【ドアマットヒロイン】富をもたらす侯爵令嬢は、時の伯爵の手を取り立ち去る【完結】

九十九沢 茶屋

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3.家族と侯爵令嬢

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 ザシャアッ!! と効果音がしそうな勢いで、妹とお父様とお母様が登場し、私が此処にいる事に、がなり立てて来た。
 うるさいと思いつつ、そのまま返事をしないでいたら、それが腹に据えかねたのか、更に三人とも騒ぎ立てて来た。
 
「ちょっとお姉様!! 何とか言ったらどうなのよ!」
「ラシェル! 家族に対してその態度はなんなの!」
「そうだぞ、ラシェル! 一体これはどう言う事なんだ!!」
 
 放っといたら、ずっとこのままなのかしら……。
 
「どうもなにも、もう、あなた方に付き合う気は無い、ただそれだけの事です」
 
 いつも謝る事しかしなかった私から、反抗してくる様な言葉に、短気な三人は真っ赤になる。
 
「何ですの、その生意気な発言は!!」
 
 まず、お母様が私の態度に反応にした。
 
「淑女がその様な物言いをして良いと思って!? 我が娘ながら何て情けないの!」
 
 髪を振り乱して叫ぶお母様の方が、余程淑女として駄目では?
 口には出さず、つらつら思っていたら、今度はお父様が叫び出してきた。
 
「どうやって塔から、いや、それはいい! 貴様は家のために富をもたらす義務があるんだ!! 勝手に塔から出る事など許されんぞ!!」
 
 ……義務、ですって? 
 
「義務? 今、そうおっしゃいまして?」
 
 私の低い声音での返事に、騒いでいた三人の動きがピタリと止まる。
 
「そ、そうだ! お前のそのギフトは、我が家に繁栄をもたらす為に授けられたものだろう!! ならばしっかりその勤めを果たさんか!!!」
 
 脂ぎった顔で唾を飛ばしながら、お父様が私に勤めを果たせと言って来るけれど。
 
「お断りします」
 
 ピシャリと私は断りの返事を返した。
 
「っ……!! な、にを生意気な事を!! そんな口答えするなど躾が足らなかったようだな!!」
 
 今までのラシェルなら口答えなんて、絶対にしなかったものね。
 
 前世を思い出してから、性格や気質が少し、いえ大分? 前世の私の方に引っ張られてる自覚はあるのよね。まあ、その方がいいと分かるからいいのだけれども。
 
 私の態度に、お父様のこめかみの血管がピクピク浮かんでらっしゃる。今にも切れてしまいそうね。
 
「来い! 躾し直してやる!! その上で貴様は塔ではなく、地下牢に繋いで逃げれなくしてやる!」
 
 血管を浮かばせたまま、お父様が私の腕を掴もうと、こちらへ近寄ってきて腕を伸ばしてきた。
 
「お断りします」
  
 手首を掴まれる前に、私は紅色の和風の扇子をどこからとも無く取り出すと、を込めて、目の前のお父様に向けて思い切り振るった。
 ただ振るっただけの扇子からは、強い風が発されて、その醜く太った体を軽々と吹き飛ばした。 
 
「ぐわああ!!」
 
 急に風に飲まれて飛ばされたお父様は、全身を強く地面に叩き付けられた。かなり強い衝撃だったみたいで、動けないでいる。
 
「きゃあ! お父様!」
「アナタ!」
 
 お母様と妹が慌てて、お父様に駆け寄る。
 
「お姉様! お父様に何て事するの!! 人でなし! 信じられないわ! それにその変な扇はどこから取り出したのよ!」
「私の力を、家のために使うのが義務とかのたまった上、地下牢に連れて行こうとしたんだもの。抵抗するのは当然でしょう? この扇子は元々私の持ち物だから、意識すれば何処からでも取り出せるだけよ。というか……」
 
 妹の物言いに、私は大きく深く、ため息を一つ溢した。
 
「人でなしは、どっちなのかしら」
「どう言う意味よ」
「どうも何も、言ったままよ」
 
 私は扇子を閉じると、ピッと扇子の先をお母様に向ける。
 
 突然扇子を向けられて、何事かとビクリと肩をはねさせるお母様に、私はニコリと笑みを向けた。
 
「お母様。私が富をもたらすからと、際限なく宝飾品を買い集めてますわよね」
「そ、それの何がいけないの! アナタのギフトを活用しているだけでしょ」
「お母様の物欲を満たす為のギフトじゃないわ。
 お兄様は賭博と高級娼館通い、アナタはお金をチラつかせて無駄に権力を振りかざしてはドレスなどを買い漁り、更には侍女やメイド達にかなり残酷な事をしているわよね。どちらが人でなしなの?」
 
「っ……」
 
 母も妹も私の言葉に、視線を逸らす。
 好き勝手やっているって自覚はあったようね。
 
「まぁ、それでもお父様……いいえ、そこの男に比べれば、あなた達はまだマシなのかもしれないけれど」
 
 五十歩百歩……とも言えなくもないけれど。
 
「アナタ、自分のお父様に向かって、何て失礼な物言いをするの!
 さぁ、お父様に謝りなさい!!」
 
 お母様が強い口調で言って来る。
 いつもの私であれば、謝っていたけれど、私は何も言わずにいると、
 
「何してるのよ、早くしなさいよ、お姉様!」
  
 妹が謝罪を強制してくる。 

 が、勿論私の返事は決まっている。
 
「お断りします」
 
 三度みたびの強い拒絶の言葉に、二人の顔が驚きに軽く瞳を見開かせた。 
 
「この国で禁止されている奴隷売買を秘密裏に行い、暴利を貪っているような人を、私はお父様とは呼びたくありませんわ」
 
 領地経営はしないくせに、そういう悪どい事は喜んでしていたんだから、本当に救いようが無いにも程がある。
 
 私の持ってる力のお陰で、家族達がどんな風に、富を使用してるのかも以前からずっと分かっていた。だからこそ、家族の中でも一番酷かったあの男には、気分が悪くなって仕方ない。
 
 
「!!!!」
 
 
 私の言葉にお母様も妹も、父の方を強く見つめる。
 当の本人は、倒れ伏したままだけれども、私を睨み続けていたその顔を、フイッと背けるだけだった。
 
「アナタ……今のは本当なの……?」
 
 お母様がくずおれながら、震えた声色で父に問いかける。
 あら、少しは良識が残っていたのかしら。
  
「ア、アナタ……何を考えてらっしゃるの……! そんなことして国にバレたらどうするつもりだったのよ!!」
「そうよ、お父様! お金なんてお姉様が生きてればそれだけで入ってくるのに、何でそんなことしたのよ! バレてお姉様を我が家から引き離されでもしたら、どうするのよ! 新作のドレスとか買えなくなっちゃうでしょ!!」
 
 
 前言撤回。お母様も妹やはり駄目だわ。  
 
  
「そんな訳なので、私はこれ以上ここであなた方に搾取されるのは、お断りという事です。それでは」
 
 どうでもいい茶番劇に、これ以上つき合ってられないからと、そのまま外へ出ようと門の方へ歩き出そうとしたのだけれど。
 
「待ちなさいよ、お姉様!!
 お父様が奴隷売買してたのはあり得ないけれど!! でもお姉様のギフトは富をもたらすのよ! 勝手に出て行くなんて許さないんだから!」
 
 ……アナタに許しを貰わないといけない理由なんて、無いと思うのだけれども。
 
 私が立ち止まって振り返った事に気をよくしたのか、妹は腕を組んで、ふんぞり返った状態で、私がのその富を活かしてあげるだの、それしか取り得が無いでしょうだの、好き放題言ってくる。
 
 その傲慢ぶりというか、我が儘な事に、私は心底呆れてしまうのだけれど。
 
 一応。
 それでもこの体は一応、あの男と母とから生まれ、妹とお兄様とも血は繋がっているから。
 
 だから小指の爪のかけらほどの、最後の情けで。
 
 私は妹だけでなく、母にも、父である男にも向けて、口を開いた。
 
「なら……一度だけ、チャンスを上げますわ。
 私のこの力に甘んじることなく、きちんと領地を納め、領民のために働きませんか?」
 
 今の領地は執事長が代理で治めて対応している。
 それを我が家で対応すべきと、私は至極、当たり前の事を言ったつもりなのだけれども。
 
「ふざけるな! お前がいるのに、なぜ働かねばならん!!」
 
 父から返ってきた答えはやっぱり予想通りのものでしかなくて。
 
 ……というか、ご自身のやらかしを盛大に暴露されたのに、何でそんな傲岸不遜な態度が取れるのかしら。
 
「おい、何をしている! 早くこいつを捕まえて塔……いや、早く地下牢に閉じこめろ!」
  
「働くつもりは無い、と言う事ね」
 
 
 私は働く人間を見るのが好きだ。
 私のこの力は、働く人を支える為の力。
 働かない人間の場所に、いつまでもいたりなどしない。
 
 
 私を捕縛する命令を出されて、衛兵の人達が、こちらへ駆け寄ってくるが、掴もうとする腕を器用にヒョイと避け、扇子を衛兵達に向けて振るい、力を、妖力・・を使い風を再度放った。
 
「なっ!」
 
 再び風が起きるなんて思わなかったのか、避ける事はしたものの、そのまま距離を取っている。
 ましてや、私が風を起こす事なんて、今までして来なかったのもあってか、動揺と警戒が見て取れる。
 
 元とはいえ、私の前世は妖怪・・だったのだから、前世を思い出した事で、力が戻ってこれ位なら使えるわ。
 
 
 そう──……。
 
 
「な、なによ今の! 逃げようとしては、いつも無様に捕まっていたお姉様がおかしいじゃない! あ、お姉様! 他にもギフトを持っていたのね!?」
 
 
 私は──…………。
 
 
「ギフトですって!? ラシェル、何故持ってる事を言わないの!」
 
 
 私の前世は──…………。
 
 
「いいえ、この力はギフトじゃないわ」
 
 
 私はスゥと一つ大きく息を吸い、家族に聞こえる様に声にする。
 
 
「私の風を起こす力も富をもたらすギフトも、前世で妖怪として生きてた時に持ってた力」
 
 
 ─そう。 
 
 
「私は座敷童子。富をもたらす妖怪」
  
 
 ──それが私の前世。
 
 
「私のこの力をこれ以上、あなた達の好きになど使わせないわ」







*˖⁺𖧷────𖧷────𖧷⁺˖*

読んで頂き、ありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾

家族をどこまでクズにするかは悩みました。
もう少し酷いバージョンもあったのですが(特に父親)、流石にやり過ぎたなと削除の祭りでした。

少しでも続きが気になるとか面白いなと思えましたら、ポイント☆やブックマーク、感想などあると嬉しいです。

次の話は4話と5話を、本日18時に予約投稿済です。
続きもどうぞ、よろしくお願いします(*ˊᗜˋ)
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