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第一章 堕ちる理由
エピローグ:忘れられない夜
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目を閉じれば、あの夜の光景がまざまざと蘇る。
鏡に映った自分の姿。
繋がれた首輪。
そして、逃げ場のないまま奥深くに注ぎ込まれていった熱――***。
(だめ……忘れたいのに……)
思い出すたびに胸が焼けつく。
拒んでいたはずの調教。
けれどその痛みも羞恥も、今では抗えない快感に結びついてしまっていた。
無理やり言葉を吐かされ、何度も絶頂に追い込まれたあの瞬間。
そのすべてが、体に刻みつけられたように消えない。
気づけば――手は布団の中で震え、下腹部を押さえている。
「……いや、こんな……だめ……」
声に出しても止められない。
彼に突き上げられた感覚、注ぎ込まれる熱を思い出しながら、自らを慰めてしまう――***。
指先を動かすたび、湿った音が部屋の静寂に広がる。
「……あっ……はぁ……っ……」
漏れる吐息は熱を帯び、喉の奥から震えとなって響く。
(いや……でも……止まらない……っ)
耳の奥で、幻のように彼の声が蘇る。
『ほら、奥で飲み込め』
『婚約者よりも、俺のものを求めろ』
「んっ……や……いやぁ……っ……」
唇を噛んでも声は堪えきれず、震える指がさらに奥を探るたびに痙攣が走る――***。
布団に擦れる腰が小刻みに揺れ、湿った音はますます鮮やかに広がっていく。
「……あぁぁ……も、もう……だめ……っ!」
背中が弓なりに反り返り、声を押し殺しながら絶頂が押し寄せた――***。
「――――あぁぁぁぁっ……っ!」
全身を震わせ、胸を上下させながら、美咲は息を切らした。
けれど、その瞬間訪れたのは甘美な充足ではなく、冷たい虚しさだった。
(ちがう……だめ……これじゃない……)
確かに絶頂した。
それなのに心は空っぽで、むしろ彼を求める渇きが強くなる。
自分の手では埋められない。
婚約者でもない。
――彼だけなのだ。
「……私……おかしい……」
涙がこぼれ、濡れた指を胸の上で握りしめる。
(翔太じゃ駄目……自分でも駄目……もう私は……彼なしじゃ……)
罪悪感と欲望がせめぎ合い、夜ごと涙を流す。
それでも欲望に飲まれる。
忘れたいのに、忘れられない。
抑えたいのに、抑えられない。
――それでも、彼からの連絡は途絶えたままだった。
あの夜以来、電話もメールもない。
まるで最初から存在しなかったかのように。
何日経っても、彼は現れない。
部屋で一人、スマートフォンを握りしめながら、美咲は画面が光るたびに心臓が跳ねた。
だが、それは彼からではなく、仕事や婚約者からの連絡ばかり。
(どうして……もう、用済みなの……?)
捨てられたのか。
それとも、また突然現れてすべてを奪うのか。
答えはなく、不安と欲望が絡み合い、眠れぬ夜だけが続いた。
――そんな中、婚約者である翔太とひと月ぶりの再会の日が訪れた。
待ち合わせ場所に立つ翔太の姿を見た瞬間、美咲の胸は痛んだ。
変わらぬ笑顔。
久しぶりに会えた喜びを隠しきれない様子。
「やっと会えたな、美咲」
その声に罪悪感が溢れそうになり、喉が詰まる。
翔太の隣を歩きながら、表情だけは笑顔を作る。
だが心は落ち着かない。
隠しきれない違和感が胸の奥で渦を巻いていた。
その夜、久しぶりに翔太の部屋に泊まった。
当然、翔太は彼女を求めてきた。
優しく、丁寧に、愛情を込めて触れる。
――けれど、美咲の心も体も、まったく応えなかった。
(どうして……翔太なのに……何も感じない……)
唇が触れても、胸を撫でられても、何も満たされない。
奥に入り込まれても、心は空っぽのまま。
「ごめん……」と震えながら、必死に演じようとするが、虚しさは隠せなかった。
(違う……違うの……私の体は……あの人のものを覚えてしまった……)
翔太の動きに合わせて揺れるたび、脳裏に浮かぶのは――彼。
あの夜、背中を反らせ絶頂に打ち砕かれた自分の姿。
「俺のものだ」と冷酷に言い放った声。
注ぎ込まれ、溢れ出す感覚――***。
そのすべてが、翔太の優しさよりも鮮烈に刻まれていた。
(どうしよう……私はもう……翔太じゃ満足できない……)
行為が終わっても、美咲はただ虚空を見つめていた。
横で安堵したように眠る翔太の寝顔を眺めながら、胸が潰れる。
(裏切っている……でも……でももう戻れない……)
彼の調教が刻みつけた痕跡は、翔太の愛情では埋められない。
むしろ、愛されれば愛されるほど、自分の堕落を思い知らされる。
――その夜、美咲は悟った。
自分はもう、翔太の婚約者ではいられない。
彼の“所有物”でしかないのだ、と。
そしてその気づきは、次なる物語の始まりを告げていた。
婚約者との関係が音を立てて崩れていく未来。
そして、彼との調教が再び始まる日を待ち焦がれてしまう裏切りの日常。
(お願い……せめて夢であってほしい……でも……私は、もう……)
美咲の瞳に溢れる涙は、抗えぬ欲望と罪の狭間で揺れていた。
鏡に映った自分の姿。
繋がれた首輪。
そして、逃げ場のないまま奥深くに注ぎ込まれていった熱――***。
(だめ……忘れたいのに……)
思い出すたびに胸が焼けつく。
拒んでいたはずの調教。
けれどその痛みも羞恥も、今では抗えない快感に結びついてしまっていた。
無理やり言葉を吐かされ、何度も絶頂に追い込まれたあの瞬間。
そのすべてが、体に刻みつけられたように消えない。
気づけば――手は布団の中で震え、下腹部を押さえている。
「……いや、こんな……だめ……」
声に出しても止められない。
彼に突き上げられた感覚、注ぎ込まれる熱を思い出しながら、自らを慰めてしまう――***。
指先を動かすたび、湿った音が部屋の静寂に広がる。
「……あっ……はぁ……っ……」
漏れる吐息は熱を帯び、喉の奥から震えとなって響く。
(いや……でも……止まらない……っ)
耳の奥で、幻のように彼の声が蘇る。
『ほら、奥で飲み込め』
『婚約者よりも、俺のものを求めろ』
「んっ……や……いやぁ……っ……」
唇を噛んでも声は堪えきれず、震える指がさらに奥を探るたびに痙攣が走る――***。
布団に擦れる腰が小刻みに揺れ、湿った音はますます鮮やかに広がっていく。
「……あぁぁ……も、もう……だめ……っ!」
背中が弓なりに反り返り、声を押し殺しながら絶頂が押し寄せた――***。
「――――あぁぁぁぁっ……っ!」
全身を震わせ、胸を上下させながら、美咲は息を切らした。
けれど、その瞬間訪れたのは甘美な充足ではなく、冷たい虚しさだった。
(ちがう……だめ……これじゃない……)
確かに絶頂した。
それなのに心は空っぽで、むしろ彼を求める渇きが強くなる。
自分の手では埋められない。
婚約者でもない。
――彼だけなのだ。
「……私……おかしい……」
涙がこぼれ、濡れた指を胸の上で握りしめる。
(翔太じゃ駄目……自分でも駄目……もう私は……彼なしじゃ……)
罪悪感と欲望がせめぎ合い、夜ごと涙を流す。
それでも欲望に飲まれる。
忘れたいのに、忘れられない。
抑えたいのに、抑えられない。
――それでも、彼からの連絡は途絶えたままだった。
あの夜以来、電話もメールもない。
まるで最初から存在しなかったかのように。
何日経っても、彼は現れない。
部屋で一人、スマートフォンを握りしめながら、美咲は画面が光るたびに心臓が跳ねた。
だが、それは彼からではなく、仕事や婚約者からの連絡ばかり。
(どうして……もう、用済みなの……?)
捨てられたのか。
それとも、また突然現れてすべてを奪うのか。
答えはなく、不安と欲望が絡み合い、眠れぬ夜だけが続いた。
――そんな中、婚約者である翔太とひと月ぶりの再会の日が訪れた。
待ち合わせ場所に立つ翔太の姿を見た瞬間、美咲の胸は痛んだ。
変わらぬ笑顔。
久しぶりに会えた喜びを隠しきれない様子。
「やっと会えたな、美咲」
その声に罪悪感が溢れそうになり、喉が詰まる。
翔太の隣を歩きながら、表情だけは笑顔を作る。
だが心は落ち着かない。
隠しきれない違和感が胸の奥で渦を巻いていた。
その夜、久しぶりに翔太の部屋に泊まった。
当然、翔太は彼女を求めてきた。
優しく、丁寧に、愛情を込めて触れる。
――けれど、美咲の心も体も、まったく応えなかった。
(どうして……翔太なのに……何も感じない……)
唇が触れても、胸を撫でられても、何も満たされない。
奥に入り込まれても、心は空っぽのまま。
「ごめん……」と震えながら、必死に演じようとするが、虚しさは隠せなかった。
(違う……違うの……私の体は……あの人のものを覚えてしまった……)
翔太の動きに合わせて揺れるたび、脳裏に浮かぶのは――彼。
あの夜、背中を反らせ絶頂に打ち砕かれた自分の姿。
「俺のものだ」と冷酷に言い放った声。
注ぎ込まれ、溢れ出す感覚――***。
そのすべてが、翔太の優しさよりも鮮烈に刻まれていた。
(どうしよう……私はもう……翔太じゃ満足できない……)
行為が終わっても、美咲はただ虚空を見つめていた。
横で安堵したように眠る翔太の寝顔を眺めながら、胸が潰れる。
(裏切っている……でも……でももう戻れない……)
彼の調教が刻みつけた痕跡は、翔太の愛情では埋められない。
むしろ、愛されれば愛されるほど、自分の堕落を思い知らされる。
――その夜、美咲は悟った。
自分はもう、翔太の婚約者ではいられない。
彼の“所有物”でしかないのだ、と。
そしてその気づきは、次なる物語の始まりを告げていた。
婚約者との関係が音を立てて崩れていく未来。
そして、彼との調教が再び始まる日を待ち焦がれてしまう裏切りの日常。
(お願い……せめて夢であってほしい……でも……私は、もう……)
美咲の瞳に溢れる涙は、抗えぬ欲望と罪の狭間で揺れていた。
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