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離れられない二人
しおりを挟むアンリはディランに付いていきたかった。
グランタールの国王が幼馴染みであるなら、そんな辛い戦いの場で、自分が居ない時に傷付いてほしくなどなかった。
アンリに出来ることがなくても、せめて側で寄り添っていたかったのである。
「アンリ、戦争になるかもしれないんだぞ?何より、向こうの目当てはアンリなんだ。自ら近付くなんて、危険すぎる。」
ディランがすぐさま反対する。
その意見はむしろ当然で、ディランもみすみすアンリを危険な目に合わせることは避けたかった。
しかし、アンリだってディランだけを行かせるなんて耐えられない。
お互いがお互いを思い合い、話が平行線を辿っていた時、騎士団長のセガールがあっさりと言った。
「嬢ちゃんも連れていこうぜ。置いていっても、どうせ心配で落ち着かねぇだろ?だったら見えるところで守った方が確実じゃねぇか。」
「セガールさん!」
アンリが嬉しそうにセガールを見ると、笑って豪快なウィンクをしてくれた。
クラウスも苦笑しながら賛成する。
「確かにセガールの言うことも一理ありますね。ディラン様のことですから、一日に何度も早馬でアンリ様の様子を尋ねてきそうです。でしたら最初からお連れした方がいいかもしれませんね。」
「そういうこった!」
クラウスの発言に、ディランが口をつぐみ、思案していたが、やがて息を吐くと命令した。
「セガール、俺とアンリも出る。アンリの警備も重ねて頼む。」
「そうこなくちゃな。良かったな、嬢ちゃん。じゃあ俺は早速準備にかかるから、またな。」
大股にズンズン歩きながら、セガールが去って行き、クラウスもアンリの準備の為、静かに部屋を出て行った。
「ディラン様、せっかく心配して下さったのに、我が儘を言ってごめんなさい。」
二人だけになった部屋でアンリがしゅんとしながら謝ると、頭を撫でられた。
「いや、俺が馬鹿だった。アンリを守りたいなら、尚更身近に居なきゃならないのに。」
「私もディラン様を守りたいです!何も出来ないけれど、遠くから祈るだけじゃ嫌なんです・・・」
俯くアンリの手を包み、ディランが優しく力を込めた。
「俺もアンリを自分の手で守りたい。いや、守って見せる。安心して付いてこい。決して俺から離れるなよ?」
アンリを熱っぽく見つめるディランを、アンリも真っ直ぐに見つめると、ディランの手をぎゅっと握り返した。
ディランの手は大きく、アンリの全てを包み込むようで、この人とは離れられないとアンリは強く思った。
翌日、ディラン自ら兵を引き、グランダース軍は王都を出発した。
アンリはディランの馬に乗せられ、仲良く寄り添う姿を、見送りの使用人や民衆は、微笑ましそうに見ている。
「おいおい、これから戦闘だっていうのに、すっかり和んじまって。ま、負けるはずもないし、いいか。」
セガールが呆れる中、場違いな雰囲気は更に増していく。
「まるで、新婚旅行へ出発するみたいだな!」
「聖女様はまだ王都から出たことがないからな。この国を知ってもらう良い機会じゃないか。」
「いやいや、だから物見遊山じゃねーよ・・・」
セガールが力無く突っ込んだが、アンリの出現に活気付くグランダースの国民は、負けることなど少しも考えておらず、アンリ達は明るく送り出されたのだった。
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