【完結】聖クロノア学院恋愛譚 ―君のすべてを知った日から―

るみ乃。

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8 週末のお出かけ

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 週末の朝、寮はいつもより静かで、空気も緩んでいた。
 レオンと寮の門を出ると、向こうから手を振るテオとノエルが見えた。

「やっと来たか」

 テオが駆け寄ってきて、レオンは謝るように笑った。

「悪い、ユリスがちょっと準備に手間取ってさ!」

 実際にはレオンが遅れていたが、俺はツッコミを入れなかった。
(ほんと、こういうとこアルファらしくないよな)

「今日はレオンの歓迎も兼ねてるし、楽しもうな!」

 テオの言葉に軽くうなずき、俺たちは街へ向かって歩き出す。
 賑やかな商店街に入ると、甘い匂いが漂ってきた。

「わぁ、これうまそうだな」

 思わず口に出してしまった。色とりどりのタルトや焼き菓子が並ぶ店に目を奪われる。

「おいおい、あんまり買うなよ。俺の母さんが料理を用意してくれてるから」

 テオが言うと、俺はふと思い付いて提案した。

「じゃあ、おばさんにお土産でも買っていこうか?」

 ノエルがぱっと顔を上げて、

「それいい!」

 と賛成した。

「オッケー、じゃあ好きなもの買ってこい!」

 テオの言葉を背に、ノエルが俺の手を引いてお菓子屋へ向かう。

「わあ~すごい」

 ショーケースを見て、ノエルが興奮して俺の手を掴んだ。

「見てユリス!このマカロン、色ヤバくない?パステルすぎて宇宙!」

 俺はツッコミを入れる。

「パステルすぎて宇宙って、概念?」

「概念!これは映えじゃなくて降臨!」

 ノエルの言葉に笑ってしまった。

「でも、テオの母さんが料理作ってくれるから、あんまり買いすぎない方がいいぞ」

 ノエルがふっと俺を見て言った。

「え、もしかしてユリス、"おなか空けとかなきゃ派"?」

「もちろん。後で後悔するだろ」

「甘いもんは別腹ってレオンが言ってたよ?」

「レオン、あいつめっちゃ食うからな」

 ノエルと笑い合って、目を引いたフィナンシェを選んだ。

「お土産にぴったりだね」

「うん、外さないやつ」

「映えと味、どっちも欲しいでしょ?」

 ノエルがドヤ顔で言いながら、マカロンとクッキーも手に取った。
 俺たちは笑いながらレジに向かう。

 その時、ノエルがふと口を開いた。

「ねえ、ユリス。レオンとどう?」

 ちょっと驚いたが、俺は答えた。

「うーん、普通かな。レオンは相変わらずマイペースで、思ったより気を使わないから楽だよ」

 ノエルは少し黙って、軽く頷いた。

「そっか…レオンは他のアルファとはちょっと違うもんね」

 レジに進みながら、なんてことないお菓子選びだったけど、こういう時間も悪くないなと思った。
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