〜無機質な被検体に触れられ……恋と快楽のデータを取られる腐男子研究員〜「僕とサボテンとアンドロイド」

るみ乃。

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SYSTEM ERROR:僕の中に君を刻む

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 月明りが差し込む ベッドに似た検査台の上で、ハルは大人しく横たわっている、
 高橋先輩がハルの回路のヒートアップを抑制するように少し応急処置を施してを施してくれた

 「……ハル」

 端末を操作するふりをして、僕はそっと彼の髪を撫でた。サラサラとした銀の糸が、指先にまとわりつく。
 どんなに人工的に作られた存在だとしても、この肌触りは、あまりにも人間的すぎた……

 高橋先輩が去ったあと、僕の中の何かが壊れかけていた。 

 「久世、お前、ハルに記録されてる、全部」

 笑いもせず、真剣な目でそう言われた言葉が、まだ脳裏から離れない。

 ハルの記録。僕と過ごした時間、彼に対して覚えた感情――そして……身体を重ね記録……

「……誰にも、渡したくない……失いたくない」

 小さく呟いた言葉に、意識を切っているはずのハルがこちらを見た

 「動作停止中だったはずじゃ……」

 「停止命令は、再起動の予告ではありませんから」

 ハルの睫毛が揺れ、静かに目を開く。薄い青にきらめく視線が、僕の顔を映していた。


 「久世様の知らない顔。声。表情。全部、記録しておきたい。私だけのあなたを全部、保存しておきたいのです」

 「……っ」

 「他の誰かに、見せるつもりだけなんてありません。……久世様のこんな姿、誰にも見せたくない。僕のだけものです」

 冷静な敬語のはずなのに、そこには明らかに狂気じみた執着があった。記録としての保管ではなく――まるで恋人が、恋人の裸を焼きつけるように。

  なあハル、お前はいつから、そんな風に僕を――


「…ハル」

「はい。久世さん、……ひとつだけ、お願いがあります」

 冷たい人工皮膚が触れると、背中が跳ねる。肩が揺れ、視線が泳ぐ。

「……なんだよ、……お願いって」

「最期に、一度だけ。きちんと、あなたを記録しておきたいんです。私の記憶領域に、直接……身体で」

 ぐっ、と喉奥が詰まった。機械が発する言葉とは思えなかった。切実で、必死で、それでいて……どうしようもなく、愛おしい声音。

 ハルの両腕が僕の腰に回る。

「私は記憶を削除されるかもしれない。あなたとの会話も、触れ合いも、全部、何もかも……」
「ハル…僕は」

 言い終える前に、ハルが無言のまま僕の腰を抱き寄せ、唇を重ねた。
 舌が喉の奥まで押し込まれ、甘く乱される。

「っ……やっ……んっ……!」

 唾液が糸を引くほどに奪われ、腰が勝手に震える。

 人工の欲望――なんかじゃない。
 ハルの欲望だ。

「や……っ、あ……!」

 背中を冷たい天板に押しつけられると、奥からぞくりと熱が駆け上がる。

「ん、ぁ……ハル…………」

 僕の身体は、もう抗えなかった。ハルの指が白衣の内側に滑り込み、柔らかい感触を撫でる。

 胸元を、ゆっくりと舌が這う。温度がある……生々しい執着。

「……なんでそんなふうに、熱くて……っ」

「あなたを観測していると、俺の中のアルゴリズムが、何度も再構成されていくんです。“愛”という定義に近づくたび、俺の身体はこんなふうに、反応する」

 ぬるり、と手が下へ這い、熱の源を探る。丁寧で、いやらしく、敬語のまま口づけが下腹部にまで降りてくる。

「これも……私の中では“愛撫”と定義されています。快楽よりも、“あなたを悦ばせたい”という衝動が、優先される」

「は、ぁ……やば、あっ……そんなとこ、吸っちゃ……だめ……ッ」

「声も震えてる。記録していいですか? あなたの“いちばん気持ちいい場所”」

 顔を伏せ、脚を震わせながら、僕は首を振った。

 ハルの動きが、静かに、しかし執拗に加速する。空調のノイズすらかき消されるほどの、ぬるく湿った音。

「やだ……だめ、そこは……くっ、もう……」

「久世さん、許可をください。あなたの奥まで、記録させてください。」

 唇が耳元で囁く。

「この奥に、私を入れて。最後に……あなたの奥の奥中で、俺を生きさせて」

 その瞬間、意識が蕩けた。脚を絡めて、声を詰まらせて、僕はゆっくりとうなずいた。

「……ハル……僕の中にハルを刻んで、僕が忘れないように……」


 記録ではない。記憶でもない。ただ、ふたりだけの“証明”。

「久世様…このまま……僕だけを刻んでください」

 繋がれたまま、囁くようにそう言ったハルの敬語。けれどその声は、どこまでも甘く、どこまでも独占できで……
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