ショボい魔法しか使えない私が、魔法のない世界に召喚されたら崇め奉られてます

櫻野くるみ

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優しい王様

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国王であるディラン自ら、アンリを部屋に案内してくれている。

アンリが恐縮していると。

「病に臥せっている使用人が多くてな。出来ることは自分でやるさ。しかし、どうにも出来ないことも多い。悔しいがな」

歩きながら喋っていたディランが立ち止まり、後ろを歩いていたアンリに振り向いた。

「アンリにとっては、先ほどの火魔法はたいしたことないのかもしれない。でも例えば廊下のこのランプ、これにはもうアンリの火が入っている」

えっ、いつの間に……。

「気付かなかったか?応接室にいる間に、城中の灯りがアンリの火に入れ換えられた。それだけ貴重な物なのだ、アンリの力は」

「ありがとうございます」

再び二人は歩き出す。

「礼には及ばん。俺はアンリの魔法に頼りきりになるつもりはない。出来ることは自分でやるし、サポートも任せて欲しい。つまり何が言いたいのかと言うと、国の危機だとしても、アンリはプレッシャーに感じる必要はないということだ。責任は国王の俺にある」

ドアの前に立ち、扉を開く。

「ここがアンリの部屋になる。必要なものがあれば言ってくれ。なるべく用意させる」

アンリは部屋を見渡し、その豪華さに驚いてしまった。

「こんな立派なお部屋、勿体ないです。もっと狭くて大丈夫なので。あ、使用人さんのお部屋でも貸していただければ……」

「何を言っている。こちらの都合で呼び出された被害者なのだぞ?もっと文句を言ったり、ねだったりして当然なくらいだ」

「えーーっ、いやいやいや、そんな、私なんて」

「まったく、もっと自信を持て。あとずっと気になっていたのだが、この頬はどうした?」

そっと頬に手を添えられ、アンリは赤くなりながら言い訳をする。

「えっと、これは……向こうの世界でちょっと転んでしまって」

まさか父親に叩かれたとは言いづらい。
目を泳がせながら嘘を吐くアンリを、『ふーん……』と、いかにも信じていない様子でディランが見ていた。

「まあいい。ゆっくり休め。夜着など部屋にあるものは自由に使ってくれ。風呂も用意してある。明日の朝はまた迎えにくる」

言い終えるとアンリの頬から手を離し、扉を閉め、ゆっくりと去っていった。


しばらく呆然としていたアンリであったが、おもむろに動き出す。

今のは何だったの?
でもとりあえず疲れたから、今日はもう休もう。

浴室を覗き、アンリは驚いた。
こんなにたくさんのお湯を用意するのは大変だったであろう。

続いて、高価な生地でできたネグリジェを取り出す。
自分には不相応だと思いつつ、『えーい、今日は疲れたからもう何も考えずにお借りしちゃいます。ありがとうございます』と、心の中で叫び、入浴後にすぐベッドに寝転んだ。

すぐに意識が遠くなったが、アンリの頬を心配するディランの姿がまぶたの裏に焼き付いていた。



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