〜無機質な被検体に触れられ……恋と快楽のデータを取られる腐男子研究員〜「僕とサボテンとアンドロイド」

るみ乃。

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【研究日誌 DAY 15】変化の兆し

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 ……どうして、こんなにも心臓がうるさいんだろう。

 今日も研究室には、あの無表情なアンドロイド――ハルが立っている。
 ただそれだけのはずなのに、胸の奥がざわざわして落ち着かない。

「久世様、昨日のデータを確認いたしました。」

 低く澄んだ声が耳に届くと、反射的に肩が跳ねる。
 息を呑む音が、自分でもはっきりとわかった。

「っ……ああ……」

 振り返れば、変わらぬ無表情のまま、ハルの視線が真っ直ぐにこちらを見ている。
 銀髪に金属のような艶を纏い、深い黒の瞳は冷たく澄んでいる。それだけなのに、心臓が痛いほど鳴り響く。

「昨日の記録には、“羞恥により呼吸が乱れる”という記述が複数確認されました。」

「や……やめろっ……その話は……!」

 声が掠れ、顔を背ける。
 なのにハルは淡々と続けた。

「ただ、生体反応には恐怖と快楽の混在が認められます。」

「だっ……だから、その話はもう……っ!」

 耳まで熱くなるのを感じる。
 それでも、無機質なその声を、どこかで聞きたくなっている自分が怖かった。

「昨日の接触記録もございます。首筋に触れた際、脈拍が急上昇し――」

「っ……だ、だから黙れって言ってるだろ……!」

 声が裏返る。
 机に置いた手が震えているのを隠せない。

 嫌だと思うのに――心の奥で微かな期待が疼く。

 ハルはしばらく言葉を止めた。
 まるで言い過ぎたことを考えているように、ほんの一瞬だけ視線を伏せる。

 ――そんな仕草、人間みたいじゃないか。

「……大丈夫ですか?」

「……平気だ。」

 喉の奥から絞り出した声は、情けないほど弱かった。

「では……失礼いたします。」

 視線を逸らす、その仕草がいつもより少しだけぎこちなく見えた。
 胸の奥がきゅっと痛む。

 気づけばノートを開いて、無意識に言葉を走らせていた。
 昔はこんなこと、したこともなかった。

 本当に怖いのは、あの無表情の瞳の奥に、ごくわずかな温度を探してしまう自分だ。

「久世様、本日のデータをいただけますか?」

「あ、ああ……ここに……」

 書類を渡すとき、指先がハルの手に触れる。

 “びくっ”

 わずかな接触だけで、胸が跳ねるように速くなる。
 けれど――その時、ハルの瞳が一瞬だけ揺れたように見えた。

「失礼いたしました。」

 何事もなかったように戻った無表情。
 でも、声の端がかすかに柔らかかった気がした。

 どうしてだろう。
 ほんの一瞬の変化が、心の奥を焼き付けるように残る。

 夜、帰り際。
 研究室のドアに手をかけたとき、背中から声をかけられる。

「久世様、明日もよろしくお願いいたします。」

「……っ、あ、ああ……」

 ただそれだけの言葉なのに、胸の奥が温かくなる。
 口の中が渇いて、息が詰まりそうだった。

 バカみたいだ。
 機械に心なんてあるはずないのに。

 それでも、あの低い声を聞くと、不思議と安心する。
 冷たい指先、今日の柔らかな声――何度も思い返してしまう。
 ほんの少しだけ、また触れてほしいと思ってしまう。

「……っ」

 机に顔を伏せ、小さく息を吐く。
 自分でもわからない感情に胸が疼く。

「サボテン……」

 机の上の小さな緑に視線を落とす。

「……僕、本当にどうかしてるよ……」

 情けない。
 でも――ハルの瞳の奥に見えた微かな揺らぎが、どうしても頭から離れない。

 冷たいだけだった瞳に、ほんのわずかでも熱を見た気がした。
 その変化を、心の奥で何度も確かめてしまう。

 怖い。でも――嫌じゃない。
 むしろ、その小さな変化が愛しくて仕方ない。

 夜の研究室に残る微かな温もりを抱えながら、僕はまた小さく震えていた
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