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39.繁華街から裏路地へ
しおりを挟む無事にエレベーターから出た二人が外に出ると、夕方になっていた。
繁華街の人混みの中を恋人繋ぎをしながら歩きながら、二人はさっきエレベーターでした事を思い出して笑みを溢していた。
「外したプラグだけどちゃんと消毒して明日返すから」
「分かった。やっぱり結構時間かかりそうだな」
「セックス以外にもしたい事は山ほどあるし、急がずにゆっくり広げてこうな」
「あぁ。そうだな」
頬を赤く染めながらはにかむ旭を見つめながら、敦は手を強く握る。
「で、連れて行きたい場所なんだけどさ、旭は高い所は平気?」
「平気だけど」
「良かった。夕日が綺麗に見えるビルがあるんだけどそこに行こうと思ってさ」
「えっ!ビルって入って平気なのか?」
「幼馴染がアトリエに借りてるビルだから大丈夫。そこからの景色が凄く綺麗でさ」
「へぇ。その友達何してる人なんだ」
「ウエディングドレスのデザイナーだよ。AKIRA・HIGASIOってブランド聞いた事あるだろ?」
「あぁ、あのブランドか。凄い人じゃないか」
AKIRA・HIGASIOとはデザイナー東尾明が立ち上げたブランドで、計算されたシルエットとこだわりの素材で作り上げたタキシードと、レースをふんだんに使ったドレスが人気のブランドだ。
最近では、ドレスに使われているレースを使ったアクセサリーや小物も製作していて、それもヒットしている。
「世間的にはそうなんだろうけど俺か新さんが付いてないとすぐに部屋、ゴミ屋敷にする生活力のないやつだよ。あぁ。新さんっていうのは明の仕事のパートナーな」
「へぇ、お前の面倒見の良さはそこからきてたのか」
「面倒見いいか?」
「新入社員の研修の時とか丁寧に分かりやすく説明して出来るまで付き合ってただろ」
「えっ!旭そんなところまで見ててくれたのか。俺嬉しい」
敦は声を弾ませながら、旭の顔を覗き込む。
唇が触れそうな距離まで顔を近づけられて、胸が高鳴ってしまう。
しかし、こんなに人がいる繁華街でキスは恥ずかしすぎて出来ないと旭は急いで顔を逸らした。
「たまたま見てただけだ!たまたまな!」
「はいはい。また素直じゃなくなっちゃったな。あ、次の狭い路地曲がった所にあるから」
「分かった」
繁華街から裏路地に進むと、狭い道の途中に目立つお洒落な灰色のコンクリートのビルがあった。
敦はスラックスのポケットからキーケースを取り出して開けると、ビルの鍵を出し鍵穴に差し込んだ。
「今は二人とも海外に行ってるけど、帰ってきたら旭にも合わせたいな」
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