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此れ何だよ
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目が覚めた俺は辺りを見回す。確か俺は来夢に殴られて…来夢は?来夢は何処だ?来夢の姿が見当たらない。俺は探しに行こうと体を動かした…けど動けない。ベッドに寝かされた俺は腕も足も手錠に繋がれている。何だ此れ。
俺がどんなに引っ張っても手錠は頑丈で外れる事はない。引っ張ると腕や足が痛い。何でこんな事……
俺が如何するか思案していた時にドアが開いた。其処には来夢が飲み物を持って立っていた。
「先輩、起きたんですね。先輩が好きなホットミルク持ってきました」
何で此奴こんなに普通なんだよ。俺がこんな風になってるのに如何して…
「お前…此れなんだよ。此の手錠早く外せ」
「駄目ですよ。外しちゃったら先輩逃げちゃうでしょう?俺から離れちゃうでしょう?」
「逃げないし離れねぇから」
「其れでも駄目です。大丈夫ですよ、俺がちゃんと生活には困らないように最善は尽くします」
「此れじゃ自由じゃねぇじゃん」
「自由になったら俺から離れるんですよね?さっきみたいに」
一体如何したってんだ。来夢はこんなに俺の事を困らせるような事はしなかったのに。こんなの嫌だ。監禁されてるみたいじゃねぇか。
「こうやって先輩が此処に居れば先輩が危険な目に遭う事も無いんです。俺とずっと一緒に過ごせるんです」
そんな事言ったって…ここ迄する事はない。
「何処にも行かねぇから外せって。此れ痛いし」
「寝る時だけは取ってあげます。痛いのは多少我慢してください。貴方が何処にも行かないと言っても俺は外しませんから」
目が笑ってない。いつもの来夢じゃない。やっぱりおかしい。
「来夢…お前如何しちゃったんだよ」
「…?なんともないですよ。さ、ホットミルク飲んでください。冷めちゃいますから」
なんともないと本人は言うけど絶対に何かがおかしい。俺が此奴を変えてしまったのか…?
「今は要らない」
とてもじゃないけどホットミルクなんて飲む気になれない。それに手錠に繋がれてたら飲めないし。
「俺が作ったから飲まないんですか?」
「いやそうじゃなくて…ただ飲む気になれないだけ」
「…飲んでください」
「てかこの格好じゃ飲めねぇじゃん」
「大丈夫ですよ。飲ませてあげます」
そう言うと来夢がコップに口を付ける。え…?お前が飲むの?するといきなり俺は口付けられる。そして口内にはホットミルクの甘さが広がる。口移しで飲ませやがった此奴。
何度も何度も繰り返し口移しで飲まされる。其の度に俺は顔が熱くなる。何でだよ。こんな風に監禁じみた事されても何で此奴にキスされるだけで熱くなんだよ。俺馬鹿が付く程此奴の事が好きなんだ。
「飲み終わりましたね」
「…いつ外してくれんの」
「…外すつもりはないですよ。でも学校が始まったら仕方がないんで外しますけど」
其れ迄の辛抱か。でもまだまだ日がある。耐えられんのか俺。
「手錠した侭で飯とかは如何すんの」
「食べさせます」
「歯磨きは」
「俺がやってあげます」
「トイレは」
「其の時は外しますけどトイレの外で俺が待ってますね」
「風呂は」
「一緒に入って洗って差し上げます。手錠は外しませんよ」
「寝る時は」
「其の時は外しますけど俺がしっかり抱き締めます」
此奴どこまでも徹底して手錠を外さないつもりだ。手錠が外れるのはトイレと寝る時だけ。逃げ出すならそのうちか。
「あ、逃げ出そうなんて考えないでくださいね?其の方が身の為です」
まるで心の内を読まれたようでぎくりとする。俺が逃げ出したら如何なるんだろうか。若しそれでまた捕まってしまえば今度は本当にずっと監禁されてしまうかもしれない。学校があろうとなんだろうと手錠なんて外される事はないかもしれない。下手に動けねぇじゃん。
俺がこうやって監禁っぽい事をされてても来夢は特別何かをするわけでもなかった。ベッドに腰掛けてただ他愛もない話をするだけだ。何もない事が逆に怖い。
するといきなり俺のスマホが鳴った。此の音は誰かからの着信音。出なきゃ。でも出れない。
「……此れって女の子ですか?まさか浮気?」
来夢が俺のスマホを見つめる。浮気なんて俺はする筈ない。
「誰から?」
「……木村って人です」
きっと俺の隣りの家に住んでる幼馴染の女子だ。昔から仲が良い。其の幼馴染は一体どういう用件で掛けてきたのだろうか。
「貸して」
「駄目です」
「何で」
「先輩の耳は俺の声を聞く為にあるんです。他の人の汚い声を聞く為のものじゃないんです。だから俺が代わりに出ますよ」
「何言ってんのお前。良いから貸せって」
此奴何言ってんだよ。意味が分からない。
「……先輩の耳が穢れるから駄目です。若し穢れたら其の耳は不要って事になっちゃいますよね。そしたら其の耳を削ぎ落とす必要が出てきちゃうんですよ」
何処からかカッター取り出して俺の耳に当てがう。俺は硬直する。此奴きっと本気だ。本気で言ってる。
「それでも出ますか?」
ひやりとしたカッターの冷たさが耳に伝わる。此の目は冗談で言ってる目じゃない。来夢…如何したんだよ…
「あ、電話切れちゃいましたね。もう電源切っておきますね」
「緊急な連絡が入ったら分かんねぇじゃん」
「俺たちの二人の時間を邪魔するのはどんな理由であれ許せません」
来夢ってこんな奴だったか?
「でも…」
「じゃあ俺が連絡を取るって事で良いなら電源は切りませんよ」
「其れで良い」
「じゃあ切りません」
これから俺は如何なるんだろうか。様々な不安が頭を過る。
俺がどんなに引っ張っても手錠は頑丈で外れる事はない。引っ張ると腕や足が痛い。何でこんな事……
俺が如何するか思案していた時にドアが開いた。其処には来夢が飲み物を持って立っていた。
「先輩、起きたんですね。先輩が好きなホットミルク持ってきました」
何で此奴こんなに普通なんだよ。俺がこんな風になってるのに如何して…
「お前…此れなんだよ。此の手錠早く外せ」
「駄目ですよ。外しちゃったら先輩逃げちゃうでしょう?俺から離れちゃうでしょう?」
「逃げないし離れねぇから」
「其れでも駄目です。大丈夫ですよ、俺がちゃんと生活には困らないように最善は尽くします」
「此れじゃ自由じゃねぇじゃん」
「自由になったら俺から離れるんですよね?さっきみたいに」
一体如何したってんだ。来夢はこんなに俺の事を困らせるような事はしなかったのに。こんなの嫌だ。監禁されてるみたいじゃねぇか。
「こうやって先輩が此処に居れば先輩が危険な目に遭う事も無いんです。俺とずっと一緒に過ごせるんです」
そんな事言ったって…ここ迄する事はない。
「何処にも行かねぇから外せって。此れ痛いし」
「寝る時だけは取ってあげます。痛いのは多少我慢してください。貴方が何処にも行かないと言っても俺は外しませんから」
目が笑ってない。いつもの来夢じゃない。やっぱりおかしい。
「来夢…お前如何しちゃったんだよ」
「…?なんともないですよ。さ、ホットミルク飲んでください。冷めちゃいますから」
なんともないと本人は言うけど絶対に何かがおかしい。俺が此奴を変えてしまったのか…?
「今は要らない」
とてもじゃないけどホットミルクなんて飲む気になれない。それに手錠に繋がれてたら飲めないし。
「俺が作ったから飲まないんですか?」
「いやそうじゃなくて…ただ飲む気になれないだけ」
「…飲んでください」
「てかこの格好じゃ飲めねぇじゃん」
「大丈夫ですよ。飲ませてあげます」
そう言うと来夢がコップに口を付ける。え…?お前が飲むの?するといきなり俺は口付けられる。そして口内にはホットミルクの甘さが広がる。口移しで飲ませやがった此奴。
何度も何度も繰り返し口移しで飲まされる。其の度に俺は顔が熱くなる。何でだよ。こんな風に監禁じみた事されても何で此奴にキスされるだけで熱くなんだよ。俺馬鹿が付く程此奴の事が好きなんだ。
「飲み終わりましたね」
「…いつ外してくれんの」
「…外すつもりはないですよ。でも学校が始まったら仕方がないんで外しますけど」
其れ迄の辛抱か。でもまだまだ日がある。耐えられんのか俺。
「手錠した侭で飯とかは如何すんの」
「食べさせます」
「歯磨きは」
「俺がやってあげます」
「トイレは」
「其の時は外しますけどトイレの外で俺が待ってますね」
「風呂は」
「一緒に入って洗って差し上げます。手錠は外しませんよ」
「寝る時は」
「其の時は外しますけど俺がしっかり抱き締めます」
此奴どこまでも徹底して手錠を外さないつもりだ。手錠が外れるのはトイレと寝る時だけ。逃げ出すならそのうちか。
「あ、逃げ出そうなんて考えないでくださいね?其の方が身の為です」
まるで心の内を読まれたようでぎくりとする。俺が逃げ出したら如何なるんだろうか。若しそれでまた捕まってしまえば今度は本当にずっと監禁されてしまうかもしれない。学校があろうとなんだろうと手錠なんて外される事はないかもしれない。下手に動けねぇじゃん。
俺がこうやって監禁っぽい事をされてても来夢は特別何かをするわけでもなかった。ベッドに腰掛けてただ他愛もない話をするだけだ。何もない事が逆に怖い。
するといきなり俺のスマホが鳴った。此の音は誰かからの着信音。出なきゃ。でも出れない。
「……此れって女の子ですか?まさか浮気?」
来夢が俺のスマホを見つめる。浮気なんて俺はする筈ない。
「誰から?」
「……木村って人です」
きっと俺の隣りの家に住んでる幼馴染の女子だ。昔から仲が良い。其の幼馴染は一体どういう用件で掛けてきたのだろうか。
「貸して」
「駄目です」
「何で」
「先輩の耳は俺の声を聞く為にあるんです。他の人の汚い声を聞く為のものじゃないんです。だから俺が代わりに出ますよ」
「何言ってんのお前。良いから貸せって」
此奴何言ってんだよ。意味が分からない。
「……先輩の耳が穢れるから駄目です。若し穢れたら其の耳は不要って事になっちゃいますよね。そしたら其の耳を削ぎ落とす必要が出てきちゃうんですよ」
何処からかカッター取り出して俺の耳に当てがう。俺は硬直する。此奴きっと本気だ。本気で言ってる。
「それでも出ますか?」
ひやりとしたカッターの冷たさが耳に伝わる。此の目は冗談で言ってる目じゃない。来夢…如何したんだよ…
「あ、電話切れちゃいましたね。もう電源切っておきますね」
「緊急な連絡が入ったら分かんねぇじゃん」
「俺たちの二人の時間を邪魔するのはどんな理由であれ許せません」
来夢ってこんな奴だったか?
「でも…」
「じゃあ俺が連絡を取るって事で良いなら電源は切りませんよ」
「其れで良い」
「じゃあ切りません」
これから俺は如何なるんだろうか。様々な不安が頭を過る。
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