7 / 34
優しい王様
しおりを挟む国王であるディラン自ら、アンリを部屋に案内してくれている。
アンリが恐縮していると。
「病に臥せっている使用人が多くてな。出来ることは自分でやるさ。しかし、どうにも出来ないことも多い。悔しいがな」
歩きながら喋っていたディランが立ち止まり、後ろを歩いていたアンリに振り向いた。
「アンリにとっては、先ほどの火魔法はたいしたことないのかもしれない。でも例えば廊下のこのランプ、これにはもうアンリの火が入っている」
えっ、いつの間に……。
「気付かなかったか?応接室にいる間に、城中の灯りがアンリの火に入れ換えられた。それだけ貴重な物なのだ、アンリの力は」
「ありがとうございます」
再び二人は歩き出す。
「礼には及ばん。俺はアンリの魔法に頼りきりになるつもりはない。出来ることは自分でやるし、サポートも任せて欲しい。つまり何が言いたいのかと言うと、国の危機だとしても、アンリはプレッシャーに感じる必要はないということだ。責任は国王の俺にある」
ドアの前に立ち、扉を開く。
「ここがアンリの部屋になる。必要なものがあれば言ってくれ。なるべく用意させる」
アンリは部屋を見渡し、その豪華さに驚いてしまった。
「こんな立派なお部屋、勿体ないです。もっと狭くて大丈夫なので。あ、使用人さんのお部屋でも貸していただければ……」
「何を言っている。こちらの都合で呼び出された被害者なのだぞ?もっと文句を言ったり、ねだったりして当然なくらいだ」
「えーーっ、いやいやいや、そんな、私なんて」
「まったく、もっと自信を持て。あとずっと気になっていたのだが、この頬はどうした?」
そっと頬に手を添えられ、アンリは赤くなりながら言い訳をする。
「えっと、これは……向こうの世界でちょっと転んでしまって」
まさか父親に叩かれたとは言いづらい。
目を泳がせながら嘘を吐くアンリを、『ふーん……』と、いかにも信じていない様子でディランが見ていた。
「まあいい。ゆっくり休め。夜着など部屋にあるものは自由に使ってくれ。風呂も用意してある。明日の朝はまた迎えにくる」
言い終えるとアンリの頬から手を離し、扉を閉め、ゆっくりと去っていった。
しばらく呆然としていたアンリであったが、おもむろに動き出す。
今のは何だったの?
でもとりあえず疲れたから、今日はもう休もう。
浴室を覗き、アンリは驚いた。
こんなにたくさんのお湯を用意するのは大変だったであろう。
続いて、高価な生地でできたネグリジェを取り出す。
自分には不相応だと思いつつ、『えーい、今日は疲れたからもう何も考えずにお借りしちゃいます。ありがとうございます』と、心の中で叫び、入浴後にすぐベッドに寝転んだ。
すぐに意識が遠くなったが、アンリの頬を心配するディランの姿がまぶたの裏に焼き付いていた。
11
あなたにおすすめの小説
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる