後の興奮を紛らわすように、俺は目覚めたニーナと警戒してくれていたティムル、チャールたちと一緒に均衡の祭壇を眺めていたアウラともキスを交わしながら、ラトリアたちが帰還するのをゆっくりと待ったのだった。
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