4 / 6
リリィ・レオニア
旦那さんどこ!?
しおりを挟む
そして案の定、椿は転生した。物心つくころに、ふと思い出したのである。
「あらぁ。私乙女ゲームに転生しちゃったのね!やだ!とっても身体が軽いわ!ぎっくり腰なんて感じさせない若い身体!しなやかな手足!熱く高鳴る鼓動!しわのない顔!いいわね若いって。走り放題じゃない!やっほーい!」
小さくも、自由の利く身体があまりにも嬉しくて五時間家中を走りまわった。そして、同時に自分の名前にも聞き覚えがあった。
リリィ・レオニア。国の中でも大きな権力を持ち、王家とのパイプも太いレオニア公爵家の次女であり、孫が話してくれた乙女ゲームのライバル悪役令嬢である。確か孫は「悪役令嬢」と言って、いろいろと文句を言っていた。
舞台は、沈まぬ月を守護に持つ国家エルターナ。『星と月』がモチーフになっているためグラフィックがとても美しい。
なんとこの国は東から西へと月が移動しない。真北の空で永遠に輝いているのだ。日が出ている間は目立たない。しかし夜になると淡く神々しい光がエルターナに降り注がれる。その設定には椿も大変驚いたものだ。物理化学の先生たちが聞いたらひっくり返ってしまいそうである。
そしてそこでリリィは乙女ゲームの主人公に嫌がらせをするのだけれど……
「あーら不思議。今でもどんなゲームだったか、まったく思い出せないのよねぇ。どれだけ頭を捻っても、これくらいしか覚えていることがないわ。」
「リリィ様……。正気ですか?いじわるの所業はまだしも、その機会遊びの主人公の名前さえ思い出せないなんて!!ああああ。
いじわる役というのは、いつの時代も何らかの形で退場させられること間違い無しなんですよ……。いつか貴方様に危害が加わるかもしれないのに。そのための対策やらなんやら、考えなくていいんですか!?」
ベルナはジタバタとしながら、頭を抱えた。そりゃそうだ。焦らなければならないところで、肝心の主人がのほほんと優雅に茶を飲んでいるのだ。これは自分がしっかりしなければと、従者として固く心に誓う。
「だって私、それ聞いたときおばあちゃんよ。おばあちゃんの記憶力なんてそんなもんだわ。それにいいじゃない。私がこうなってしまっている限り、ゲームがゲーム通りに行くはずなんてないもの。ゲームの記憶なんて、多分使い物にならない。」
「そうですかね…。」
「当たり前じゃない。この世界の大枠の設定はゲームの通りかもしれない。でもそれは私の世界線でのお話よ。私が今飲んでる紅茶の味も、向き合う優しい侍女のベルナもすべて本物。作り物ではない実際の世界…そして私はここで生きている。
とすれば、シナリオだの結末だの選択だの、まったくもってくだらないわ。だってここの人たちは用意されたお人形ではない。ゲーム通りに行くようなお遊びではない。一分一秒はたまたコンマ何秒かで、未来なんて簡単にひっくり返るのよ。」
「それは、90年と17年を生きていたリリィ様の経験論?」
「そーよ。」
前世だってそうだった。わずかに記憶に残る戦争の時も、仕事の転機も、あの大地震のときも、出会いも、あの時その行動しなければ、すべてが変わっていただろうと今でも思う。
すでに、悪役令嬢だったはずのリリィ・レオニアの行く道が変わっているのだ。それだけでも与える影響は大きいに違いない。
それに正直、リリィにとってゲームの話なんてどうでも良い。転生したとわかった時から願いはたった一つだけ。
鷹人から転生した旦那さんを見つけて結婚すること。そのために会いたくもない男たちに、貴重な時間を割いて20回も会っているのだ。
「リリィ様の旦那さんはどこなんでしょうね。」
「ほんとよ!のんびりしすぎじゃない!?おかげで私20人も滅多切りにしちゃったわ。旦那さん、どこなのかしらー。」
立ち上がって窓を開けると視界一杯に領土が映る。レオニア公爵家の持つ広大な土地だ。空は青く、どこまでも広がっている。リリィは大きく息を吸い込むと力強く叫んだ。
「世界のどっかをほっつき歩いている旦那さーーーん!待っててねーーー!待ちくたびれちゃったから、リリィ・レオニアが会いに行っちゃうからねーーーー!」
今世も絶対旦那さんと結婚するわ!とリリィはにっこり笑った。
呆れたベルナが一つ思いついた。
「そういえばリリィ様。旦那さんが、例えば犬とか豚さんとか鶏とか馬とかだったらどうするんですか?」
「うん?犬とか豚さんとか鶏とか馬とかだったら旦那さんと結婚するけど?」
「はぁ、ですよね。……え?」
「え?」
「あらぁ。私乙女ゲームに転生しちゃったのね!やだ!とっても身体が軽いわ!ぎっくり腰なんて感じさせない若い身体!しなやかな手足!熱く高鳴る鼓動!しわのない顔!いいわね若いって。走り放題じゃない!やっほーい!」
小さくも、自由の利く身体があまりにも嬉しくて五時間家中を走りまわった。そして、同時に自分の名前にも聞き覚えがあった。
リリィ・レオニア。国の中でも大きな権力を持ち、王家とのパイプも太いレオニア公爵家の次女であり、孫が話してくれた乙女ゲームのライバル悪役令嬢である。確か孫は「悪役令嬢」と言って、いろいろと文句を言っていた。
舞台は、沈まぬ月を守護に持つ国家エルターナ。『星と月』がモチーフになっているためグラフィックがとても美しい。
なんとこの国は東から西へと月が移動しない。真北の空で永遠に輝いているのだ。日が出ている間は目立たない。しかし夜になると淡く神々しい光がエルターナに降り注がれる。その設定には椿も大変驚いたものだ。物理化学の先生たちが聞いたらひっくり返ってしまいそうである。
そしてそこでリリィは乙女ゲームの主人公に嫌がらせをするのだけれど……
「あーら不思議。今でもどんなゲームだったか、まったく思い出せないのよねぇ。どれだけ頭を捻っても、これくらいしか覚えていることがないわ。」
「リリィ様……。正気ですか?いじわるの所業はまだしも、その機会遊びの主人公の名前さえ思い出せないなんて!!ああああ。
いじわる役というのは、いつの時代も何らかの形で退場させられること間違い無しなんですよ……。いつか貴方様に危害が加わるかもしれないのに。そのための対策やらなんやら、考えなくていいんですか!?」
ベルナはジタバタとしながら、頭を抱えた。そりゃそうだ。焦らなければならないところで、肝心の主人がのほほんと優雅に茶を飲んでいるのだ。これは自分がしっかりしなければと、従者として固く心に誓う。
「だって私、それ聞いたときおばあちゃんよ。おばあちゃんの記憶力なんてそんなもんだわ。それにいいじゃない。私がこうなってしまっている限り、ゲームがゲーム通りに行くはずなんてないもの。ゲームの記憶なんて、多分使い物にならない。」
「そうですかね…。」
「当たり前じゃない。この世界の大枠の設定はゲームの通りかもしれない。でもそれは私の世界線でのお話よ。私が今飲んでる紅茶の味も、向き合う優しい侍女のベルナもすべて本物。作り物ではない実際の世界…そして私はここで生きている。
とすれば、シナリオだの結末だの選択だの、まったくもってくだらないわ。だってここの人たちは用意されたお人形ではない。ゲーム通りに行くようなお遊びではない。一分一秒はたまたコンマ何秒かで、未来なんて簡単にひっくり返るのよ。」
「それは、90年と17年を生きていたリリィ様の経験論?」
「そーよ。」
前世だってそうだった。わずかに記憶に残る戦争の時も、仕事の転機も、あの大地震のときも、出会いも、あの時その行動しなければ、すべてが変わっていただろうと今でも思う。
すでに、悪役令嬢だったはずのリリィ・レオニアの行く道が変わっているのだ。それだけでも与える影響は大きいに違いない。
それに正直、リリィにとってゲームの話なんてどうでも良い。転生したとわかった時から願いはたった一つだけ。
鷹人から転生した旦那さんを見つけて結婚すること。そのために会いたくもない男たちに、貴重な時間を割いて20回も会っているのだ。
「リリィ様の旦那さんはどこなんでしょうね。」
「ほんとよ!のんびりしすぎじゃない!?おかげで私20人も滅多切りにしちゃったわ。旦那さん、どこなのかしらー。」
立ち上がって窓を開けると視界一杯に領土が映る。レオニア公爵家の持つ広大な土地だ。空は青く、どこまでも広がっている。リリィは大きく息を吸い込むと力強く叫んだ。
「世界のどっかをほっつき歩いている旦那さーーーん!待っててねーーー!待ちくたびれちゃったから、リリィ・レオニアが会いに行っちゃうからねーーーー!」
今世も絶対旦那さんと結婚するわ!とリリィはにっこり笑った。
呆れたベルナが一つ思いついた。
「そういえばリリィ様。旦那さんが、例えば犬とか豚さんとか鶏とか馬とかだったらどうするんですか?」
「うん?犬とか豚さんとか鶏とか馬とかだったら旦那さんと結婚するけど?」
「はぁ、ですよね。……え?」
「え?」
0
あなたにおすすめの小説
婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています
月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。
しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。
破滅を回避するために決めたことはただ一つ――
嫌われないように生きること。
原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、
なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、
気づけば全員から溺愛される状況に……?
世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、
無自覚のまま運命と恋を変えていく、
溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる