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「エプロン姿の君に、恋してる」
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エプロン姿の君に、恋してる
「なあ悠真。そろそろそのエプロン、引退ちゃう?」
朝食の皿を下げながら、蒼汰が俺の腰元を指さした。
見れば、裾のあたりがほつれて糸がピロンと垂れている。何年も使ってるから無理もない。
「……たしかに、くたびれてきたかもなあ」
「な! なー! てことは、今日の午後はエプロン探しデートってことで決まりやな!」
「は?」
「俺も欲しいねん。お揃いエプロンとか、めっちゃよくない? ふたり暮らし感出るし!」
何が“ふたり暮らし感”なのかよくわからないが、蒼汰はもうテンションが上がってしまっている。
こういう時の彼は止まらない。
――そして数時間後、ふたりは街の雑貨屋を練り歩いていた。
「見てこれ! チェック柄でポケットふたつ! しかも裏地が猫!」
「それ、完全に女子向けだろ。可愛すぎる……」
「でも似合うで? 悠真がこれ着てキッチン立ってたら、俺、惚れ直すもん」
すでに惚れてんだろ、と喉まで出かけて飲み込んだ。
こっちはただエプロンが欲しかっただけなのに、
蒼汰にかかると何でも“ふたりラブイベント”にされてしまう。
「じゃあ、これとかどや? シンプルやけど、紐が革やねん。ちょっと料理人っぽいやろ?」
「……あ、それは、普通にかっこいいな」
「うわ~迷うなぁ、悠真は絶対ベージュ似合うし、俺はこの黒のデニムっぽいやつかな……あ、でもお揃いにしたいし……うーん!」
蒼汰がうんうん唸りながら、エプロンのハンガーを次々めくる姿は、まるで真剣勝負中の武士のようだった。
「そんなに悩むことか?」
「悩むわ! 大事やん、これから毎日、キッチンで並んで着るんやで?」
――え、それって。
“これから毎日”って。そういう未来、蒼汰の中ではもう決定事項なんだな。
「……そうだな。じゃあ、これにするか」
俺が手に取ったのは、シンプルな生成り地に、胸ポケットに小さく赤い糸で“Bon appétit”と刺繍されたエプロン。蒼汰がぱあっと目を輝かせた。
「それにしよ! お揃いで!」
帰宅後、ふたりでエプロンの試着会。
俺が紐を後ろで結んでやると、蒼汰はきゅっと背筋を伸ばして振り向いた。
「どお? 似合っとう?」
「……うん、すごく。似合ってる」
正直、想像以上に似合っていた。
エプロンの下に白Tシャツ、軽いウェーブの髪、頬の赤み。
恋人バカだが……蒼汰は、台所の天使みたいだった。
「じゃ、次は俺が悠真の結ぶな」
「え、いいよ自分で――」
「ええから。そういうのがええの、エプロン選びデートの醍醐味やん?」
なんか違う気がするが、結局、背後から蒼汰に結ばれた。
その手が、やけに優しくて、俺は――
ああ、また俺に惚れ直してるな、って思って……つい口元が緩んだ
「なあ悠真。そろそろそのエプロン、引退ちゃう?」
朝食の皿を下げながら、蒼汰が俺の腰元を指さした。
見れば、裾のあたりがほつれて糸がピロンと垂れている。何年も使ってるから無理もない。
「……たしかに、くたびれてきたかもなあ」
「な! なー! てことは、今日の午後はエプロン探しデートってことで決まりやな!」
「は?」
「俺も欲しいねん。お揃いエプロンとか、めっちゃよくない? ふたり暮らし感出るし!」
何が“ふたり暮らし感”なのかよくわからないが、蒼汰はもうテンションが上がってしまっている。
こういう時の彼は止まらない。
――そして数時間後、ふたりは街の雑貨屋を練り歩いていた。
「見てこれ! チェック柄でポケットふたつ! しかも裏地が猫!」
「それ、完全に女子向けだろ。可愛すぎる……」
「でも似合うで? 悠真がこれ着てキッチン立ってたら、俺、惚れ直すもん」
すでに惚れてんだろ、と喉まで出かけて飲み込んだ。
こっちはただエプロンが欲しかっただけなのに、
蒼汰にかかると何でも“ふたりラブイベント”にされてしまう。
「じゃあ、これとかどや? シンプルやけど、紐が革やねん。ちょっと料理人っぽいやろ?」
「……あ、それは、普通にかっこいいな」
「うわ~迷うなぁ、悠真は絶対ベージュ似合うし、俺はこの黒のデニムっぽいやつかな……あ、でもお揃いにしたいし……うーん!」
蒼汰がうんうん唸りながら、エプロンのハンガーを次々めくる姿は、まるで真剣勝負中の武士のようだった。
「そんなに悩むことか?」
「悩むわ! 大事やん、これから毎日、キッチンで並んで着るんやで?」
――え、それって。
“これから毎日”って。そういう未来、蒼汰の中ではもう決定事項なんだな。
「……そうだな。じゃあ、これにするか」
俺が手に取ったのは、シンプルな生成り地に、胸ポケットに小さく赤い糸で“Bon appétit”と刺繍されたエプロン。蒼汰がぱあっと目を輝かせた。
「それにしよ! お揃いで!」
帰宅後、ふたりでエプロンの試着会。
俺が紐を後ろで結んでやると、蒼汰はきゅっと背筋を伸ばして振り向いた。
「どお? 似合っとう?」
「……うん、すごく。似合ってる」
正直、想像以上に似合っていた。
エプロンの下に白Tシャツ、軽いウェーブの髪、頬の赤み。
恋人バカだが……蒼汰は、台所の天使みたいだった。
「じゃ、次は俺が悠真の結ぶな」
「え、いいよ自分で――」
「ええから。そういうのがええの、エプロン選びデートの醍醐味やん?」
なんか違う気がするが、結局、背後から蒼汰に結ばれた。
その手が、やけに優しくて、俺は――
ああ、また俺に惚れ直してるな、って思って……つい口元が緩んだ
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