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さらなるピンチ?!

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(巫女様が!)(巫女殿が!)(巫女が)(巫女!)(みこが!)(みこ)(みこ……!)
(狭間に落ちてしまわれた――――?!)

 美月が飛び込んだ瞬間、その場にいたモノ達全てに衝撃が走る。
 次の瞬間、――――美月の姿はかき消されるように、その場から消え失せた。

 そして、つい先程まで楽し気に美月を追いかけまわしていたモノ達全てが、今や蒼白になり尋常ではなく取り乱す事態となる。

(不味い!)(不味いぞ?!)
(早うお助けせねば……!!)
(しかし、あの狭間の闇は濃い。我々では、とても入っては行けぬ)
(そうだそうだ!……巫女様の御為とあらば、入っていくこともやぶさかではないが――)
(笑止!おぬしなど、すぐに闇に飲み込まれ、巫女を助けるどころではないわ!)
(あそこでは、神気をまとったモノしか、正気を保てまい……)

 先程までこの世の春を謳歌するが如く、浮かれはしゃぎ駆けまわっていた異形の群れ――あやかしどもは、打って変わってまるで通夜のような雰囲気になる。

 彼らは、あやかし。
 元々人の世の理に縛られることはない。

 あやかしどもの行動原理は、極めてシンプル。
 彼らは、自らの感じたまま、好き勝手自由気ままに動く。

 さて、同じ種族である人同士でさえ、互いの心を分かり合えず、すれ違うことも多々ある。
 であるならば、このように種族、価値観、環境全てが異なるあやかしどもが、本気で嫌がる美月を理解できなくとも仕方のないことなのか――――?

 果たして、彼らは自らその手その足で美月を追い詰めたことには露気づかず、深刻な調子で巫女救出作戦を練りだした。

(我ら第一班!身命を賭して、巫女殿をお助け致す!!)
(おお~~!よろしく頼むぞ!)
(我ら第二班!救援要請を管理者――五月雨一族へと申し出よう!!)
(しかと、頼む!)
(我ら第三~五班は、少しでも使えそうなモノを探し連れて参ろう)
(しっかりな!)
(我ら第六~十班は、入れ替わり要員だ!第一班、決して無理はするな?飲み込まれる前に、こちらへ戻れ。後は我らが引き継ぐ!)
(なんの、巫女殿を助け出すまでは……!)
(その意気込みやよし!だが、其方が飲まれれば闇は拡大し、中にいる巫女殿にさらなる牙を剥こうぞ)
(くっ……ならば、一時撤退もやむを得ぬか。あい、分かった)
(我ら第十一班は、救助要員としてこの場に残ろうぞ)
(皆の者、抜かるなよ?!)
(おお~~~!!!)

 彼らは各自の使命に熱く燃え、各地へと散開していった……。




 さて、一時の休息を求め、若しくは地獄のようなエンドレスの鬼ごっこから逃れるために、本能のままあやかしどものいない場所へと飛び込んだ美月であったが、飛び込んだ瞬間に冷水を被ったが如く正気に戻った。

 え?!ウソ!なに、この場所は? 
 ウソ、ウソ!やだやだ!何か、やだ!

 美月は全身に走った鳥肌を、両手で懸命にさすってなだめようとする。

 確かに、……此処にあやかしどもはいない。
 鬼ごっこからは解放されたが、美月は決して喜べなかった。

 空気が重い……苦しい気がする。
 冷たい、寒い……悲しい、寒い……何なの?ここは――――?

 
 
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