聖女によって婚約者を取られ追放された公爵令嬢は魔王に保護される

ラキレスト

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35話 ヴィンセントside

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 アレクシアと別れてから執務室に行きながら先程のアレクシアを思い出す。

 アレクシア、すごく可愛かったな……。

 アレクシアのことを思うと自然と口角が上がる。思わずクスッと笑ってしまう。

 いつもは澄ました落ち着いた感じだが、この頃は私に笑顔を見てせてくれるようになった。その笑顔がなんとも愛らしい……。

 ヴィンセントにとってもこんな気持ちになったのは初めてだ。そんなことを思いつつ執務室に着いた。

「魔王様……」

 側近のヒューが呼ぶ。

「何があった?」

「実は聖国に動きがあったようです……」

「そうか、動いてきたか……」

 ブランシェ聖国……まったく勘違いも甚だしい。昔からそうだった。まったく意味の分からない主張をし、人以外の生き物は下等種族だと思い込んでいる愚かな人間たちの集まり。

 魔族はそんなブランシェ聖国から目の敵にされている。何が聖戦だ、こちらとて争う気はまったく無いのだが……。そもそも我々魔族は静かに暮らしているだけだ。昔、一度聖戦といって侵攻してきた時があった。しかし、まず魔の森に囲まれている我が魔国にまでは来れなかった様だがな。

「パンテル王国にいる聖女を救うための聖戦だとか……」

「何故パンテル王国の聖女のことで我が魔国に戦を望む? パンテル王国ではなく?」

「それはとんでもない国ではないですか、ブランシェ聖国と言うのは……」

「そうだったな……」

 なんでもヒューが言うにはパンテル王国でやらかした聖女が国王アイザックに捕らえられたと聞いたブランシェ聖国が抗議をしたところパンテル王国が正当な理由で聖女を捕らえたと返した。だからパンテル王国の法で裁くと。

 それを返されたブランシェ聖国は納得できず、パンテル王国は魔族に国王が操られているとまた自分勝手に解釈した訳と言うこと。

 多分その聖女とはアレクシアに冤罪をかけ、魅了魔法を使った女だろう。

「はぁ……。まったく厄介だな、ブランシェ聖国は」

「本当に愚かな人間たちです」

「これは本当に近々アイザックと会わねばならんな」

「そうですね。パンテル王国とも情報を交換しておいた方がよろしいでしょう」

「それなら早い方がいいな」

 そう言うとヴィンセントは使い魔の鴉を呼んだ。そして、アイザックに伝言を伝えろと命令し、アイザックの元に送った。

「それともう一つ。アレクシア様は当分パンテル王国には戻らせない方がよろしいかと……」

「何故だ? 元々当分は魔国にいるとアレクシアが言っていたが?」

「それは安心致しました……。ブランシェ聖国はアレクシア様が聖女を陥れたと解釈しております」

「……何?」

 ヴィンセントは不快な表情をしながら言った。
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