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第18話 順調

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「えっと……本当にペニシリンは私が作ったと言う事にするんですか?」

結論から言うと、カルメさんの病気はロザリア様から渡されたペニシリンであっさり完治した。
タラハシや彼女の祖父母にも既に投与してあり、完治している。

「ええ。私の錬金術は特異な力だから。あんまり人に知られたくはないのよ。でもあの薬が効いて本当に良かったわ」

病気の完治にタラハシ達や王子からは物凄く感謝されているのだが、なんだか人の手柄を奪ったみたいでしっくりこない。
せめて王子やタラハシ辺りには真実を話してもいい気がするのだが。

「そう言えば錬金術の事、王子には話してないんですか?」

「ええ、両親に口止めされてるから。王子が知ったら気味悪がられて捨てられてしまうから絶対ダメだって言われてて、まだ言ってないの」

どうやら彼女の力を知っているのは屋敷の人間だけの様だ。
まあ確かによく分からない秘術を扱うとなれば周りは少し引くかもしれないが、優しいクプタ王子がそんな事を気にするとは思えない。

「まあでも紙の生産は順調に進んでいるし、王子にもそのうち話すつもりよ」

彼女の生み出した紙製造機はすこぶる優秀だった。
彼女が錬金術で生み出した液体と木を放り込むと、凄い勢いで紙が出来上がって行く。
しかもムラ一つない超高品質な真っ白な紙が。

それは魔法もびっくりな謎メカニズムだった。

「流石にあの超技術の塊をどうやって生み出したかを隠して、紙を流通させるのは無理があるものね」

まあそりゃそうだ。
国の一大産業になりそうな物が、その制作過程が分かっていないとか問題だもの。

「あ、そうそうこれ」

そう言うと彼女は一冊の本を私に手渡す。
その表紙には青い文字で薔薇の花園と書かれていた。

「この文字……インクですか?それにしてはカラフルな」

インクは基本黒しかない。
青いと言う事は、彼女が錬金術で生み出した色なのだろう。

「それに薔薇の絵も凝ってますね。ロザリア様の手書きですか」

文字の下には青い薔薇が綺麗に描かれていた。
とてもインクで描いた物とは思えない程見事だ。

「ふふふ、前世じゃちょっとした絵師だったのよ。わたし。腐界隈のだけどね」

「凄いですね」

これだけ綺麗な絵が描けるのなら、人気なのは頷ける。
薔薇園の中に何故か見つめ合うクプタ王子とタラハシに瓜二つの男性が描かれているが、そこはスルーしておいた。

「でも手書きじゃ限界があるから、今度はタブレットとプリンターを作ろうと思ってるのよ。その時はまたよろしくね」

そう言うと彼女はウィンクする。

最近やたらとロザリア様には物を頼まれる。
紙を生み出す機械も魔力で動くのだが、彼女の家のメイド達の魔力では短時間しか動かせない為、魔力を貯蓄するアイテムを作り出し――それも協力している。
定期的にその四角い魔力貯蓄装置に私は魔力を注ぎ込んでいた。

まあ持ちつ持たれつな所はあるのだが、最近人使いがどんどん荒くなってきている気がする。

「それは私の傑作第一号だから、お礼みたいな物よ」

内容は表紙からある程度察せられた。
読むかどうかは正直迷うところである。
変な趣味に目覚めても嫌だし。

「あ、ちゃんと後で感想を聞かせてね!」

どうやら読むしか無さそうだ。
どうか私の中で変な扉が開きませんように。
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