10 / 93
第一章 ラバネス半島編
10.セレーネ王妃からの提案!
しおりを挟む
石鹸と香水の件で王城に呼びだされた僕と父上は、謁見の間でライオネル王陛下、セレーネ王妃、フィーネ王女殿下と対面することになった。
セレーネ王妃はニコニコと微笑んで話を続ける。
「それでシオン君、ディルメス侯爵領でお店を開いているみたいだけど、王都でもお店を開いてみない? ブリタニス王国の中心である王都で、石鹸や香水が売っていないとなれば、王都の住人達から抗議を受けることになりかねないわ」
石鹸や香水は既にディルメス侯爵領内に広まるほど売れている。
この調子ならブリタニス王国内に広がるのに、それほど日数もかからないだろう。
そうなればセレーネ王妃が言われるように王都に店を構えたほうがいい。
「王都にお店を持ったら、城を訪問する貴族達や、城で働いている貴族達もきっと商品を買ってくれるはずよ。街の金持ち達もこぞって商品を買うことでしょう。王都のお店も工場も王家で準備するわ。お店や工場の費用は、石鹸と香水を開発した褒美と思って受け取ってね」
「あ……ありがとうござます」
僕は恭しく頭を下げる。
するとセレーネ王妃の隣の豪華な椅子に座るフィーネ王女殿下が声をかけてきた。
「お城の中は仕事をしている大人ばかりだし、私はまだ十歳なので貴族院にも通っていなくて友達がいないの。シオン君、私とお友達になってくれませんか?」
僕より一つ年上なんだな。
年頃的には釣り合ってるかもしれないけど、精神年齢でいえば僕は大人だし……
成人になったら爵位を継げないから、侯爵家の邸を出ていかないといけない。
貴族でなくなるかもしれないのに、王女殿下と友達になってもいいのだろうか?
困惑した視線を向けると、父上は小声で『自由にしなさい』という。
その声に後押しされ、僕はフィーネ王女殿下へニコリと微笑む。
「喜んで」
「では、シオン君はフィーネと呼んでね」
「それはちょっと……」
「それじゃあ、私はシオンと呼ぶから、シオンはフィーネって呼んでね。友達なんだから、これは絶対よ」
「わかりました……フ……フィーネ」
フィーネ王女殿下がにこやかに言う度に、ライオネル王陛下が殺気のこもった視線を向けてくるんですけど……
ライオネル王陛下の謁見を終え、父上と一緒にロンムレス宰相の執務室へ向かう。
部屋の中へ入ると、宰相は長いソファに座り、僕達のために紅茶を用意してくれていた。
「謁見は無事に終わったようだな。それではこちらの用件を話そう。先日、ナブラスト王国の外交官が城を訪れてな。ナブラスト王国の王宮が『ボーン食器』の噂を聞きつけたらしいのだ。それで外交官いわく、ナブラスト王国の王宮にも『ボーン食器』を卸してほしいと言ってきている。それとナブラスト王国の王都ナブラに店を構えないかとも打診してきているのだ」
「ナブラスト王国は、我がブリタニス王国と敵対国ではないか。そのような申し出を受け入れられる訳がないだろう」
「それがな。二つの条件を飲むなら、ブリタニス王国の外交官は停戦してもいいと言っているのだ。それよりも、もっと進展させて同盟を結んでもいいとさえ言っている」
「同盟とは大きく出てきましたな」
話を聞いて父上の表情も段々、険しいモノに変化していく。
は?……『ボーン食器』ってただの真っ白な食器だよね?
このエクストリア世界にはプラスチックが存在しながら、骨を使って似たような商品が作れないかと思っただけなんですけど……
食器によって、国が停戦したり、同盟を組んだりするものなの?
「これは大変重要な案件だ。王宮としてはナブラスト王国と同盟を結ぶのはやぶさかではない。そうなれば有事の際に、トランスベル王国へ戦力を集中させることも可能だからな」
「我が領地も、国境付近で小競り合いが起こる度に出兵しないでよくなる」
「これは千載一遇の機会かもしれん。ライオネル王陛下へ報告し、判断を仰ぐことにはなるが、ここは外交官の話しに乗ってみてもよいのではと考えている」
ロンムレス宰相は神妙な面持ちで大きく頷いた。
ロンムレス宰相と父上の間で話しは進み、王都に『ロンメル商会』の店舗を建てるのは王宮に任せて、ナブラスト王国との交渉が無事に終わり次第、父上と僕はナブラスト王国の王都ナブルへ向かうことになった。
王都の工場については僕がナブラスト王国から戻ってくるまでに建物の建設だけ進めておくことになった。
僕と父上は王城から戻り、別邸の姿見のゲートからディルメス侯爵領の邸へと戻った。
その翌日、執務室で父上と一緒に旅の予定を決めていると、扉が開いてアレン兄上が姿を現した。
「父上とシオンだけナブラスト王国へ行くのはズルい気がします。私も一緒に同行してはダメなんですか?」
「アレンには勉学があるだろう」
「でも、父上がナブラスト王国へ行っても、父上は交渉事などで色々と多忙になるはずです。その間、九歳のシオンを一人にしておくんですか」
「その心配はありません。シオン様の行く所、私が必ず同行いたしますから」
父上に詰め寄るアレン兄上様の隣に、いつの間にかレミリアが立っていた。
そして二人は顔を近づけて、どちらが旅に同行するかいがみあう。
うーん、面倒だから、二人とも一緒に旅に行けばいいのに。
旅は人数が多いほうが楽しいはずだよ……きっと……わかんないけど……
セレーネ王妃はニコニコと微笑んで話を続ける。
「それでシオン君、ディルメス侯爵領でお店を開いているみたいだけど、王都でもお店を開いてみない? ブリタニス王国の中心である王都で、石鹸や香水が売っていないとなれば、王都の住人達から抗議を受けることになりかねないわ」
石鹸や香水は既にディルメス侯爵領内に広まるほど売れている。
この調子ならブリタニス王国内に広がるのに、それほど日数もかからないだろう。
そうなればセレーネ王妃が言われるように王都に店を構えたほうがいい。
「王都にお店を持ったら、城を訪問する貴族達や、城で働いている貴族達もきっと商品を買ってくれるはずよ。街の金持ち達もこぞって商品を買うことでしょう。王都のお店も工場も王家で準備するわ。お店や工場の費用は、石鹸と香水を開発した褒美と思って受け取ってね」
「あ……ありがとうござます」
僕は恭しく頭を下げる。
するとセレーネ王妃の隣の豪華な椅子に座るフィーネ王女殿下が声をかけてきた。
「お城の中は仕事をしている大人ばかりだし、私はまだ十歳なので貴族院にも通っていなくて友達がいないの。シオン君、私とお友達になってくれませんか?」
僕より一つ年上なんだな。
年頃的には釣り合ってるかもしれないけど、精神年齢でいえば僕は大人だし……
成人になったら爵位を継げないから、侯爵家の邸を出ていかないといけない。
貴族でなくなるかもしれないのに、王女殿下と友達になってもいいのだろうか?
困惑した視線を向けると、父上は小声で『自由にしなさい』という。
その声に後押しされ、僕はフィーネ王女殿下へニコリと微笑む。
「喜んで」
「では、シオン君はフィーネと呼んでね」
「それはちょっと……」
「それじゃあ、私はシオンと呼ぶから、シオンはフィーネって呼んでね。友達なんだから、これは絶対よ」
「わかりました……フ……フィーネ」
フィーネ王女殿下がにこやかに言う度に、ライオネル王陛下が殺気のこもった視線を向けてくるんですけど……
ライオネル王陛下の謁見を終え、父上と一緒にロンムレス宰相の執務室へ向かう。
部屋の中へ入ると、宰相は長いソファに座り、僕達のために紅茶を用意してくれていた。
「謁見は無事に終わったようだな。それではこちらの用件を話そう。先日、ナブラスト王国の外交官が城を訪れてな。ナブラスト王国の王宮が『ボーン食器』の噂を聞きつけたらしいのだ。それで外交官いわく、ナブラスト王国の王宮にも『ボーン食器』を卸してほしいと言ってきている。それとナブラスト王国の王都ナブラに店を構えないかとも打診してきているのだ」
「ナブラスト王国は、我がブリタニス王国と敵対国ではないか。そのような申し出を受け入れられる訳がないだろう」
「それがな。二つの条件を飲むなら、ブリタニス王国の外交官は停戦してもいいと言っているのだ。それよりも、もっと進展させて同盟を結んでもいいとさえ言っている」
「同盟とは大きく出てきましたな」
話を聞いて父上の表情も段々、険しいモノに変化していく。
は?……『ボーン食器』ってただの真っ白な食器だよね?
このエクストリア世界にはプラスチックが存在しながら、骨を使って似たような商品が作れないかと思っただけなんですけど……
食器によって、国が停戦したり、同盟を組んだりするものなの?
「これは大変重要な案件だ。王宮としてはナブラスト王国と同盟を結ぶのはやぶさかではない。そうなれば有事の際に、トランスベル王国へ戦力を集中させることも可能だからな」
「我が領地も、国境付近で小競り合いが起こる度に出兵しないでよくなる」
「これは千載一遇の機会かもしれん。ライオネル王陛下へ報告し、判断を仰ぐことにはなるが、ここは外交官の話しに乗ってみてもよいのではと考えている」
ロンムレス宰相は神妙な面持ちで大きく頷いた。
ロンムレス宰相と父上の間で話しは進み、王都に『ロンメル商会』の店舗を建てるのは王宮に任せて、ナブラスト王国との交渉が無事に終わり次第、父上と僕はナブラスト王国の王都ナブルへ向かうことになった。
王都の工場については僕がナブラスト王国から戻ってくるまでに建物の建設だけ進めておくことになった。
僕と父上は王城から戻り、別邸の姿見のゲートからディルメス侯爵領の邸へと戻った。
その翌日、執務室で父上と一緒に旅の予定を決めていると、扉が開いてアレン兄上が姿を現した。
「父上とシオンだけナブラスト王国へ行くのはズルい気がします。私も一緒に同行してはダメなんですか?」
「アレンには勉学があるだろう」
「でも、父上がナブラスト王国へ行っても、父上は交渉事などで色々と多忙になるはずです。その間、九歳のシオンを一人にしておくんですか」
「その心配はありません。シオン様の行く所、私が必ず同行いたしますから」
父上に詰め寄るアレン兄上様の隣に、いつの間にかレミリアが立っていた。
そして二人は顔を近づけて、どちらが旅に同行するかいがみあう。
うーん、面倒だから、二人とも一緒に旅に行けばいいのに。
旅は人数が多いほうが楽しいはずだよ……きっと……わかんないけど……
応援ありがとうございます!
2,273
お気に入りに追加
4,190
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる