「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「夜、帰り道」

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 実家を出ると、夜の空気は思ったより冷たかった。
 駅までの道は静かで、足音が二人分、並んで続く。

「スモモ、最後まで元気やったな」
「だな。お前のこと、相当気に入ってるな」

 蒼汰は照れたみたいに笑って、マフラーに口元をうずめた。
 その横顔を、少しだけ遅れて見つめる。
 こういう時間が、前より増えた。

 家族の輪の中に蒼汰がいることに、違和感がなくなった。
 それが、嬉しくて、同時に少し怖い。
 大切になるほど、失くしたくなくなる。

 姉ちゃんとあきらさんの話が、頭をよぎる。
 自然で、当たり前みたいに並ぶ二人。
 ああいう未来が、俺たちにもあるんだろうか。

 信号待ちで立ち止まる。蒼汰が寒そうに肩をすくめたから、
 何も言わずに距離を詰める。触れた腕が、あたたかい。

「悠真……今日さ」
「ん?」
「ええ正月やったな……心が満腹やねん」

 短い言葉に、全部詰まっている気がした。
 俺はうなずくだけで、続きは言わない。言えない、が正しい。

 同棲を始めたときもそうだった。
 勢いじゃない。覚悟を、少しずつ形にしてきただけだ。

 いつか、ちゃんと伝えたい。
 軽くじゃなく、逃げ道のない言葉で。
 蒼汰と一緒に進みたい、と。

 駅の明かりが見えてきて、蒼汰が小さく息を吐く。
「来年も、またおばあちゃんの雑煮たべていなぁ」
「……ああ。もちろん、来年も、その先も」

 言い切ると、胸の奥が静かに落ち着いた。
 不器用でもいい。遅くてもいい。
 俺は、この手を離さない。

 並んで歩く帰り道。今は、それで十分だと思えた。
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