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13.スイート・キング6
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「ご、ごめんね。わたしの話、いやだった?」
「違います。僕が怒ってるのは、確かですけど。それは、当時の祐奈さんのまわりにいた、大人の人たちに対してです」
「……そう」
「そんなに大事なものが、どうしてなくなるんだろう……。
絶対に、あってはいけないことですよ。それは」
「う、うん。ありがとう……。
でも、いいの。思い出は、なくなったりしないし……。
大事なものをなくした人は、わたし以外にも、いっぱいいると思うの。そのことは、わかってるつもり」
「やさしいんですね。当時の行政の人とか、施設の職員さんには、腹は立たないですか?」
「だって、その人たちは、他人でしょう……。わたしには、身内はいないし。
しかたなかったの。もし、腹が立つとしたら、自分にかな……。
なにかがおかしいって、わかっていたはずなのに。ちゃんと、まわりにいる人たちに、説明できなかった……」
「五才ですよ。できなくて、当然です」
吐き捨てるように、友也くんが言った。
その言い方が、すごく、激しい感じで……。なんだか、うれしかった。
わたしのために、本当に怒ってくれているような感じがした。
「ありがとう。こんなへんな話を、まともに受けとめてくれて。申しわけないような気持ち……。
友也くんが怒る理由なんて、ないんだからね。あんまり、熱くならないで」
「祐奈さんって、いい人ですよね」
「ううん。あきらめる方が楽だから、ずっと、そうしてきただけなの。
だって、苦しいでしょう。なくなったものや、なくしたもの……もう二度と帰ってこないものを、待ち続けるのは。
日記も母子手帳も、お父さんとお母さんが生きかえるなら、どちらもいらなかったの。だけど、そんなことはありえないって、わかってた。たぶん、それは、わたしが五才だった、あの時から……」
「賢いお子さんだったんですね」
「どうかな……。ちょっと、さめてる子供だったのかも」
「それは、違うと思うな。でも、……そうなんですね。
祐奈さんは、おっとりして見えるけれど、内面は、激しいものを抱えてる。そんなふうに、僕は感じました」
「そう……?」
「強いですよ。僕よりも、ずっと」
「ううん。そんなことない。
わたしの話はこれくらいにしましょう。今度は、友也くんの話を聞かせて?」
友也くんは、少しの間、黙っていた。
わたしは、待つことにした。なにか、言いたいことがありそうな感じだったから。
「いいの。なんでも」
「……さっき、彼女はいないって、言いましたけど」
「うん?」
「気になる子は、いないわけじゃないです。僕と同じくらいの身長で、自分で漫画を描いてて、すごく才能がある……」
「えーっ。そうなんだ。これから、告白するの?」
「いやー……。今は、それどころじゃないです……」
「どうして? その子に、支えてもらえるかも」
「いやですよ。僕の、こんな悩みに、つき合わせたくないです」
「そう?」
「そうです」
「ふうん……」
「つらいです」
本当に、つらそうだった。
眉と眉の間に、しわが寄っているのが見えた。
「今日は、おごってあげるね」
「……じゃあ、はい。ありがとうございます」
なんだか、複雑そうな顔をしていた。
「デートとかも、だめなの?」
「どうでしょうね。うっかり、言っちゃいそうにならないですか?」
「それはー……。言っちゃった時は、言っちゃった時でしょう」
「祐奈さんって、意外と大胆ですよね」
「そんなこと、ない」
「そうかな……」
「違います。僕が怒ってるのは、確かですけど。それは、当時の祐奈さんのまわりにいた、大人の人たちに対してです」
「……そう」
「そんなに大事なものが、どうしてなくなるんだろう……。
絶対に、あってはいけないことですよ。それは」
「う、うん。ありがとう……。
でも、いいの。思い出は、なくなったりしないし……。
大事なものをなくした人は、わたし以外にも、いっぱいいると思うの。そのことは、わかってるつもり」
「やさしいんですね。当時の行政の人とか、施設の職員さんには、腹は立たないですか?」
「だって、その人たちは、他人でしょう……。わたしには、身内はいないし。
しかたなかったの。もし、腹が立つとしたら、自分にかな……。
なにかがおかしいって、わかっていたはずなのに。ちゃんと、まわりにいる人たちに、説明できなかった……」
「五才ですよ。できなくて、当然です」
吐き捨てるように、友也くんが言った。
その言い方が、すごく、激しい感じで……。なんだか、うれしかった。
わたしのために、本当に怒ってくれているような感じがした。
「ありがとう。こんなへんな話を、まともに受けとめてくれて。申しわけないような気持ち……。
友也くんが怒る理由なんて、ないんだからね。あんまり、熱くならないで」
「祐奈さんって、いい人ですよね」
「ううん。あきらめる方が楽だから、ずっと、そうしてきただけなの。
だって、苦しいでしょう。なくなったものや、なくしたもの……もう二度と帰ってこないものを、待ち続けるのは。
日記も母子手帳も、お父さんとお母さんが生きかえるなら、どちらもいらなかったの。だけど、そんなことはありえないって、わかってた。たぶん、それは、わたしが五才だった、あの時から……」
「賢いお子さんだったんですね」
「どうかな……。ちょっと、さめてる子供だったのかも」
「それは、違うと思うな。でも、……そうなんですね。
祐奈さんは、おっとりして見えるけれど、内面は、激しいものを抱えてる。そんなふうに、僕は感じました」
「そう……?」
「強いですよ。僕よりも、ずっと」
「ううん。そんなことない。
わたしの話はこれくらいにしましょう。今度は、友也くんの話を聞かせて?」
友也くんは、少しの間、黙っていた。
わたしは、待つことにした。なにか、言いたいことがありそうな感じだったから。
「いいの。なんでも」
「……さっき、彼女はいないって、言いましたけど」
「うん?」
「気になる子は、いないわけじゃないです。僕と同じくらいの身長で、自分で漫画を描いてて、すごく才能がある……」
「えーっ。そうなんだ。これから、告白するの?」
「いやー……。今は、それどころじゃないです……」
「どうして? その子に、支えてもらえるかも」
「いやですよ。僕の、こんな悩みに、つき合わせたくないです」
「そう?」
「そうです」
「ふうん……」
「つらいです」
本当に、つらそうだった。
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「……じゃあ、はい。ありがとうございます」
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「どうでしょうね。うっかり、言っちゃいそうにならないですか?」
「それはー……。言っちゃった時は、言っちゃった時でしょう」
「祐奈さんって、意外と大胆ですよね」
「そんなこと、ない」
「そうかな……」
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