山の上高校御馬鹿部

原口源太郎

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 マラソンの沿道に並ぶ見物人のように、山の上高校の前の道に数十人の生徒たちが並んでいる。その前を一瞬にして山下と海上の自転車が走り抜けていく。
「遅いなー、まだ来ないのかしら」
 峠の方を見る女子生徒が言った。
「まだ来ないよ」
 隣の女子生徒が腕時計を見ながら言う。
「今行ったよ」
 別の女子生徒が言った。
「えっ!」 
「うっそー・・・・見損なった」
 何のために今までそこに待機していたのかというがっかりした表情で二人が言った。
 そんな見物人たちの端で、スマホ片手に話す男子生徒がいる。
「こちら高校前。本部どうぞ」
「こちら本部。状況はどうだ?」
「今、それらしき物体が通過した。残念ながら速すぎて確信は得られず・・・・」

 駅前にも数十人の生徒たちがたむろしている。
 駅舎にある自動販売機の前に折り畳み式の机が置かれ、その奥に数人の男子生徒がパイプ椅子に座っている。机の前に『本部』という張り紙が張られ、机の上には地図やパソコン、カメラに双眼鏡などが置いてある。
 椅子に座る男子生徒の一人がスマホで話している。
「もう少し様子を見て、島村達が来たら一緒に下りてきてくれ」
「了解」
 そんな駅前の本部から少し離れた大きな銀杏の木の下で、美菜が俯いている。イケメンの男子生徒が美菜の前に立ち、笑顔で話している。

 国道まで下りてきた山下と海上。周りの景色は線になって後ろに消えていく。
 山下たちは汗だくになり、その汗も真後ろに飛ばしながら歯を食いしばってペダルをこぐ。
 道の先に信号機が見えてきた。
 信号は青から黄色に変わる。
「待て待て待て! まだ変わるな!」
「うおー!!」
 赤に変わる時にに二人は交差点に突っ込む。
 歩道の信号が変わるのを待ちかねた子供が急いで横断歩道を渡ろうと走り出した。
「うわ!」
「うへ!」
 二人は子供を避けて慌ててハンドルを切る。
「ウギャー!」
 海上は反対車線に飛び出し、目の前に迫る車に悲鳴を上げた。
 山下は歩道に突っ込み、スーパーの前に積まれた段ボール箱の山を直撃する。
 そのまま段ボール箱を一つ抱えて走り、歩道を歩く子供やおばさんを起用に避けて車道に戻る。
 車を危ない所でかわした海上は先を走っている。
 駅はすぐ目の前だ。
 海上が振り返り、山下を確認すると余裕の表情でアッカンベーをした。
「このヤロー」
 山下は残りの力を振り絞り、必死にペダルを踏みしめる。
 海上が前を向くと目の前に荷物を降ろすトラックが停まっていた。
「うっわ!」
 慌ててハンドルを切り、今度は海上が店に突っ込む。そこは酒屋で、洋酒やら日本酒やらのビンをバリバリガシャンと壊して止まる。
 店の奥からおばさんが何事かと驚いて飛び出してきた。
「何やってんだ、お前は! バイトして弁償するんだよ!」
「わかってるよ! くそババア」
 海上は慌てて自転車を引きずり出して店を出る。
「親に向かってくそババアとは何て言い草だ!」
 店の外には海上酒店の大きな看板がある。
 一方、山下は海上が避けたトラックの横を通り抜けようとした時、運転式のドアが急に開き、まともにぶつかってすっ飛ぶ。
「おっと、悪い! 大丈夫か」
 トラックの運ちゃんが運転席から飛び降り、歩道に倒れた山下の元に向かう。
 山下は痛みをこらえて立ち上がり、無理矢理笑顔を作る。手を上げて大丈夫と合図し、自転車にまたがる。ところが、自転車の前輪がひしゃげて走れそうにない。
 その後ろで海上が店から飛び出してくる。

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