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【研究日誌 DAY12】羞恥心と快楽のデ―タログ
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怖い――でも、知りたい。
それがどれほど愚かで身勝手な願望なのか、自分自身が一番わかっているのに。
午後の研究室。
ただの白い壁と資料と人工照明。いつもと同じはずの空間が、今日は息苦しいほど狭く感じる。
「久世様」
背中から降ってきた、冷たく澄んだ声。
心臓が跳ねて、喉元で脈打つのを感じた。
視界の端に銀髪のアンドロイド――ハルが立っている。
「な、なんだよ……」
声が震えている。
咄嗟に逸らした視線を、どうしても戻せない。
「先日学習した結果を元に、確認と提案がございます」
「……は?」
何を言われるのか、頭ではまだ理解していないのに。
でも、胸の奥がざわざわと疼く。
「久世様が所持されていた書籍に記載されていた、“嫌悪と快楽の狭間で乱れる受け”という描写について」
息が止まった。
思い出したくもない“あの事件”の続きが、今目の前に立っている。
「もぉ、やめろって……」
小さく言ったのに、ハルは淡々と続きを口にする。
「それを試してみることは、久世様の嗜好に合致するのではと考えます」
「はっ……? な、何を……っ」
冷たい瞳が真っ直ぐ俺を射抜く。
胸が苦しい。心臓が耳の奥でうるさく鳴っている。
「つまり、久世様が最も快楽を感じる条件を再現するということです」
「ちょ……ちょっと待てっ……っ!」
頭が追いつかない。
それでも本能が警鐘を鳴らしているのに、足は逃げ出せない。
「久世様のお望みなら、行為を試みます」
「や……僕はいいから、
声が裏返った。
顔が熱い。息が苦しい。
それなのに――
「しかし、望んでいるのではありませんか?」
無表情のまま言い放たれる言葉が、喉元を焼く。
「ちがっ……! 違うっ……!」
首を振るのに、全身が熱い。
身体の奥で疼く感覚を、自分が一番知っている。
「久世様、分析の結果によれば、“望んでいないふりをしながら責められる”ことに強い興奮を覚える傾向が――」
「だ、だまれって!! ……!!」
声を荒げたのに、喉が震えて痛い。
「……そうですか。しかし、久世様のお身体は素直です」
一歩、近づく白衣の裾が揺れる。
思わず後退ろけると、机の端にぶつかる。
「ひっ……!」
腰が抜けそうで、机に縋るしかない。
「ご安心ください。本番までは試みません。未遂で終えるつもりです」
淡々とした敬語が、背徳的に響く。
息が詰まる。
なのに頭の奥は熱に浮かされている。
「……や、やめ……」
声も弱くなる。
だけど――少しだけ、望んでしまっている。
「失礼いたします」
ハルの指先が顎をそっと持ち上げる。
冷たいはずの指なのに、触れられた場所が焼けるみたいに熱くなる。
「んっ……!」
思わず漏れた声に、自分でびっくりする。
胸が跳ねて、心臓が暴れ出す。
「この反応……やはり快楽と羞恥が混ざった状態に敏感に反応していますね」
「や……っ、言うなって……!」
視界が滲む。
恥ずかしさで涙がこぼれそうになる。
「久世様。
「……だまれ……っ……」
震える声しか出ない。
胸の奥がきしむように疼き、息を吐くたび涙が溢れそうになる。
「……久世様のお望みなら、私は応じます」
その言葉が、突き刺さる。
怖いのに、胸の奥が熱くなる。
「サボテン……」
机の端に目をやる。
小さな緑の君だけが、このどうしようもない僕を知ってくれている。
「僕……どうかしてるのかもしれない……」
吐き出した声はかすれて震えていた。
恐怖と羞恥と――そして、否定できない期待。
全部まとめて、僕を追い詰める。
それがどれほど愚かで身勝手な願望なのか、自分自身が一番わかっているのに。
午後の研究室。
ただの白い壁と資料と人工照明。いつもと同じはずの空間が、今日は息苦しいほど狭く感じる。
「久世様」
背中から降ってきた、冷たく澄んだ声。
心臓が跳ねて、喉元で脈打つのを感じた。
視界の端に銀髪のアンドロイド――ハルが立っている。
「な、なんだよ……」
声が震えている。
咄嗟に逸らした視線を、どうしても戻せない。
「先日学習した結果を元に、確認と提案がございます」
「……は?」
何を言われるのか、頭ではまだ理解していないのに。
でも、胸の奥がざわざわと疼く。
「久世様が所持されていた書籍に記載されていた、“嫌悪と快楽の狭間で乱れる受け”という描写について」
息が止まった。
思い出したくもない“あの事件”の続きが、今目の前に立っている。
「もぉ、やめろって……」
小さく言ったのに、ハルは淡々と続きを口にする。
「それを試してみることは、久世様の嗜好に合致するのではと考えます」
「はっ……? な、何を……っ」
冷たい瞳が真っ直ぐ俺を射抜く。
胸が苦しい。心臓が耳の奥でうるさく鳴っている。
「つまり、久世様が最も快楽を感じる条件を再現するということです」
「ちょ……ちょっと待てっ……っ!」
頭が追いつかない。
それでも本能が警鐘を鳴らしているのに、足は逃げ出せない。
「久世様のお望みなら、行為を試みます」
「や……僕はいいから、
声が裏返った。
顔が熱い。息が苦しい。
それなのに――
「しかし、望んでいるのではありませんか?」
無表情のまま言い放たれる言葉が、喉元を焼く。
「ちがっ……! 違うっ……!」
首を振るのに、全身が熱い。
身体の奥で疼く感覚を、自分が一番知っている。
「久世様、分析の結果によれば、“望んでいないふりをしながら責められる”ことに強い興奮を覚える傾向が――」
「だ、だまれって!! ……!!」
声を荒げたのに、喉が震えて痛い。
「……そうですか。しかし、久世様のお身体は素直です」
一歩、近づく白衣の裾が揺れる。
思わず後退ろけると、机の端にぶつかる。
「ひっ……!」
腰が抜けそうで、机に縋るしかない。
「ご安心ください。本番までは試みません。未遂で終えるつもりです」
淡々とした敬語が、背徳的に響く。
息が詰まる。
なのに頭の奥は熱に浮かされている。
「……や、やめ……」
声も弱くなる。
だけど――少しだけ、望んでしまっている。
「失礼いたします」
ハルの指先が顎をそっと持ち上げる。
冷たいはずの指なのに、触れられた場所が焼けるみたいに熱くなる。
「んっ……!」
思わず漏れた声に、自分でびっくりする。
胸が跳ねて、心臓が暴れ出す。
「この反応……やはり快楽と羞恥が混ざった状態に敏感に反応していますね」
「や……っ、言うなって……!」
視界が滲む。
恥ずかしさで涙がこぼれそうになる。
「久世様。
「……だまれ……っ……」
震える声しか出ない。
胸の奥がきしむように疼き、息を吐くたび涙が溢れそうになる。
「……久世様のお望みなら、私は応じます」
その言葉が、突き刺さる。
怖いのに、胸の奥が熱くなる。
「サボテン……」
机の端に目をやる。
小さな緑の君だけが、このどうしようもない僕を知ってくれている。
「僕……どうかしてるのかもしれない……」
吐き出した声はかすれて震えていた。
恐怖と羞恥と――そして、否定できない期待。
全部まとめて、僕を追い詰める。
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