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第一章 ラバネス半島編
11.ナブラスト王国へ行こう!
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王陛下と謁見してから一ヵ月が過ぎた頃、ロンムレス宰相からの伝令の使者が、封書を届けるため王都の別邸に訪れた。
手紙の内容は、ライオネス王陛下の承認を得たので、ナブラスト王国の王都へ向かうようにという指示で、封書の中にはナブラスト王国の王宮からの招待状も入っていた。
ブリタニス王国の東側に王都ブルタスはあり、海から船を使ってナブラスト王国の王都に近い港町まで移動することができる。
だから僕、父上、レミリアの三人は王都ブルタスの別邸から馬車に乗り込み港へ向かった。
アレン兄上は貴族学院に通わなければならないので、王都の別邸に残っている。
決してレイミアとの言い争いに負けたわけではないからね。
漁港に到着した僕達は、馬車を預けて三本マストの帆船に乗り込んだ。
エクストリア世界ではガレー船が主流だったけど、最近になって帆船が開発されたらしい。
この三本マストの帆船は王家専用の船だったりする。
その待遇の良さに驚くばかりだけど……後で何か請求されたりしないよね……
船長がいうには、わざわざ僕達をナブラスト王国の王都へ送るためだけに出向の準備をしたらしい。
よって乗客は僕達三人だけだった。
港を出て三時間ほどが経過し、海を見ているのに飽きた僕は船室で休んでいた。
すると船室の扉が静かに開いて、フィーネ王女殿下が飛び込んできた。
「シオン、会いにきたわよ」
「えーー、どうして王女殿下がこんな場所に」
「私のことはフィーネって呼んでと言ったでしょ」
そう言って、フィーネはプリプリと頬を膨らませる。
ちょっとフィーネは美少女だから、怒った表情も可愛いんだけに対処に困る。
「フィーネ様、お立ちになっていたら、触れの揺れで転ぶことがありますので、シオン様の隣にお座りください」
「そう、ありがとう」
座っていたレイミアが立ち上がり、フィーネがピョンと僕の隣に座る。
それを見てレイミアは微笑むと、『フィーネ様の伴の者を探してきます』と言って部屋を出ていった。
いきなりフィーネと二人っきりにされても困るんだけど……
「どうやって船に乗り込んだの?」
「城の中に船へ運ぶ荷が置いてあったの。だからその荷の中に隠れて来たのよ」
「ということは……お伴の人は誰もいないということじゃ……」
「私、城を抜け出すのが得意なの」
そう言って、フィーネはニッコリと微笑む。
これはとんでもないお姫様に気に入られてしまったぞ。
どうやって、この場を乗り切ろうか考えていると、バタンと大きな音をたてて扉が開いた。
そして、鎧を着こんだイケメンが疲れた表情で現れる。
「フィーネ様、やはり船に乗っておられたのですね。城で見失ったんで、念のため船に乗り込んでよかった」
「どうしてエドワードがここにいるのよ。せっかく撒いたと思ったのに」
「今までどれだけフィーネ様には苦汁を飲まされてきたことか。私だって少しは学習しますよ」
エドワードさんから話しを聞いてみると、彼はフィーネ専属の近衛騎士らしい。
しかし専属になってから二年、おてんばなフィーネがいつも監視の目をかいくぐり、王都へ出かけていくので、いつもフィーネの代わりにロンムレス宰相から叱責を受けていたとか。
なるほど……エドワードさんがこの船に乗ったのも、この二年間のフィーネとの追いかけっこの経験と研ぎ澄まされた勘に寄るものか。
めちゃくちゃ苦労してるんだろうな……お疲れ様です。
エドワードさんの後ろからレミリアがフィーネに声をかける。
「お伴の人がいて良かったですね」
「まだ何にも遊んでないわ」
「さあ、フィーネ様、私達は別の船室です。ご迷惑になりますから帰りますよ」
「えーー、ヤダーー!」
エドワードさんはフィーネの腕を掴んで強引に部屋から出ていった。
その二人の姿を見届け、僕の隣に座ってレミリアは嬉しそうに微笑む。
「やっと落ち着いてけますね。私が添い寝してあげますから、ゆっくりと休んでください」
「いやいや……急に父上と話したくなったな。僕、ちょっと父上の様子を見てくる」
そう言って、僕は逃げるように船室から飛び出した。
もう体は九歳だけど心は大人なんだから、レミリアに添い寝されるとドキドキして眠れないじゃないか。
帆船は太陽が沈む前まで運航を続け、夜には港町に停泊して朝になるのを待つ。
そして次の日の昼前に、ナブラスト王国の港街ダキアに到着した。
帆船は僕達が戻ってくるまで出航しないで、ダキアの港に停泊してくれるらしい。
フィーネは船に残るのかと思ったけど、なぜか僕達と一緒にナブラスト王国の王都ナブルへ向かうことになった。
どうやらフィーネのわがままに、エドワードさんが根負けしたようだ。
ダキアの街を出発して五時間ほど経った頃、ちょっとした山岳地帯へを通ることになった。
凸凹に荒れた街道を馬車が進んでいると、周囲の樹々が騒めきだし、遠くのほうから魔獣の遠吠えが聞こえ始めた。
そのことに気づいたレイミアが目を細めて警戒の声をあげる。
「濃い魔獣の気配がします。エドワード様はフィーネ様をお守りください。シオン様はダイナス様の近くを離れないように」
レイミアはすっと立ち上がると、銀色の長い髪を後ろで一つにまとめて、馬車の外へと消えていった。
手紙の内容は、ライオネス王陛下の承認を得たので、ナブラスト王国の王都へ向かうようにという指示で、封書の中にはナブラスト王国の王宮からの招待状も入っていた。
ブリタニス王国の東側に王都ブルタスはあり、海から船を使ってナブラスト王国の王都に近い港町まで移動することができる。
だから僕、父上、レミリアの三人は王都ブルタスの別邸から馬車に乗り込み港へ向かった。
アレン兄上は貴族学院に通わなければならないので、王都の別邸に残っている。
決してレイミアとの言い争いに負けたわけではないからね。
漁港に到着した僕達は、馬車を預けて三本マストの帆船に乗り込んだ。
エクストリア世界ではガレー船が主流だったけど、最近になって帆船が開発されたらしい。
この三本マストの帆船は王家専用の船だったりする。
その待遇の良さに驚くばかりだけど……後で何か請求されたりしないよね……
船長がいうには、わざわざ僕達をナブラスト王国の王都へ送るためだけに出向の準備をしたらしい。
よって乗客は僕達三人だけだった。
港を出て三時間ほどが経過し、海を見ているのに飽きた僕は船室で休んでいた。
すると船室の扉が静かに開いて、フィーネ王女殿下が飛び込んできた。
「シオン、会いにきたわよ」
「えーー、どうして王女殿下がこんな場所に」
「私のことはフィーネって呼んでと言ったでしょ」
そう言って、フィーネはプリプリと頬を膨らませる。
ちょっとフィーネは美少女だから、怒った表情も可愛いんだけに対処に困る。
「フィーネ様、お立ちになっていたら、触れの揺れで転ぶことがありますので、シオン様の隣にお座りください」
「そう、ありがとう」
座っていたレイミアが立ち上がり、フィーネがピョンと僕の隣に座る。
それを見てレイミアは微笑むと、『フィーネ様の伴の者を探してきます』と言って部屋を出ていった。
いきなりフィーネと二人っきりにされても困るんだけど……
「どうやって船に乗り込んだの?」
「城の中に船へ運ぶ荷が置いてあったの。だからその荷の中に隠れて来たのよ」
「ということは……お伴の人は誰もいないということじゃ……」
「私、城を抜け出すのが得意なの」
そう言って、フィーネはニッコリと微笑む。
これはとんでもないお姫様に気に入られてしまったぞ。
どうやって、この場を乗り切ろうか考えていると、バタンと大きな音をたてて扉が開いた。
そして、鎧を着こんだイケメンが疲れた表情で現れる。
「フィーネ様、やはり船に乗っておられたのですね。城で見失ったんで、念のため船に乗り込んでよかった」
「どうしてエドワードがここにいるのよ。せっかく撒いたと思ったのに」
「今までどれだけフィーネ様には苦汁を飲まされてきたことか。私だって少しは学習しますよ」
エドワードさんから話しを聞いてみると、彼はフィーネ専属の近衛騎士らしい。
しかし専属になってから二年、おてんばなフィーネがいつも監視の目をかいくぐり、王都へ出かけていくので、いつもフィーネの代わりにロンムレス宰相から叱責を受けていたとか。
なるほど……エドワードさんがこの船に乗ったのも、この二年間のフィーネとの追いかけっこの経験と研ぎ澄まされた勘に寄るものか。
めちゃくちゃ苦労してるんだろうな……お疲れ様です。
エドワードさんの後ろからレミリアがフィーネに声をかける。
「お伴の人がいて良かったですね」
「まだ何にも遊んでないわ」
「さあ、フィーネ様、私達は別の船室です。ご迷惑になりますから帰りますよ」
「えーー、ヤダーー!」
エドワードさんはフィーネの腕を掴んで強引に部屋から出ていった。
その二人の姿を見届け、僕の隣に座ってレミリアは嬉しそうに微笑む。
「やっと落ち着いてけますね。私が添い寝してあげますから、ゆっくりと休んでください」
「いやいや……急に父上と話したくなったな。僕、ちょっと父上の様子を見てくる」
そう言って、僕は逃げるように船室から飛び出した。
もう体は九歳だけど心は大人なんだから、レミリアに添い寝されるとドキドキして眠れないじゃないか。
帆船は太陽が沈む前まで運航を続け、夜には港町に停泊して朝になるのを待つ。
そして次の日の昼前に、ナブラスト王国の港街ダキアに到着した。
帆船は僕達が戻ってくるまで出航しないで、ダキアの港に停泊してくれるらしい。
フィーネは船に残るのかと思ったけど、なぜか僕達と一緒にナブラスト王国の王都ナブルへ向かうことになった。
どうやらフィーネのわがままに、エドワードさんが根負けしたようだ。
ダキアの街を出発して五時間ほど経った頃、ちょっとした山岳地帯へを通ることになった。
凸凹に荒れた街道を馬車が進んでいると、周囲の樹々が騒めきだし、遠くのほうから魔獣の遠吠えが聞こえ始めた。
そのことに気づいたレイミアが目を細めて警戒の声をあげる。
「濃い魔獣の気配がします。エドワード様はフィーネ様をお守りください。シオン様はダイナス様の近くを離れないように」
レイミアはすっと立ち上がると、銀色の長い髪を後ろで一つにまとめて、馬車の外へと消えていった。
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