18 / 23
一番守りたいもの
しおりを挟むアメリア様から苛めを受けたというのは事実ですか?」
エミールが、男爵令嬢エリザベスに問いかけた。
突然の乱入者にも慌てず、冷静に事実確認を始めるエミールは、やはり優秀な一年生だと感心してしまう。
「もちろんよ。その女はアーサー様が特別に気にかけている私に嫉妬して、私の教科書を破ったり、階段から突き落とそうとしたり。ひどい女よ。みんな騙されてるわ。」
ぶっ!
なんてベタな展開とセリフ!!
王道すぎてビックリするわ。
まるで、モノマネ番組のご本人登場みたい。
まさかあの男爵令嬢も転生者だとか?
しかも突っ込みどころが満載で、どこから否定していけばいいのやら。
「アメリア様があなたに嫉妬をする理由が見当たらないのですが。そもそもそちらのアーサー様に、アメリア様は全く好意を持っておりません。よって、あなたを苛める必要もありません。」
「エミールの言うとおりだわ。私はアーサー様を好きになったことなどないし、あなたを苛めた記憶もないわ。」
私はエミールの言葉に続き、はっきりとエリザベスに言い返してやった。
本当はアーサーのことなんて、『むしろ嫌いです』くらい言ってやりたいが、令嬢だからやめておく。
エミール、二人にわかりやすい反撃をありがとう。
会場中が、私がエリザベスを苛める理由がないとわかっててくれてるのが心強い。
悪役令嬢役なのに味方がたくさんいるなんて、おかしいけど嬉しい。
「そんなはずないだろう!アメリアは俺のことが昔から好きなんだ。」
「そうよ、きっと私を苛めていたのがバレないように、アーサー様を好きなことも隠しているんだわ!!」
うわぁ、この二人には全然通じてないわ。
『アメリアはアーサーが好き』っていう前提から間違ってるって教えてあげてるのに。
大体、アーサーのあの自信はどこから来るんやら。
もはやホラー。
アーサーとエリザベス以外の全員が、冷めた目で二人を見ている。
そんな中、今度はフレディがアメリアの前に進み出て言った。
「アメリア様がいつあなたの教科書を破ったのだろうか。また、階段から突き落とされそうになったという日時も教えてもらいたい。」
あれ?
フレディ、それって練習してきた断罪劇のセリフそのままだよね?
セレンに言うはずのセリフを、エリザベスに言ってるだけの気が。
まさか台本のまま進めるつもり?
「えーっ、よく覚えてないけど、先週?」
「アメリア様の行動は全部ここに記されている。生徒会副会長のアメリア様は忙しい。先週はこのパーティーの準備で特に忙しく、あなたに構う時間など全くなかった。」
メモ帳のような小型の冊子を高く掲げ、フレディが声高に言った。
「よって、アメリア様があなたを苛めた事実などない。」
うわー。
練習でも何度も見たやつ!!
よく臨機応変にぶっ込んだなー。
そして、あのメモ帳が役立つ時が来ようとは・・・
人生、何が起こるかわからないものだわ。
予定通りに行かず、エリザベスはイライラしているようだ。
「そんなの証拠にならないわよ。」
「では、あなたがアメリア様に苛められた証拠を出してください。」
まさかの台本通りに会話が進んでいる。
あの男爵令嬢も台本を知っているんじゃ?と疑いかけた時、新たな展開が起きた。
「もう、うるさいわね。あの女はそれだけじゃなくて、私を池に落としたんだから!」
「それはひどいな。そんなひどい女は俺が妻にもらってやるしか・・・」
「アメリアが池に落とすはずがない!アメリアは水場が苦手なんだ!」
エリザベスとアーサーの相変わらずの茶番に、クロードの声が被った。
「は?何を言ってるんだ?」
急に出てきたクロードに、アーサーが面白くなさそうに言う。
「君は知らないのか?アメリアにはトラウマがあってね。水場には近寄れないんだ。だから、池に落とすなんてありえない。」
クロード!!
出てきてはいけない場面なのに、私をかばって・・・
アメリアは昔から水に近寄れなかった。
川も、湖も。
前世の記憶を取り戻した今ならわかる。
前世、川で亡くなったことが原因なのだろう。
クロードは知っていてくれた。
思わず抱きつきたくなるが、我慢する。
まだ劇の途中で、私達は婚約破棄のフリを続けなければいけないのだから。
しかしクロードは吹っ切れたように私の前に立つと言った。
「劇よりもアメリアを守りたい。一番大切なのはアメリアだから。」
「クロード・・・。」
頬を染め、見つめ合う私達を、生徒会メンバーが笑いながら見守っていた。
25
あなたにおすすめの小説
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】転生令嬢が、オレの殿下を"ざまあ"しようなんて百年早い!〜"ざまあ王子"の従者ですが、やり返します〜
海崎凪斗
恋愛
公爵令嬢ロベリアは、聖女への嫌がらせを理由に婚約破棄された――はずだった。だが夜会の席、第二王子が「冤罪だった」と声を上げたことで、空気は一変する。
けれど第一王子の従者・レンは言う。
「いや?冤罪なんかじゃない。本当に嫌がらせはあったんだよ」「オレの殿下を"ざまあ王子"にしようなんて、百年早い!」
※ざまぁ系ではありますが、"ざまぁされそうな王子の従者が、それを阻止して悪役令嬢気取りの転生者をざまぁし返す話"です。主従モノに近いので、ご注意ください。
プロローグ+前後編で完結。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!
たまこ
恋愛
エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。
だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います
珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。
最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。
それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。
無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら
雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」
「え?」
伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。
しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。
その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。
機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。
そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。
しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。
*他サイトでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる