田舎生活 ~農業、海、山、そして異世界人!?~

蛍 伊織

文字の大きさ
38 / 43
幕間 (第一部 ⇒ 第二部)

今からはやり方を変えることにします。

しおりを挟む
「自分の母親に求愛なんて、どんな発情をしたらそうなるんだい。バカ息子ども。」

牛田たちは蛇に睨まれた蛙のように直立不動となる。額には大粒の汗をかいていた。

「「「か、母ちゃん。これには理由が。」」」

「「「問答無用!!」」」

パァンッと気持ちのいい音が玄関先で響き渡る。ミートリオに強烈なビンタをくらわせ、その耳を母親がつまんでいた。

「この馬鹿たちがご迷惑をおかけしました。」

「こちらこそ、何もお構いできず申し訳ありません。」

クラウスがお辞儀をするのを見て、牛田の母親たちは頬をポッと赤くする。

「・・・クラウスさん、でしたっけ?あんたいい男だね。息子どもとは大違い。この家に居候してるってさっき言ってたけど、時間があれば婦人会に遊びに来ておくれよ。歓迎するからさ。」

「ちっ、そっちこそ色ボケじゃないか。」

「何か言ったかい?」

「あいててて!!か、勘弁してくれよ、母ちゃん。」

どこかのガキ大将みたいな悲鳴を上げながら牛田達は母親に連れ戻されていった。

――――――
「くそ、思いっきり縛りやがって。あ~あ、縄の跡がこんなに。まったく・・・。それにしても、クラウスさんがあいつらとおばさんたちをうまく引き合わせてくれて助かりました。朝、メールしておいたけど母親が来たってわかると、あいつら逃げ出す可能性もありましたから。」

牛田たちが連れて帰られるのを見届けてから、クラウスさんは食堂に放置されていた俺を助けに来てくれていた。

「お役に立てて光栄です。・・・これからのことを考えるとお邪魔になる方たちはいないほうがよろしいかと思いまして。」

「は?それってどういう。」

「・・・。」

クラウスさんは意味ありげに黙ったまま何も答えなかった。





~~~~~
「ユイ、く、苦しい。」

「はっ。す、すみません、つい。」

リリーナの口を押えていた手をパッと放す。ユイはリリーナを倉庫から連れ出し、屋敷の食堂へと逃げ込んでいた。

「けほっ。まったくあなたの馬鹿力で塞がれたら息ができません。」

「申し訳ありません・・・ですが、リリーナ様があのようなことを言い出さなければ。」

「あら、私が悪いと言うのですね。」

「お、お言葉ですが! リリーナ様、あなたは私と雄太を見て面白がっているだけです。私は雄太のことが、その、す、好きかどうかはまだわかりません。あいつとは気兼ねなく話はできますし、居心地がいいなと思いもします。ですが、私はリリーナ様の騎士なのです。あなたがこの世界でやろうとしていることをお助けするのが最優先です。」

「だから、今のままでいいと?」

「そうです。」

ユイは力強く相槌を打った。そんな彼女を見てリリーナはヤレヤレと首を振る。

「私を使って雄太さんの気持ちを確認しようとしたくせに。今度は私のことを助けなきゃいけないからとか。ユイ、あなた勇気が足りないのを私のせいにしていませんか?」

「わ、私はただリリーナ様のことを騎士として思っているだけで。」

言い訳をしようとするユイをリリーナは右手で制する。

「わかりました。自分の可愛い部下が幸せになれるよう応援しようと思いましたが、もうやめます。」

「えっ・・・。」

「私は中途半端は嫌いです。だから私のことを利用してその状態を続けられることは耐えられません。今からはやり方を変えることにします。」

「リリーナ様?」

リリーナは深呼吸すると真剣な眼差しでユイを見て、そして言った。

「ユイ、私は雄太さんのことが好きです。」

「!?」

「たった今から私はあなたのライバルというわけです。」

ユイはリリーナの顔を見る。そして彼女が冗談を言っていないことを察した。

「リリーナ様・・・私は、私は。その・・・すみません。」

謝りながらユイは食堂を飛び出そうとする。扉を開けたところでクラウスとぶつかりそうになった。

「おっと。申し訳ありません、ユイ殿。」

「いや、こちらこそすまない。・・・クラウス殿、朝食はいらない。畑に行く時間まで部屋にいると婆様に伝えてくれ。」

うつむいたまま小声でボソボソと話すユイにクラウスは「了解しました。」と頭を下げた。そして彼女はそのまま走り去ってしまう。

「・・・リリーナ様、どこまで本気ですか?」

「あら。クラウスの言う通り自分の気持ちに正直になっただけですよ。ユイにね。私という逃げ道をなくせば雄太さんに想いを伝える決心がつくでしょう。」

「はぁ。やっぱり自分を犠牲にするおつもりですね。」

「何のことだかさっぱりわかりませんよ、クラウス。さ、朝食にしましょう。」

クラウスはリリーナがゆったりと椅子に座る姿を見て、大きなため息をついた。





~~~~~
「えっと、クラウスさん?」

返事はない。俺はしびれを切らしてつい大きな声で呼びかけてしまった。

「クラウスさん!」

「あっ、ああ。雄太殿、申し訳ありません。今朝のことを思い出していたもので。」

今朝のこと、というとユイと倉庫の中で話しをしていたことだろうか。そう言えばクラウスさんものぞいてたんだっけ。

「・・・あの後、何かあったんですか?ユイがリリーナさんを連れて行きましたけど。」

クラウスさんは答えなかった。しばらく黙っていたかと思うとどこか複雑そうな顔でこちらを見る。

「雄太殿。」

「はい?」

「私とユイ殿はリリーナ様の部下。同じ主君に仕える仲間の幸せを願うのはもちろんです。ですが、主君の幸せも思わずにはいられません。」

「はぁ。そうですよね。」

曖昧な返事を返す俺にクラウスさんはこれでもかと言うくらいに頭を下げた。

「リリーナ様のことも気にかけてください。」


――――――
すっかり遅くなった朝食を取り、クラウスさんに「犬のこと頼みます。」と言って屋敷を出た。畑へと続く道を歩きながら言われたことについて考える。

「リリーナはこっちに戻って来てから楽しそうにしているし、何も問題はなさそうだけどなぁ。」

今朝も俺とユイのことを面白おかしく見てた。いつもと変わらない様子だったけど。

「まさか、あの時リリーナが言おうとしたことで2人が気まずくなっちゃってるとか?いや、ユイもリリーナがああいう人だってわかってるだろうから、それはない・・・か。」

それとも、もしかしてだけど。リリーナも俺のことが好きとか?

「いやいやいや。リリーナはこっちで言えば高1くらいだぞ?女子高生が30超えたオッサンを好きになるとかあり得ない。それにあのお姫様は常に自分が面白いと思う状況を作ろうとする。気を許すと痛い目みるぞ。」

頭でいろいろ考えてみるが、結局答えはわからない。

「・・・リリーナのことはユイと話をした後にちゃんと考えよう。」

一人で勝手に頷きながら俺はみんなが待っている畑へと入って行くのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...