「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「勝負に勝って、恋で負けるタイプ」

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「ただいま」
「おっ、おかえり。蒼汰、もう帰ってきてたのか」
「なにそれ、せっかく早く帰ってきたのに」
「ごめん、ちょっと買い忘れがあってさ」
「ええよ、このまま近くのコンビニ行ってくるわ」
「俺も行く。ちょっと待て」

 夜風はすっかり冷たくなっていて、指先が少しかじかむ。
「最近、急に寒くなったな」
「ほら悠真、ジャケットの前しめたほうがええで」
 相変わらず、こういうとこは妙に気が回る。

 コンビニのレジ前。
 蒼汰がじっと、おでんのケースを見つめていた。
「おでん、ええ匂いやなぁ……」なんて呟いてる。
 俺は知っている。
 蒼汰が、おでんを食べたくなってること。
 でも、家で晩飯を用意してる俺に気を使って、黙ってることも。

 だから、蒼汰が雑誌を眺めてる間に、
 俺はこっそりレジでおでんを頼んだ。

「蒼汰、帰るぞ」
「お、おう」
 自動ドアが開くと、冷たい空気が頬をなでる。
「外、寒いなぁ」
「だから、おでん買った」
「……え、マジで? 悠真、天才やん」
 まるで子どものように目を輝かせる蒼汰。
 ――この顔が見たくて、つい甘やかしてしまうんだ。

 帰り道の途中、いつもの公園のベンチに腰を下ろす。
 コンビニの袋を開けると、ふわっと出汁の香りが広がった。
 湯気の向こうで蒼汰がほっと笑う。
「お、いい匂い。……これ、たまご入ってるん?」
「もちろん。おでんの主役だろ」

 箸をのばした瞬間、カチン、と当たった。
「おい悠真、それ俺が取ろうと思ってたやつ!」
「俺も思ってた」
「せーのでジャンケン!」
「……子どもか」

 結果――蒼汰の負け。
「ぐぬぬ……」と唸ってる蒼汰を見て、つい笑ってしまう。
 そして、たまごを割って、そっと蒼汰の口元に持っていった。
「ほら、好きだろ?」
「……そういう優しさ、反則やん」
「勝負に勝って、恋で負けるタイプなんだよ」
「なにそれ。もう、しらん」

 出汁がしみたたまごを半分こにして食べながら、
 ふたりで顔を見合わせて笑う。

 ――あったかい夜。
 おでんの湯気の向こうに、少しだけ冬の気配
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