「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「お風呂上がりのドライヤー」

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 夜の空気が少し冷たくなってきたある日。俺は湯船から上がってタオルで髪を拭いていた。ふと鏡を見ると、髪がまだ湿っていて、そのままにしておくと明日の朝パサつくこと間違いなし。
 「……めんどくさいな」
 独り言のように呟きながら、さっさと部屋着に着替え、ソファでゴロリとくつろいでいた。

 「悠真、髪乾かさんの?」
 蒼汰が、いつもより少し真剣な顔で声をかける。
 
「え、別に大丈夫だろ」
 俺は手を止めずに髪をかき上げる。だが、蒼汰はすぐに立ち上がり、ドライヤーを手にして俺の前に立った。

 「いや、もう夜は涼しいし……風邪ひくで。ほら、プロに掛けてもらえるんやでぇ」
 蒼汰は半分冗談めかして、半分本気でそう言う。俺の髪を指先で丁寧にかき分けながら、ドライヤーを手に取りスイッチを入れる。

 「……お母さんみたいやな」
 つい茶化して言ってしまった。少しの間、蒼汰は真顔で俺を見つめる。

 「彼氏です」
 真剣な表情で返された瞬間、思わず吹き出しそうになった。いや、でも笑えない。真剣な瞳で言われると、顔が赤くなる。

 蒼汰はそのまま、手際よく髪の根元から毛先までドライヤーを動かしていく。時折、手が肩や首に触れるたび、胸の奥がじんわり熱くなる。
 「……そんなに丁寧にされると…何だか……」
 思わず肩をすくめると、蒼汰はにやりと笑った。
 「なに、照れてんの?」
 小さな声で囁かれ、耳元に熱い吐息がかかる。体が自然とくすぐったくなる。
 
「……悠真、顔赤いで」
 蒼汰が指摘すると、思わず手で口元を覆った。

 「いや、別に……ただ……あったかいなって思っただけ」
 言い訳のように言うが、心の中では「もっと近くにいてほしい」と願っている自分がいた。
 ドライヤーの風に、蒼汰の指先の温もりが混ざる。

 「はい、もう終わり」
 蒼汰がそう言って、ドライヤーを止めた。俺は鏡を見て、ふわっと整った髪に少し感動する。

 「ありがとう……いやぁ、やっぱりプロ、ほんと……最高だな」
 振り返ると蒼汰がにっこり笑っている。
 「ほら、言ったやろ? 俺がやったら完璧やって」
 いたずらっぽく胸を張る蒼汰に、俺はそっと手を伸ばして肩を抱く。

 「うん……ありがとう、彼氏」
 小さく囁くと、蒼汰は照れくさそうに顔を背けつつも、俺の手を握る。

 ドライヤーひとつで始まった夜のほんの小さな出来事。でも、二人の距離はぐっと近づいて、胸の奥が甘く満たされていく――。
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