「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「はぐれて見つけた、おそろい」(蒼汰視点)

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 朝から天気がよくて、ちょっと寒いけど気持ちいい。
「そろそろ行こか」
 悠真がそう声をかけた。

 今日はアートフェスの日。俺の仕事休み、平日開催の小さなイベントに悠真が連れてきてくれた。
 手作り雑貨や絵画、音楽、写真展――いろんな“好き”がぎゅっと詰まってるらしい。

「見たいとこ、ありすぎて困るなぁ」
 パンフレットを覗き込みながらわくわくしていると、悠真が笑って言う。
「はぐれんなよ?」
「子どもちゃうねんから!」
 そう言い返したけど、内心はすでにテンション爆上がりだった。

 最初に入った写真展がもう最高で、光の撮り方や構図が胸にぐっとくる。
「ほら、ポストカード売ってる」
 悠真が指さした先には、夕暮れの街角を写した一枚。
「これ、部屋に飾りたいな」
 そう言うと、悠真が「いいな。買おっか」って。
 ふたりで同じ写真を選んで、なんだか少し照れくさかった。

 次は陶芸体験ブース。
 粘土を触るなんて、子どもの頃以来かもしれん。
「悠真、見て! これ、マグカップ……っぽい?」
「ぽいっていうか、ギリギリカップやな」
「ギリギリって!」
 笑いながら形を直してくれる悠真の指が、少し粘土に触れて、俺の手にも触れた。
 ――ちょっとだけ、心臓が跳ねたのは内緒。

 ……で、気づいたら、はぐれてた。
「悠真?」
 振り返っても姿が見えない。
 人は多いけど、胸の奥がスンッと冷える。
「子どもちゃうねんけどなぁ……」
 そうつぶやきながら、あちこちのブースをのぞいて歩く。

 ふと、革の香りがした。
 そこだけ少し静かで、やわらかい色のライト。
 手作りの財布やベルト、キーケースが並ぶ棚の隅に、小さな革製のキーホルダーを見つけた。
 ――柴犬の顔。

「……スモモに似てるやん」
 思わず手に取る。
 革独特のぬくもりのある茶色、くるっとした目。スモモそっくりやん。
「これ、ええなぁ。おそろいでつけたら可愛いかも」
 気づけばレジに並んでいた。

 お会計を済ませたそのとき――
「蒼汰!」
 人混みの向こうから、少し息を切らした悠真が走ってきた。
「もぉ、どこ行ってた。探したぞ」
「ごめんごめん、おかげでええもん見つかったでぇ」
「なに?」

 ポケットからキーホルダーを取り出す。
「見て、スモモやでぇ」
「うぉ、可愛い。ほんとだ、スモモ似てる」
「そやろぉ。おそろいで買ってもた」

 悠真が笑って、「……ほんと、蒼汰らしい」って言った。
 その声がやわらかくて、胸の奥がじんわりした。

 アートフェスの帰り道、ふたりのリュックにはおそろいのスモモがぶら下がっていた。ふと見上げた空には、夕日でオレンジ色。

「なぁ悠真、今度また行こな」
「あぁ。次は、はぐれんなよ」
「そ、それは言わん約束やん!じゃぁ、手をつないで……」
 ふたりの笑い声が、寒空にゆっくり溶けていった。
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