山の上高校御馬鹿部

原口源太郎

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 そこに銀杏の木の下で美菜と話しをしていたイケメンの男が進み出る。
「僕みたいな人が川本さんと付き合うにはふさわしいってことかな?」
 男がキザったらしく言った。
 山下は手にしていた空き缶をクシャッと握りつぶす。
「でも、たった今僕は川本さんに振られた」
 またギャラリーがおおーとどよめく。
「そりゃそうだよ。僕は川本さんのためにこれほどの大勝負はできない」
 あくまでもキザっぽく両手を上げてお手上げのポーズをしてみせる。
 山下は美菜を見つめる。
 美菜も大きな瞳で山下を見つめる。
 ふと我に返った山下は慌ててポケットから財布を取り出した。
 山下の仕草を見て、海上も慌てて残りのコーラを飲み干そうとする。
「もういいの! こんなことして勝ち負けを競って、勝ったから愛を告白する権利があるなんておかしい。そんなんじゃないと思う」
 そんな美菜の言葉を聞き、山下は手にしていた百円玉をピーンと弾いて空に飛ばす。
「そりゃそうだ。俺と海上が川本さんに交際を申し込んだ。二人とも嫌なら川本さんが断ればいい。俺か海上のどちらかを好きか好きになりそうなら、川本さんがそう返事をすればいい。俺たちが決めることじゃないよな」
「そうだな」
 海上もその言葉に同意した。
「私は昨日から心を決めてる。ごめんなさい」
 そう言って美菜は海上に頭を下げた。
「はいはい。こうなることはわかってたけどよ」
 海上が言う。
「え? 俺は? もしかして、この前の返事は、OK?」
「もう一度正式に話しをしてくれるんじゃなかったの?」
「え?」
 二人の周りには大勢の生徒たちがいる。
「また今度・・・」
「何照れてんだよ」
 海上が茶々を入れる。
「何だよ」
 ぼかすか・・・やり合う気分になれない二人。ポーズだけ。
 そこに女子生徒たちが海上を取り囲む。
「じゃ、海上さんは今フリー?」
「女の子のタイプは?」
「好きな食べ物は?」
 女子の質問攻めにあい、海上は赤くなって鼻の下を伸ばす。
 山下たちの周りにも人が集まってくる。
「川本さん、早まったことしちゃいけないよ」
「俺だって好きだったのに」
 その生徒はおーいおーいと泣き出す。
「俺だってずっと憧れてたのに」
「俺もずっと前から」
「俺だって」
「私もずっと前から・・・」
 男に交じって女子生徒も涙を浮かべて川本を見ている。
 そこにやっと小笠原兄の操るポルシェがやって来た。
「どっちが勝った?」
 急いで車を降りながら小笠原が尋ねる。
「そんなことどうでもいいの!」
 周りのギャラリーたちが大声で合唱する。
 そんな人混みの中から山下が美菜の手を引いてそっと出てくる。
 笑みを浮かべて歩いていく二人。
 大勢いる生徒たちの中の一人に電話がかかってくる。
「もしもし」
「こちら高校前。島村たちが下りてきた。これから合流して駅に向かう。さっきのはやっぱり山下と海上だったらしい。そっちに着いたか?」
「とっくに着いてるよ」
 そう電話で話すのは、先ほど本部席にいて山下たちに撥ね飛ばされた男子生徒だ。通りを歩いていく山下と美菜の後ろ姿に気が付く。
「どっちが勝った?」
「そんなこと、もうどうでもいい。早く下りてこいよ」
 男子生徒は電話を切り、小さくなっていく二人の後ろ姿を見送った。
 太陽は高い山の向こうに半分身を沈ませている。



                          終わり
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