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第一部:本編
62:答え
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「えっ……」
ヘルトさんが応えてくれる……? 僕の気持ちに……?
信じられない……信じきれない……どれだけ優しくても……弟子に向ける感情以外は持っていないと思っていたから。
「あー……最初見つけた時、俺にとってお前は村で遊んでやった時の子供って認識だった」
考えた言葉を、さらに選ぶようにヘルトさんが呟く。
「以前言ったようにあの時から目をかけていたのは本当だ。キラキラした笑顔で俺を見つめてた子供がくらい表情そして使い潰されそうになっているのが我慢ならなかったのも」
その言葉は、ここに来て二日目の時に言われた言葉と同じもの。それは、ヘルトさんにとって変わらない事実らしい。
「だから、どれだけ成長していてもお前は子供だと思っていた」
それがヘルトさんが僕に対する態度の根幹なのだろう。どおりで僕をよく撫でるわけだ。
「でもな……初日に風呂上がりのお前を見て、ヤバいと思った。どんな教育を、調教を受けたかはその奴隷紋でわかる。だからだろうな……あの時のお前を色っぽいと魅力的だと思っちまった」
懺悔するように、悔やむように言葉を溢したヘルトさん。あの時は不快なものを見せたと思っていたけど……そんな事を考えていたんだ……。
「でもよ。俺にとってお前が子供のままだったのも事実だ。奴隷になって心が傷ついてるお前をそんな目で見るなんて、お前を性処理の道具としか見てないヤツらと変わりねぇじゃねぇか」
僕を抱き締めるヘルトさんの腕に力が入る。
「だから、その気持ちを押し込めて、弟子として可愛がる事で発散させようとした。守ることで誤魔化そうとした。でも、それでお前をここまで依存させるなんて……」
「違う! 依存なんかじゃない! 僕はっ、本当に……ヘルトさんが好きなんです……!」
この思いを依存と呼ばれるのが嫌で顔を上げて、ヘルトさんを見つめる。
「それは、わかっているつもりだ。でも、捨てられるのが怖いと嫌いにならないで欲しいと怯えるのは、恋と言うには重い。俺の行動は、お前の心を守るどころか、新たな重りを与えちまった」
「それでもいい……ヘルトさんがヘルトさんだったから! 僕は、今の僕になれたのに……! そんなこと言わないで……っ!」
買ったのがヘルトさんじゃなかったら、この想いを抱く事もなかった。
こうやって感情をあらわにする事さえなかった。
「全部全部ヘルトさんのおかげなのに……今までの行動をあなたが否定したら僕が苦しい……!」
「……そうだな。悪い」
ヘルトさんの手が僕の頬に回り、涙を拭う。
「お前の事は、大事で……これからも守ってやりたい。でも、お前の感情が依存心を含めたものじゃないかって疑う俺もいる。行き場のない子供の心を俺だけしか見えなくさせるなんて最悪な男でしかないだろう」
「そんな事ない……!ヘルトさんだから! ヘルトさんだからいいの! 僕の好きなヘルトさんをヘルトさんが否定しないでよ!」
ヘルトさんが自分の事ばかり否定するから、涙が止まらない。
なんで、僕の好きなヘルトさんをヘルトさんが否定するの!
「……こんなズルい男なのに、そんなに好きか?」
「好き! ヘルトさんじゃなきゃやだ!」
「……そうか」
僕を見つめるヘルトさんが諦めたように柔らかく穏やかに笑う。
「じゃあ、そこまで好きにさせた責任をちゃんととらねぇとな。まだ、俺自身の気持ちに整理はついていないけど……お前の事は、好ましく思っている。俺に笑いかける姿も、努力しようと頑張る姿も……どんなお前の姿も好きだ」
僕をまっすぐ見つめる真剣な眼差しに嘘は見えない。
「本当に……? 僕で……いいの?」
「お前だからいいんだ。お前も俺がいいんだろ?」
「っ……! うん、うん……ヘルトさんじゃなきゃやだっ!」
受け入れてもらえた嬉しさで、また涙が溢れて、ヘルトさんへと抱きつく。
「なんだ。嬉しくても泣くのか? 仕方ねぇなぁエルツは。いいぜ、いくらでも肩貸してやるから……満足したら、いつもの笑顔見せてくれよ」
ヘルトさんが僕の頭を優しく撫でる。
それが嬉しくて、その背中にぎゅっと腕を回した。
ヘルトさんが応えてくれる……? 僕の気持ちに……?
信じられない……信じきれない……どれだけ優しくても……弟子に向ける感情以外は持っていないと思っていたから。
「あー……最初見つけた時、俺にとってお前は村で遊んでやった時の子供って認識だった」
考えた言葉を、さらに選ぶようにヘルトさんが呟く。
「以前言ったようにあの時から目をかけていたのは本当だ。キラキラした笑顔で俺を見つめてた子供がくらい表情そして使い潰されそうになっているのが我慢ならなかったのも」
その言葉は、ここに来て二日目の時に言われた言葉と同じもの。それは、ヘルトさんにとって変わらない事実らしい。
「だから、どれだけ成長していてもお前は子供だと思っていた」
それがヘルトさんが僕に対する態度の根幹なのだろう。どおりで僕をよく撫でるわけだ。
「でもな……初日に風呂上がりのお前を見て、ヤバいと思った。どんな教育を、調教を受けたかはその奴隷紋でわかる。だからだろうな……あの時のお前を色っぽいと魅力的だと思っちまった」
懺悔するように、悔やむように言葉を溢したヘルトさん。あの時は不快なものを見せたと思っていたけど……そんな事を考えていたんだ……。
「でもよ。俺にとってお前が子供のままだったのも事実だ。奴隷になって心が傷ついてるお前をそんな目で見るなんて、お前を性処理の道具としか見てないヤツらと変わりねぇじゃねぇか」
僕を抱き締めるヘルトさんの腕に力が入る。
「だから、その気持ちを押し込めて、弟子として可愛がる事で発散させようとした。守ることで誤魔化そうとした。でも、それでお前をここまで依存させるなんて……」
「違う! 依存なんかじゃない! 僕はっ、本当に……ヘルトさんが好きなんです……!」
この思いを依存と呼ばれるのが嫌で顔を上げて、ヘルトさんを見つめる。
「それは、わかっているつもりだ。でも、捨てられるのが怖いと嫌いにならないで欲しいと怯えるのは、恋と言うには重い。俺の行動は、お前の心を守るどころか、新たな重りを与えちまった」
「それでもいい……ヘルトさんがヘルトさんだったから! 僕は、今の僕になれたのに……! そんなこと言わないで……っ!」
買ったのがヘルトさんじゃなかったら、この想いを抱く事もなかった。
こうやって感情をあらわにする事さえなかった。
「全部全部ヘルトさんのおかげなのに……今までの行動をあなたが否定したら僕が苦しい……!」
「……そうだな。悪い」
ヘルトさんの手が僕の頬に回り、涙を拭う。
「お前の事は、大事で……これからも守ってやりたい。でも、お前の感情が依存心を含めたものじゃないかって疑う俺もいる。行き場のない子供の心を俺だけしか見えなくさせるなんて最悪な男でしかないだろう」
「そんな事ない……!ヘルトさんだから! ヘルトさんだからいいの! 僕の好きなヘルトさんをヘルトさんが否定しないでよ!」
ヘルトさんが自分の事ばかり否定するから、涙が止まらない。
なんで、僕の好きなヘルトさんをヘルトさんが否定するの!
「……こんなズルい男なのに、そんなに好きか?」
「好き! ヘルトさんじゃなきゃやだ!」
「……そうか」
僕を見つめるヘルトさんが諦めたように柔らかく穏やかに笑う。
「じゃあ、そこまで好きにさせた責任をちゃんととらねぇとな。まだ、俺自身の気持ちに整理はついていないけど……お前の事は、好ましく思っている。俺に笑いかける姿も、努力しようと頑張る姿も……どんなお前の姿も好きだ」
僕をまっすぐ見つめる真剣な眼差しに嘘は見えない。
「本当に……? 僕で……いいの?」
「お前だからいいんだ。お前も俺がいいんだろ?」
「っ……! うん、うん……ヘルトさんじゃなきゃやだっ!」
受け入れてもらえた嬉しさで、また涙が溢れて、ヘルトさんへと抱きつく。
「なんだ。嬉しくても泣くのか? 仕方ねぇなぁエルツは。いいぜ、いくらでも肩貸してやるから……満足したら、いつもの笑顔見せてくれよ」
ヘルトさんが僕の頭を優しく撫でる。
それが嬉しくて、その背中にぎゅっと腕を回した。
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