219 / 272
最後の仕上げ
218. 偉くなっても絶対勝てない相手
読みに来てくださってありがとうございます!
再開いたします。
-----------------------------
「それじゃあ今度から、王宮に通うようになるんだね?」
「うん。とりあえずは三日に一度にして、今後必要に応じて変更していく予定だよ」
ムスター邸の俺の部屋でお茶を飲みながら、リシェルに王宮での出来事と今後の予定を共有した。
従僕のカイとノアにも関わってくる話なので、退室しようとする彼らを呼び止め、この場に待機してもらっている。
ミッテちゃんも好物の粟のお皿をつつきながら、意識の大部分は俺の話に向けていた。
「四公改め四大公は、基本的に今まで通り本邸で暮らし、三日に一度は王宮に出向いて仕事を行う。常時王宮にいなければ国が回らないとか、実はそんなことはなくてね」
これまでは国王と王妃がまったく機能していなかったため、宰相と大臣達は各自の権限では決められない重要なものごとを、会議で決定して進めなければいけなかった。
話し合いで決めようというのは平和的でいいが、結論を出すのに日数がかかるというよくない側面もある。
中には三日どころか、一週間以上かけても解決しないことがざらにあったらしい。
国のためにどうこうという理屈をこねながら、実際は個人的に都合が悪くて反対する者が出るせいで、堂々巡りになって一向に話がまとまらないのだ。
そして彼らは当然のように派閥に分かれ、強い力を持つ派閥か、事前の票集めの巧い派閥が意見を通せるようになる。
「遠い未来にはそういう政の形も必要になるかもしれないけれど、国の頭が代わる時は『速さ』が重要だからね。今のこの国には必要のない仕組みだ。今後は各大臣達も、正式に僕ら大公をトップとして動いてもらうようにする」
大雑把に分けると、ヴェルクの義父上様とエアハルトは『武』の方面を担ってもらい、シュピラーレの小父様と俺は『文』を担う。大臣達もそれを基準にして、俺達の下に振り分けた。
独立しているのは宰相の地位だ。彼は俺達四人全員の補佐であり、不在時には大臣達の取りまとめを行う。
宰相のおじさんも言っていたけれど、俺達がトップに立つことで不毛な話し合いの日数がカットされるから、なんなら週に一度の王宮通いでも充分に回るほどなのだ。
だから当初は週一でもいいんじゃね? という声もあったけれど、俺とシュピラーレの小父さんは首を横に振った。
「僕らの不在期間が変に長いと、自分達が王宮の実権を握ろうなんて増長する輩が出るからね。こまめに顔を出して、勝手な真似は許さないと睨みをきかせたほうがいいんだ」
「そうだね……わたしも、ランハート達が何日もいなかったら、自分達の天下だと勘違いをする人達が出てきそうだと思うよ」
これに関しては俺とシュピラーレの小父さんの見解が一致しているから、義父上様とエアハルトはすぐに納得してくれたんだけど。
リシェルも同意見となれば、やっぱり確実にそうなるよね。
「それで、カイとノアにもここで聞いてもらっている理由なんだけどね」
「はい。俺達に関係があるということですが」
「いったいどのようなことで……?」
「うん。早い話が、二人とも僕とリシェルの『侍従』になってもらうから」
「は!?」
「私達が、ですか!?」
二人とも目を見開いている。彼らの将来設計に『侍従』は存在しなかったろうから、さぞかしびっくりしたことだろう。
「ですが、俺とノアは平民ですよ? 侍従なんて無理でしょう?」
そういうことなんだよね。
貴族が従僕やメイドになることはできても、平民が侍従や侍女になることはできない。だから二人とも、それを想像したことすらなかった。
「普通はもちろんできないさ。でもおまえ達が従僕のままだと、王宮で近くに仕えてもらうことが不可能になるんだよ。汚れの大部分は排除してだいぶ綺麗になったけれど、さっきも言ったように大臣達の中には野心家もいる。この先、そいつらが自分の息のかかった使用人をこっそり送り込んで来ないとも限らないから、身近で世話をするのはカイとノアに頼みたいのさ」
「それは……そう、ですが」
「ちなみに、これはもう確定事項だから。一週間後には宰相が手続きを済ませてくれている予定だ」
カイとノアはあんぐりと口を開けた。そう、もう決まっちゃったから取消しできないんだよ~。
二人は今回限りの特例として、平民でありながら侍従となる。とはいえ、王宮で貴族出身の使用人や官吏に舐められてはいけないから、騎士爵か準男爵か男爵か、それ相応の身分も用意しようかという話も出ていた。
「お、俺達が貴族……!?」
「嘘でしょう……」
「はっはっは。おまえ達の代に限った身分だがな。というわけで、一週間後までに姓を考えておきなさい」
「無茶言わないで下さいよ!!」
「そういうのはもっと早く教えておいてください!!」
早めに教えたら辞退されそうだからギリギリで事後承諾にしたんだよね、という裏話は内緒である。
俺の心の声が聞こえたのか、リシェルがソファの隣で「もう」と苦笑し、手の平で俺の頭をペシリと叩いた。
それはもう軽~い『ぺし』だったんだが、その程度でもスイッチが入る俺はこう見えてお年頃。
流れるようにリシェルを押し倒し、カイとノアが頭を横に振りながら退室していく気配があった。
背後でドアの閉じる音を聞きつつ、服の上からリシェルの身体をまさぐろうとして、ふと違和感に気付いた。
「あれ? ……リシェル、もしかして体調悪い?」
「え? いや、そんなことはないよ?」
「そう……?」
でもなんか、反応が微妙に鈍いんだよな。
考えてみれば以前、こうしてソファに押し倒したら「ここじゃイヤだ」と涙目で抵抗されたのに、なんとなく抵抗するのが億劫というか、気怠そうに見える。
「今日はやめておこうか。疲れているんなら、無理は……」
「い、いやだ……!」
離れようとしたら、リシェルが俺の上着を掴んできた。
唇を引き結び、涙目でうるうると俺を見上げてくる。……その目は明らかに、行為の続きを訴えかけてきた。
こ、こんなワザをどこで会得したんだリシェル!?
――即座に複数のメイド達の顔が浮かんだ。
彼にこのテクニックを教えそうな女性が周りに多すぎて、誰が犯人かわからない。
「ランハート……」
「う……」
俺の脳内で、理性を堰き止める何かがガラガラガラと崩される幻聴。
そして揚がる白い旗。
「じゃあ、今日は少しだけ、ね」
「うん」
恥ずかしそうに嬉しそうに頷くリシェルに、まんまと心臓を掴まれた俺は、慎重に彼を抱き上げて寝室に運んだ。
「おや……? リシェルは……」
ミッテちゃんの呟きが耳に入った。
あ、しまった。またミッテちゃんを放置しちまってるわ。
ごめんよ。
---------------------
読みに来てくださってありがとうございます!
すみません……明日は肌色回になると思います(汗)
あなたにおすすめの小説
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....