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感謝される喜びと、取り戻す自信
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えーと、どなたでしょう?
アンリが驚いている間にも、ズカズカと近付いてくるやたらガタイの良い男性。
近寄ると、思っていた以上に背が高いのがよくわかる。
あら?でも少し頬がこけているような……。
服も心なしかブカブカな気がするわ。
「お前が聖女様か?凄いな!この水のおかげで助かった」
アンリの両手を力強く握り、ブンブンと勢いよく振っている。
い、痛いわ……。
顔に出ていたのか、すぐにクラウスとディランが止めに入った。
「セガール、あなたが元気になったのは喜ばしいことですが、アンリ様に手荒な真似はいけませんよ」
「お前の馬鹿力ではアンリの腕がもげるだろ。しかし、起き上がれるようになったのか。凄い効き目だな」
二人とも嬉しそうに男性に話しかけている。
セガールと呼ばれたこの男性は、二人と親しいみたいだ。
アンリの視線に気付いたようで、クラウスが紹介をしてくれる。
「アンリ様、こちらはセガール。騎士団長を務めています。ここ最近、体調を崩していまして、心配していたのです」
「ああ、どんどん痩せていくし。騎士団長はこの国の武力の要だからな。こいつに何かあれば、国の一大事だ」
「大袈裟だな。それにすぐ治るって言っただろ?ま、ちっとばかしヤバかったがな。いやー、あの水で生き返った生き返った」
ガハハとセガールが笑っているが、アンリは笑えない。
あの水で生き返る?
そんなはずないわ、ただの水だもの。
お薬を飲んだわけではないのだから。
アンリは控えめに訂正することにした。
「あのー、セガールさんが元気になったのはたまたまで、私の水は普通の水だと思います」
偶然起こったことを、奇跡のように受け取られてしまったら後でがっかりさせてしまうだろう。
アンリは自分に優しくしてくれる人達を落胆させて、嫌われてしまうことを恐れた。
しかし、セガールは鼻で笑うと、諭すように言った。
「あのな?正直なところ、医者にも見放され、もう打つ手はないと言われていた。あんなに鍛えてきたこの身体が、重くて全然動かねぇんだ。筋肉が落ちていくしな。悔しくてこれまでかと思っていたら、どうだ!この水を飲んだ途端にこれだ。歩けるわ、身体中に力が漲っていくみてぇだ。これが普通の水の訳がねぇだろ?」
そして私に手を伸ばし、頭をポンポンと軽く叩きながら言った。
「まだこんな若い嬢ちゃんがなぁ。助かったよ。ありがとうな」
心からのお礼だと感じた。
アンリの目に涙が浮かぶ。
「わ、私こそありがとうございます。私が役に立てたなら嬉しいです。ふえーん……」
いよいよ泣き出したアンリ。
「なんで泣いてんだ?」
「アンリは自己評価が低すぎる。もっと自信を持て」
「そうですね、アンリ様は我らの大切な方なのですから」
三人に慰められ、アンリも涙を拭う。
もしかして、探してみればこんな私でも出来ることが色々あるのかもしれないわ。
もっと自分を信じてみよう。
その時、アンリは体に血が巡るような感覚を感じた。
確証は無かったが、試しにグラスではなく、大きめの空のピッチャーを手に取る。
皆が見守る中、アンリはピッチャーに手をかざした。
コポコポコポッ
ピッチャーは一瞬で水で満たされた。
いつもより早いわ。
しかも、前はグラス程度の量しか出せなかったのに。
アンリが驚いていると、側で見ていた三人も驚いたように口を開いた。
「なんだ?すげーな。こうやって水が出てくるのか?」
「アンリ、グラス以上の量も出せたのか?しかも、さきほどより溜まる速度が速かったぞ」
「アンリ様、魔力が強まったように感じます。もしかして、アンリ様の自信が魔力に影響するのでは?」
私の魔力が強まった?
確かにずっと自信がなくて、家族にも怒られて、余計自信が無くなって……。
もし魔法が強くなったら、もっと役に立てるかもしれない。
「あの、せっかくグラスを用意してもらったのにごめんなさい。もっと大きな容器をくれませんか?体調を崩している方はもっといらっしゃるのですよね?その方々にも配っていただけますか?」
初めてのアンリの前向きなお願いに、その場にいたもの全てが元気に肯定の返事を返すと、一斉に動き始めたのだった。
アンリが驚いている間にも、ズカズカと近付いてくるやたらガタイの良い男性。
近寄ると、思っていた以上に背が高いのがよくわかる。
あら?でも少し頬がこけているような……。
服も心なしかブカブカな気がするわ。
「お前が聖女様か?凄いな!この水のおかげで助かった」
アンリの両手を力強く握り、ブンブンと勢いよく振っている。
い、痛いわ……。
顔に出ていたのか、すぐにクラウスとディランが止めに入った。
「セガール、あなたが元気になったのは喜ばしいことですが、アンリ様に手荒な真似はいけませんよ」
「お前の馬鹿力ではアンリの腕がもげるだろ。しかし、起き上がれるようになったのか。凄い効き目だな」
二人とも嬉しそうに男性に話しかけている。
セガールと呼ばれたこの男性は、二人と親しいみたいだ。
アンリの視線に気付いたようで、クラウスが紹介をしてくれる。
「アンリ様、こちらはセガール。騎士団長を務めています。ここ最近、体調を崩していまして、心配していたのです」
「ああ、どんどん痩せていくし。騎士団長はこの国の武力の要だからな。こいつに何かあれば、国の一大事だ」
「大袈裟だな。それにすぐ治るって言っただろ?ま、ちっとばかしヤバかったがな。いやー、あの水で生き返った生き返った」
ガハハとセガールが笑っているが、アンリは笑えない。
あの水で生き返る?
そんなはずないわ、ただの水だもの。
お薬を飲んだわけではないのだから。
アンリは控えめに訂正することにした。
「あのー、セガールさんが元気になったのはたまたまで、私の水は普通の水だと思います」
偶然起こったことを、奇跡のように受け取られてしまったら後でがっかりさせてしまうだろう。
アンリは自分に優しくしてくれる人達を落胆させて、嫌われてしまうことを恐れた。
しかし、セガールは鼻で笑うと、諭すように言った。
「あのな?正直なところ、医者にも見放され、もう打つ手はないと言われていた。あんなに鍛えてきたこの身体が、重くて全然動かねぇんだ。筋肉が落ちていくしな。悔しくてこれまでかと思っていたら、どうだ!この水を飲んだ途端にこれだ。歩けるわ、身体中に力が漲っていくみてぇだ。これが普通の水の訳がねぇだろ?」
そして私に手を伸ばし、頭をポンポンと軽く叩きながら言った。
「まだこんな若い嬢ちゃんがなぁ。助かったよ。ありがとうな」
心からのお礼だと感じた。
アンリの目に涙が浮かぶ。
「わ、私こそありがとうございます。私が役に立てたなら嬉しいです。ふえーん……」
いよいよ泣き出したアンリ。
「なんで泣いてんだ?」
「アンリは自己評価が低すぎる。もっと自信を持て」
「そうですね、アンリ様は我らの大切な方なのですから」
三人に慰められ、アンリも涙を拭う。
もしかして、探してみればこんな私でも出来ることが色々あるのかもしれないわ。
もっと自分を信じてみよう。
その時、アンリは体に血が巡るような感覚を感じた。
確証は無かったが、試しにグラスではなく、大きめの空のピッチャーを手に取る。
皆が見守る中、アンリはピッチャーに手をかざした。
コポコポコポッ
ピッチャーは一瞬で水で満たされた。
いつもより早いわ。
しかも、前はグラス程度の量しか出せなかったのに。
アンリが驚いていると、側で見ていた三人も驚いたように口を開いた。
「なんだ?すげーな。こうやって水が出てくるのか?」
「アンリ、グラス以上の量も出せたのか?しかも、さきほどより溜まる速度が速かったぞ」
「アンリ様、魔力が強まったように感じます。もしかして、アンリ様の自信が魔力に影響するのでは?」
私の魔力が強まった?
確かにずっと自信がなくて、家族にも怒られて、余計自信が無くなって……。
もし魔法が強くなったら、もっと役に立てるかもしれない。
「あの、せっかくグラスを用意してもらったのにごめんなさい。もっと大きな容器をくれませんか?体調を崩している方はもっといらっしゃるのですよね?その方々にも配っていただけますか?」
初めてのアンリの前向きなお願いに、その場にいたもの全てが元気に肯定の返事を返すと、一斉に動き始めたのだった。
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