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共鳴
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不安になった美月は、周りの様子を窺った。
すると、てっきりまた強制的に鬼ごっこをさせられていた前と同じような深山の中、と思っていたのだが、それとは全く異なる状況下であることに気付く。
辺りに人気はまるでなく、一見すれば深山の中であることは確か。
しかし、周りの樹々はみんな枯れて果てていた――――
残っているのは、朽ちた枝や横倒しになった幹、そしてうねり曲がった根や株――地面はむき出しで、草花は一本も生えていない。
この森は、死んでいる――――?
生命の気配がまるでしない……。
美月はそっと両手で自分の身体を抱きしめた。
物音一つしない、重苦しく寂しいこの場所にいると、今ここにいるのは自分独り、たった独りなのだ、ということを強く意識させられる。
何て静かで寂しいところなの……?
ここには、何もない――――
美月は急に痛いほどの孤独感に苛まれる。
この、……この感覚は、覚えがある――――?
悲しくて、苦しくて、……置いて行かれた寂しさに、どうしようもなく心を引き裂かれた、あの頃――――
いつしか美月の心は、悪夢のようだった三年と少し前の、両親と祖父を一度に亡くした事故当時へと引き戻されていった。
「美月?お父さんとおじいちゃんと一緒に、ちょっとお買い物へ出かけてくるわね?」
始まりは、お母さんの明るい声――いつもの、本当に何気ない日常の中の一コマ。
けれども、その先を知る意識体の美月は、必死で首を振る。
いやだ!いやだよ、お母さん、お父さん、おじいちゃん、行っちゃダメ!行かないで――――!!
なのに、記憶の中の少し今よりも幼い美月は、笑って手を振ってみんなを見送るのだ。
悪い事なんて、何一つ自分の身に降りかかってくることはない――そう無邪気に信じ込んでいた当時の自分。
普通の、……両親がいて、祖父母やクロがいて、みんな笑って健康で――――そんなささやかな日常が、どれほど大切で幸せなことだなんて、失われてみなければ分からなかった。
トラックの暴走により、呆気なく失われた、美月や祖母にとってかけがえのない三つの命。
そして、そのことに半ば呆然とする美月や祖母に付けこみ、偽りの書面でもって根こそぎ両親の財産を横取りし、失踪した父の会社の上司――――不幸はそれから連鎖的に加速した。
お母さん、どこ?お父さん、どこにいるの?
……どうして、わたしもあの時、一緒にあの車に乗って行かなかったんだろう――――?
わたしを置いて行かないで…………!
悲しくて、寂しくて、大きな喪失感とそれに追い打ちをかけるような他人の悪意に打ちのめされ、まるで当時に戻ったように嘆く美月の元に、小さな小さな声が届く。
(…………そう。……おねえちゃんも、……ぼくといっしょ?)
深い深い、闇のようなその声――けれども、どこか幼くつたない。
(……さびしいね?おかあさん、いなくなっちゃったの?……ぼくといっしょ。おとうさんも?……ぼくも)
その声が精一杯の共感を持って、美月に語りかけてくる。
(そして、……だれも、だぁれも、ここからいなくなっちゃった……さびしい……かなしい)
胸を締め付けられるようなその声に、美月は思わず問い返す。
「あなたも…………?」
美月が応えたその瞬間、辺りの闇はさらにとろり、と暗さを増す。
(うん、そう。……それから、ぼく、さびしくて、とってもさむいんだ。だから、……ねえ、おねえちゃん、こっちにきて?)
同じ痛みを抱えたどこか幼いその声に、美月が抗えるはずもない。
美月は声をたよりにふらふらと闇の中を歩き始めた――――
すると、てっきりまた強制的に鬼ごっこをさせられていた前と同じような深山の中、と思っていたのだが、それとは全く異なる状況下であることに気付く。
辺りに人気はまるでなく、一見すれば深山の中であることは確か。
しかし、周りの樹々はみんな枯れて果てていた――――
残っているのは、朽ちた枝や横倒しになった幹、そしてうねり曲がった根や株――地面はむき出しで、草花は一本も生えていない。
この森は、死んでいる――――?
生命の気配がまるでしない……。
美月はそっと両手で自分の身体を抱きしめた。
物音一つしない、重苦しく寂しいこの場所にいると、今ここにいるのは自分独り、たった独りなのだ、ということを強く意識させられる。
何て静かで寂しいところなの……?
ここには、何もない――――
美月は急に痛いほどの孤独感に苛まれる。
この、……この感覚は、覚えがある――――?
悲しくて、苦しくて、……置いて行かれた寂しさに、どうしようもなく心を引き裂かれた、あの頃――――
いつしか美月の心は、悪夢のようだった三年と少し前の、両親と祖父を一度に亡くした事故当時へと引き戻されていった。
「美月?お父さんとおじいちゃんと一緒に、ちょっとお買い物へ出かけてくるわね?」
始まりは、お母さんの明るい声――いつもの、本当に何気ない日常の中の一コマ。
けれども、その先を知る意識体の美月は、必死で首を振る。
いやだ!いやだよ、お母さん、お父さん、おじいちゃん、行っちゃダメ!行かないで――――!!
なのに、記憶の中の少し今よりも幼い美月は、笑って手を振ってみんなを見送るのだ。
悪い事なんて、何一つ自分の身に降りかかってくることはない――そう無邪気に信じ込んでいた当時の自分。
普通の、……両親がいて、祖父母やクロがいて、みんな笑って健康で――――そんなささやかな日常が、どれほど大切で幸せなことだなんて、失われてみなければ分からなかった。
トラックの暴走により、呆気なく失われた、美月や祖母にとってかけがえのない三つの命。
そして、そのことに半ば呆然とする美月や祖母に付けこみ、偽りの書面でもって根こそぎ両親の財産を横取りし、失踪した父の会社の上司――――不幸はそれから連鎖的に加速した。
お母さん、どこ?お父さん、どこにいるの?
……どうして、わたしもあの時、一緒にあの車に乗って行かなかったんだろう――――?
わたしを置いて行かないで…………!
悲しくて、寂しくて、大きな喪失感とそれに追い打ちをかけるような他人の悪意に打ちのめされ、まるで当時に戻ったように嘆く美月の元に、小さな小さな声が届く。
(…………そう。……おねえちゃんも、……ぼくといっしょ?)
深い深い、闇のようなその声――けれども、どこか幼くつたない。
(……さびしいね?おかあさん、いなくなっちゃったの?……ぼくといっしょ。おとうさんも?……ぼくも)
その声が精一杯の共感を持って、美月に語りかけてくる。
(そして、……だれも、だぁれも、ここからいなくなっちゃった……さびしい……かなしい)
胸を締め付けられるようなその声に、美月は思わず問い返す。
「あなたも…………?」
美月が応えたその瞬間、辺りの闇はさらにとろり、と暗さを増す。
(うん、そう。……それから、ぼく、さびしくて、とってもさむいんだ。だから、……ねえ、おねえちゃん、こっちにきて?)
同じ痛みを抱えたどこか幼いその声に、美月が抗えるはずもない。
美月は声をたよりにふらふらと闇の中を歩き始めた――――
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