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44.愛妻弁当なんて恥ずかしすぎる。
しおりを挟む「今日は旭の大好きな鶏の照り焼きと、アスパラベーコン作ってきたけど食べるか?」
敦は弁当袋から弁当箱を取り出すと、蓋を開ける。
食欲がそそる甘辛い香ばしい香りが漂ってくると、口の中に唾液が溢れてくる。
「いいのか?じゃあ一つずつ貰うな」
旭が鶏の照り焼きに箸を伸ばそうとすると、敦が不機嫌が顔をしながら旭を見る。
旭はそれに気がつくと、慌てて箸を止めた。
「そこは俺から旭にあーんするところだろ」
「あーんってそんな恥ずかしい事、職場で出来るか」
「鍵閉めたしいいだろ。ほら、旭。あーん」
敦はニヤニヤと笑いながら、照り焼きを挟んだ箸を口の前に持ってくる。
丁寧に一口サイズに切られている鶏肉は脂が滴っていて、見た目だけでも美味しそうだ。
食欲に勝てなかった旭はそのまま照り焼きを一口で食べると、幸せそうな笑みを浮かべながら噛んで飲み込んだ。
「美味いか?」
「美味いよ。美味すぎるよ」
「良かった。アスパラベーコンも食べるだろ。ほら、あーん」
口の前に料理が持ってこられて、旭は今度はちゅうちょする事なく口を開けた。
一口で食べると、ベーコンの肉汁とアスパラが口の中で混ざり合う。
旭はよく噛んで味わいながら、幸せそうな顔をした。
「そんな表情しながら食べて貰えると、弁当ごとあげたくなっちゃうな」
「いや、それだと敦の飯が無くなっちゃうだろ」
「俺はそれでも構わないけど」
弁当を差し出そうとする敦に、どうしようかと旭は戸惑った。
「それはダメだろ。そうだ。良かったら俺の弁当と交換しないか?」
旭がそう提案して自分の弁当を差し出すと、敦ははしゃぎながら喜んた。
「いいのか!?愛妻弁当がこんなに早く食べれるなんて、嬉しすぎる」
「あ、愛妻弁当なんて恥ずかしすぎるだろ」
旭は顔を真っ赤にしながら、顔を手で隠した。
さっきから恥ずかしいワードを連発する敦相手に、心臓が持ちそうにない。
「旭の愛情たっぷりのお弁当は、何が入ってるのかな」
旭が悶えている隙に弁当を交換した敦は、旭の弁当袋を開けて箱を取り出す。
蓋を開けると食欲がそそる醤油の香りが漂ってきた。
「うわぁ。俺の大好きな厚焼き玉子と唐揚げが入ってる」
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