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聖水らしいです
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食堂には、すでにクラウスがいた。
「おはようございます、アンリ様」
今日も笑顔が神々しい。
アンリが挨拶を返すと、朝食の準備が着々と進んでいく。
昨日は誰にも会わなかったが、やはり王宮。
たくさんの使用人が働いているらしい。
皆、アンリと目が合うと会釈をしてくれる。
家庭でも学校でも冷たい扱いしかされてこなかったアンリには、大切にされることはこそばゆく、とにかく嬉しかった。
「さあ、アンリ様。どうぞ召し上がって下さい」
クラウスに勧められ、アンリも「いただきます」と言って食べ始める。
誰かに用意してもらう朝食なんて久しぶりだ。
しかし、朝食の材料も昨日の軽食のように野菜がパサパサしていたり、卵が小さく黄身の色が薄かったりした。
やはりこの国は非常事態なのだと感じる。
私に何か出来そうなことがあればいいんだけど。
とりあえず思い付いたことを二人に提案してみることにした。
「あの、食後ってまた紅茶を飲んだりしますか?もし良かったら私がお水を出すので、それで淹れてみてもらってもいいでしょうか……」
だんだん自信が失くなり、語尾が小さくなっていく。
「いいのですか!?」
クラウスが立ち上がって前のめりの体勢で訊いてきた。
「あの、でも、1度にグラス1杯分しか入れられなくて。グラスがたくさん必要なんです」
「何!?それはグラス1杯なら何度でも淹れられるということか?」
ディランが驚いたように尋ねるので、アンリはコクコクと頷く。
「時間がかかりますし、風呂桶くらいまでしか試したことはありませんが」
「「風呂桶!?」」
二人が同時に大きな声で繰り返し、その後に「そんなに……」とディランが呟いた。
「素晴らしい!!早速お願いしてもよろしいですか?こちらにグラスを多めに下さい!!」
クラウスがメイドに声をかけるが、その前にすでにたくさんのグラスが食堂に運び込まれ、使用人達が期待に満ちた目でアンリを見ていた。
アンリの前にグラスが1つ置かれた。
「では、いきますね」
一度ディラン、クラウスと目を合わせ、アンリはグラスに手をかざした。
コポコポコポ……。
3秒ほどでグラスは水で満たされた。
固唾を飲んで見守っていた使用人達から、歓声とどよめきが起こる。
「アンリ様、そちらの水を確認させていただいてよろしいですか?」
興奮ぎみにクラウスが尋ねる。
司祭のクラウスなら水質がわかるのだろう。
アンリは水がこぼれないように、丁寧にクラウスに手渡した。
クラウスはグラスを掲げながら水を見つめ、匂いを確認し、口をつけた。
「!!」
衝撃を受けた様子で、ディランの方を見て言った。
「これは聖水です!!」
「何だと!?聖なる火だけでなく、聖水まで!?」
二人が盛り上がっている中、アンリは一人付いていけずに困っていた。
聖水って何かしら。
普通のお水のはずなんだけどな。
説明が欲しくてクラウスを見ていると、クラウスが我に返ったらしい。
「取り乱して申し訳ございません。あまりにも素晴らしい現象を目の当たりにし、動揺してしまいました」
謝られてしまったが、アンリが求めているのは謝罪ではなかった。
「普通のお水のはずなんですが」
「もちろん普通に飲料水として使用できますが、この水には強い力があるのです。私も実際に目にするのは初めてですが。しかし、素晴らしい聖なる力を感じます」
「試してみるか。誰か、セガールにこの聖水を飲ませてやってくれ」
セガール?
アンリが誰だろうと思っている間に、メイドの一人がグラスを恭しく受け取り食堂から出ていった。
新しく淹れ直さなくて良かったのかしら?
アンリが空いているグラスにも水を注ぎ始めると、クラウスが嬉しそうにお礼を言ってくれる。
5つほどグラスに注いだところで、大きな足音が近付いて来るのに気付いた。
「来たな」
「来ましたね」
誰が近付いてきているのか、ディランとクラウスはすぐにわかったようだ。
アンリが6個目のグラスに手をかざした時、バタンと大きな音を立てて扉が開いた。
「すげーな、この水!!」
入ってきた体格のいい男性が、開口一番に叫んだ。
「おはようございます、アンリ様」
今日も笑顔が神々しい。
アンリが挨拶を返すと、朝食の準備が着々と進んでいく。
昨日は誰にも会わなかったが、やはり王宮。
たくさんの使用人が働いているらしい。
皆、アンリと目が合うと会釈をしてくれる。
家庭でも学校でも冷たい扱いしかされてこなかったアンリには、大切にされることはこそばゆく、とにかく嬉しかった。
「さあ、アンリ様。どうぞ召し上がって下さい」
クラウスに勧められ、アンリも「いただきます」と言って食べ始める。
誰かに用意してもらう朝食なんて久しぶりだ。
しかし、朝食の材料も昨日の軽食のように野菜がパサパサしていたり、卵が小さく黄身の色が薄かったりした。
やはりこの国は非常事態なのだと感じる。
私に何か出来そうなことがあればいいんだけど。
とりあえず思い付いたことを二人に提案してみることにした。
「あの、食後ってまた紅茶を飲んだりしますか?もし良かったら私がお水を出すので、それで淹れてみてもらってもいいでしょうか……」
だんだん自信が失くなり、語尾が小さくなっていく。
「いいのですか!?」
クラウスが立ち上がって前のめりの体勢で訊いてきた。
「あの、でも、1度にグラス1杯分しか入れられなくて。グラスがたくさん必要なんです」
「何!?それはグラス1杯なら何度でも淹れられるということか?」
ディランが驚いたように尋ねるので、アンリはコクコクと頷く。
「時間がかかりますし、風呂桶くらいまでしか試したことはありませんが」
「「風呂桶!?」」
二人が同時に大きな声で繰り返し、その後に「そんなに……」とディランが呟いた。
「素晴らしい!!早速お願いしてもよろしいですか?こちらにグラスを多めに下さい!!」
クラウスがメイドに声をかけるが、その前にすでにたくさんのグラスが食堂に運び込まれ、使用人達が期待に満ちた目でアンリを見ていた。
アンリの前にグラスが1つ置かれた。
「では、いきますね」
一度ディラン、クラウスと目を合わせ、アンリはグラスに手をかざした。
コポコポコポ……。
3秒ほどでグラスは水で満たされた。
固唾を飲んで見守っていた使用人達から、歓声とどよめきが起こる。
「アンリ様、そちらの水を確認させていただいてよろしいですか?」
興奮ぎみにクラウスが尋ねる。
司祭のクラウスなら水質がわかるのだろう。
アンリは水がこぼれないように、丁寧にクラウスに手渡した。
クラウスはグラスを掲げながら水を見つめ、匂いを確認し、口をつけた。
「!!」
衝撃を受けた様子で、ディランの方を見て言った。
「これは聖水です!!」
「何だと!?聖なる火だけでなく、聖水まで!?」
二人が盛り上がっている中、アンリは一人付いていけずに困っていた。
聖水って何かしら。
普通のお水のはずなんだけどな。
説明が欲しくてクラウスを見ていると、クラウスが我に返ったらしい。
「取り乱して申し訳ございません。あまりにも素晴らしい現象を目の当たりにし、動揺してしまいました」
謝られてしまったが、アンリが求めているのは謝罪ではなかった。
「普通のお水のはずなんですが」
「もちろん普通に飲料水として使用できますが、この水には強い力があるのです。私も実際に目にするのは初めてですが。しかし、素晴らしい聖なる力を感じます」
「試してみるか。誰か、セガールにこの聖水を飲ませてやってくれ」
セガール?
アンリが誰だろうと思っている間に、メイドの一人がグラスを恭しく受け取り食堂から出ていった。
新しく淹れ直さなくて良かったのかしら?
アンリが空いているグラスにも水を注ぎ始めると、クラウスが嬉しそうにお礼を言ってくれる。
5つほどグラスに注いだところで、大きな足音が近付いて来るのに気付いた。
「来たな」
「来ましたね」
誰が近付いてきているのか、ディランとクラウスはすぐにわかったようだ。
アンリが6個目のグラスに手をかざした時、バタンと大きな音を立てて扉が開いた。
「すげーな、この水!!」
入ってきた体格のいい男性が、開口一番に叫んだ。
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