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21.快楽漬けの日々
しおりを挟むあれから、何日経っただろう? よくわからないけど、1ヶ月以上は経っている気がする。
「ん……は、ぁ……」
胎内で緩やかに振動しているローターが気持ち良くて、もぞもぞと腰が揺れる。前立腺を刺激しているそれをきゅっと締めると、より気持ち良くて吐息が零れた。
穴からコードが出ているけど、その先には小さなリングが付いているだけの、遠隔操作ローターだ。自分で操作出来るわけではなく、現在は緩やかに動いているだけ。だからイくことは出来無いけれど、ずっとぬるま湯に浸っているような快楽は心地良くて、眠くなるほど。
うつら、うつら。
窓から差し込む秋の優しい日差しと、ふかふか毛布とが相俟って、訪れる睡魔に誘われる。
けれどこのまま眠りそうになり目を閉じかけたら、カチャリとドアの開く音が聞こえてきた。
「ぁ……」
神崎がワゴンと一緒に入ってきた。だから眠りかけていた身体をのろのろ起こして、ベッドから下半身を落とし、彼に向かってコードの出ているアナルを向ける。ヒクヒクと蠢いている穴を晒すだけで、なんだか気持ち良い。
そのままの体勢で、飯を床に置いている神崎を待つ。用意し終えると、いつものように優しく尻を撫でてくれた。
「良い子にしていましたね、弘樹さん」
「ん……」
褒めてもらえるのが嬉しくて、自然と笑みが零れる。すると神崎も微笑んでくれた。
「食事を持ってきましたから、こっちにおいで」
神崎がソファに座る。言葉は優しく、彼の足下に置かれた食事も、いつもどおり美味そうな匂いを漂わせている。
でもちょっと考えたあと、尻を向けた格好のまま、フルフル首を振った。
「あまり、腹減ってない……」
神崎が俺の為に作ってくれた料理だとはわかっているけれど、見ていても食べたいと思えなかった。
そんなことよりも、気持ち良くなりたい。小さなローターなんかじゃなくて、バイブで掻き回してほしい。
けれど神崎の元に行かないでいると、胎内に埋まっているローターの振動を止められてしまった。物足りなくて、腰を振りつつ神崎を見返していると、もう一度ゆっくり言葉を紡いでくる。
「ここまで、おいで」
「………ん」
その声に促されるまま、コクリと頷いた。足元まで這っていき、おずおずと見上げる。すると頭を撫でて、髪も梳いてくれた。気持ち良くて嬉しくて、膝に頬を擦り寄せると、頭上からぽつぽつと声が聞こえてくる。
「12時間何も食べていないのに、腹は減っていない、ですか。単純に性的行為以外の感覚が狂ってきているのか、それとも人としての潜在的意識が耐えられず、生きることを拒否し始めているのか」
何を言っているのかわからずに首を傾げると、撫でる手が遠ざかっていった。不服に感じてじっと見上げると、神崎は床に置いていた器を1つ、手に取った。
良い匂いがすぐそこからしてきて、チーズの美味そうな匂いに、不思議にもちょっとお腹が空いているような気がしてくる。間近にある食事を見つめていたら、最近は一緒に持ってくるようになった匙で、器に盛られているリゾットを掬ってきた。
「はい、弘樹さん。食べて」
「あむ………」
言われるまま口を開けて、1口。ふんわりと広がった甘さは、チーズや卵なんだろう。とても美味くて、もくもく噛んでいたら、また頭を撫でてくれた。
「全部食べたら、ご褒美あげましょうか」
「……それなら食べる。全部」
ご褒美が欲しくて、すぐさま頷いた。
口元に運ばれて、食べて。噛んで、飲み込んで口を開けると、また運ばれる。
食べている間、神崎は外の話をしてくれた。知人であるヤクザの組長から、麻雀での代打ちをしてほしいと頼まれているとか、3時間ほどパチンコ店で適当に遊んでいただけなのに出禁を喰らったとか。
最後の方は、だいぶつらくなってしまって中々口を開けられなかったけれど、気が紛れるように髪を梳きながらずっと待ってくれるから、どうにか完食出来た。ストローの刺された紙パックの牛乳も全部飲んで一息つき、彼を見上げる。
「頑張りましたね。ではご褒美をあげましょう」
その言葉に頷いて、すぐさまベッドに戻った。仰向けに寝転がり、膝を立てて股を開く。
デスクに置かれていたローションを手にした神崎がベッドに腰掛けて、股を見下ろしてきた。期待にじゅんっと胎内が疼き、咥えたままのローターを締め付けてしまうし腰が揺れる。チンコも緩く勃起して、トロリと先走りが零れていく。
しかしすぐ弄ってもらえると思って待っていたのに、どうしてか股ではなく足に触れてきた。ふくらはぎを撫でられ、足首を軽く掴まれる。どうしたのだろうか?
「痩せましたね。歩かないから筋肉も減っている」
神崎が瞼を閉じた。彼の纏う空気がキンッと張り詰めて、胸が締め付けられたように苦しくなる。きっと俺にはわからないことを考えているんだろうけど……怖い。
ただ数秒後、再び目を開けた時には、いつものどおりの優しい雰囲気に戻っていて、咄嗟に詰めてしまっていた息をほぅと吐いた。全身から力を抜くと、アナルから出ていたコードを引っ張られる。
「ふぁ、ん……んっ」
入れられた時のローションが胎内に残っていたからか、それとも腸液が分泌されていたからか、ローターはぬるりと簡単に出ていった。括約筋を通っていく、その一瞬がとても気持ち良くて、腰が震える。
神崎がローションの蓋を開けた。そしてトロリとした液体を掬う。
「それではいっぱい、前立腺をマッサージしてあげますね」
「ん……、……あん」
頷いたら、指が宛てがわれた。反射的にきゅっとアナルを窄めてしまったけれど、ローションのおかげですぐに入ってきた。2本でくぱりと縁を広げられると、それだけで気持ち良くて、下半身が痙攣する。
「んあ、ぁ……はう、……ん、んん」
前立腺を撫でられるたび、快感が全身を駆けていく。
気持ち良い、すごく。ローターやバイブも気持ち良いけど、1番好きなのは、神崎の指だ。
だって、とても優しいから。ゆっくりと円を描くように前立腺を撫でられるのも、やはりゆっくりと押されていき、ふんわり力を抜かれるのも。すごく気持ち良くて、堪らない。
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