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革命編 七章:黒を継ぎし者

甦る身体

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 現実世界おもてに現れ創造神オリジンを抱えたままのウォーリスと対峙するエリク達は、再び戦闘を開始する。
 魔力を用いた攻撃手段を封じられながらも、到達者エンドレスとしての潜在能力ポテンシャルを発揮するウォーリスの脅威はゲルガルド以上の印象を与えていた。

 一方その頃、ウォーリスが抜け出したマナの大樹内部に視点は戻る。
 創造神オリジンと共に消えたウォーリスに対して、未来のユグナリスは焦りの様子を見せていた。

「――……早く、ウォーリスを追わないとっ!!」

「待てって、どうやって追うっつぅんだよ」

「それは……!」

精神体たましいだけの俺達には肉体がぇ。あの野郎が現実おもてに出た以上、手出しが出来ん」

「でも、奴をここで逃がせば……どんなことをするか……っ!!」

「だから待てっつってるだろ。――……それで、嬢ちゃんよ。なんか策があるんだろ?」

「!」

 ウォーリスが逃げた事をあやぶむ未来のユグナリスに対して、フォウルは腕を組みながら落ち着いた面持ちを見せる。
 そしてアルトリアの方へ顔を向けると、そうした問い掛けを始めた。

 するとウォーリス達が消えた場所を見ながら、アルトリアは口を開いて答える。

「――……ウォーリスを追うわ」

「どうやって?」

「その為に、私の身体も持ってきたのよ」

 そうした答えを返すアルトリアに対して、フォウルは訝し気な表情を浮かべる。
 すると彼女が述べた手段について、再び疑問を向けた。

「……だが、そいつは死体だ。生きてる俺等の精神体たましいが入るには、ちと厳し過ぎるんじゃねぇか?」

「だったら、生きた身体に入ればいいだけよ」

「!」

「まさか、自分を生き返らせる気か……!?」

 述べられた疑問にも答えられた案に、二人は驚きの表情を浮かべる。
 するとアルトリアは周囲に操作盤パネルを出現させると、それを両手で操作しながら何かを打ち込み始めた。

 それを見ていた未来のユグナリスは、再び疑問の言葉を口にする。

「何をやっているんだ?」

「ウォーリスが現実むこうに戻ったおかげで、循環機構システムの操作権が私に移ったわ。これで、私の構築式プログラムも落ち着いて入力できる」

「ぷろぐらむ……?」

循環機構ここの内部は、言わば現実世界を投影できる仮想空間。……つまり、この世に存在するモノを入力する構築式プログラム次第では作り出せる」

「!」

「ウォーリスの場合、ゲルガルドからその知識を得ていた。そして輪廻を循環し存在する理想郷ディストピアを作り出して、マナの大樹を媒介として現実世界に拡げていたのよ」

「……じゃあ、お前は……何を作ろうとしているんだ?」

「決まってるじゃない。――……マナの実よ」

「!」

 そう言いながら操作盤パネル構築式プログラムを入力するアルトリアは、自分自身を生き返らせる為に『マナの実』を作り出そうとする。
 しかしその話を聞いていたフォウルは、訝し気な表情を強めながら口を開いた。

「嬢ちゃん。お前、どうしてマナの実の構築式プログラムなんぞ知ってる?」

「……それって、聞くほど重要な話?」

「マナの実の作り方なんぞ知ってるのは、創造神オリジンだけだろうからな。……なんで嬢ちゃんが、創造神オリジンの知識を持ってる?」

「……」

「……やっぱりお前、創造神オリジンの記憶を……」

 アルトリアの奇妙な知識の豊富さが奇妙だと察したフォウルは、何かを察するように腕を組みながらそうした言葉を漏らす。
 しかし敢えてそれに答えないアルトリアは、黙々と操作盤パネルへ入力を続けた。

 僅かに警戒を宿す様子を見せたフォウルだったが、鋭い視線を向けながらもアルトリアの邪魔はしない。
 そうした二人の様子を見ていたユグナリスも、敢えて口を挟まずに状況を見守り続けた。

 そして数十秒後、アルトリアは入力を終えて操作盤パネルから両手を離す。
 するとアルトリアの前に突如として赤い光を放つ物体が光の粒子状に造り出され、それを見たアルトリアが両手を伸ばしながら包み込んだ。

「――……これが、マナの実。創造神オリジンが造り出した、万能物質……」

「……!!」

 そうしながら精神体の両手で包み掴むと、アルトリアの手に形が整えられた赤い実が姿を見せる。
 銀色の茎と血のように赤い果実は、マナの大樹にも生えるという『マナの実』とまさに同様の物に見えた。

 それを手にしたまま、アルトリアは自身の死体からだへ歩み寄る。
 すると傍まで近付いた後、自身の死体を仰向けにしながら左手で口を開かせ、マナの実を口元に近付けた。

 それを見ていた未来のユグナリスは、些細な疑問を持ちながら問い掛ける。

「どうやって、その実を死体に食べさせるんだ?」

「そうね、死体このままじゃ食べれないわね。……まぁ、体内に入れてしまえばいいだけだから。果汁だけでもいいでしょう」

「!」

 そう述べた後、アルトリアがマナの実を掴む右手とは逆の左手を使い、人差し指を果実に刺し込む。
 すると穴の開いた果肉から果汁が漏れ出し、それが死体の口に流れ落ちた。

 開いた口の中に落ちた果汁は、喉を鳴らすことなく口内に含まれる。
 するとアルトリアは死体の上体を起こし、そのまま喉の奥へ流れ込むように僅かに身体を揺らした。

 そこで一つの大きな脈動が起き、アルトリアの死体からだへと流れ込む音が聞こえる。
 その数秒後には、死体が赤い光を発しながら輝きを発し始めた。

「これは……!!」

「……到達者おれたちの血を飲めた時と、同じ反応だ」

 死体から発せられる光に驚くユグナリスに対して、フォウルは思い出すような面持ちでそうした言葉を見せる。
 しかしアルトリア本人は驚く様子を見せず、ただ赤い光を発する自身の肉体を見守り続けた。

 すると更に数十秒後、発せられていた赤い光が収まっていく。
 そして完全に赤い光が消えた後、ユグナリスは自身の感覚から感じ取れる生命反応に驚きを浮かべた。

「まさか、本当に……」

「……さぁ、準備しなさい。アンタ達」

「!」

「ウォーリスを追うわ。――……そして、この茶番劇を終わらせるわよ」

 そう言いながら振り返るアルトリアの両手には、自分の肉体が抱え持たれている。
 更にその肉体は今までのように血の気を引かせたような肌の色をしておらず、血の通った様子と僅かな呼吸をしている事が窺えた。 

 こうしてアルトリアは自らが作り出したマナの実を用いて、自分の肉体を生き返らせる。
 そして現実世界に逃げたウォーリスを追う為に、その準備を整え終えたのだった。
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