悪役令嬢はたった一人を選ぶ〜今世も絶対旦那様と結婚したい!〜

春木菜々

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秘密の荒城

路地裏

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―――ことのはじまりは小さな秘密からだった。






 雨上がりの早朝、エルターナの街の脇には朝焼けの時間であるにもかかわらず人だかりができていた。
 走ってきた新米警察のクイルは息切れを起こしながらも、敬礼を忘れずに声を上げた。

「おはようございます!ハウント警部!」

「クイル君。遅かったではないか。最近物騒だからな。どんなときでも出動できるように備えて置け。そろそろ慣れなさい。そんな体たらくでは昇進できないぞ。」

 ハウントとクイルはエルターナ国警察組織の上司と部下。事件が起これば日夜その犯人を追っている警察組織の人間だ。

 エルターナの治安を守る者たちは、主に二分されている。一つは騎士だ。彼らは、貴族領主に仕えてその力を貸す軍力。貴族たちの力が暴走しないように、領地の広さ等を考慮して、前もって国にから数が定められている。
 対して警察組織は国家に仕えて、犯罪の調査等を行う機関である。王家に直接仕えることができるため、平民たちの出世コースとなっている。

「見たまえ。これまでに起きた二件の殺人と同じだ。被害者は女性、発生はやはり満月の真夜中、そして遺体の心臓は切り取られて、犯人が持ち去っている。」

「遺体は…げっ、案の定血塗れですね。…うわぁ、ぐちゃぐちゃ。滅茶苦茶にされてるし、すっごく残虐的だなぁ。ハウント警部、俺犯人が自分と同じ人間だとは思えないんですけど。」

 クイルはちらりと見て、すぐに顔をそらした。あまりにも悲惨だったからだ。
 薄暗い路地は被害者の流した血がそこらじゅうに飛び散っている。時間がたって乾いてしまったものの、狭い場所では血の臭いが否が応でも充満していた。まだ新米のクイルは死体を見慣れていない。思わず口元を覆ってしまう。

「こんなひどいことができるなんて…。」
 遺族の気持ちを思うと、いたたまれない。あんな風に殺されてしまうなんて、自分だったらとても耐えることができない気がする。
 この事件は新聞でも大々的に取り上げられていて、国はこの話題で持ち切りである。早く解決しなければ、また犠牲者も増えてしまうだろう。
 ハウントはふむ、と顎に手を当てた。

「しかし、手口がとても荒いな。殺害方法は三件とも絞殺、毒殺、そして斬殺とバラバラ。心臓の切り取り方はお世辞にも上手いとは言えない。犯人にとっては、時間と、性別と心臓の三点のみが重要なんだろうね。」
「拘るところと、雑さがはっきりしてますね。何が目的なんだろう。」

 心臓が一番気になるが、警察もまだこれといった手がかりがつかめていない。なんせ、被害者たちの接点が何も見つからないのだから。

「まぁいい。とにかく話を聞きに行こう。行くぞ、クイル君。」
「はい!」
二人は情報を得るべく、今日も歩き回る。
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