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第一章
23話
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ジェイくんのいる方へ走り去ってしまっていたレオン様が帰って来たかと思えば片手にジェイくんを連れていた。引っ張って来たみたいなので見かけによらずレオン様は力が強いらしい。
「ジェイくんとお友達になりました!」
バッとこちらを向いたレオン様は元気いっぱいの笑顔で言った。一方のジェイくんは少し困ったような顔をしている。たぶんジェイくんが貴族のレオン様相手に強く出られないうちにレオン様のペースにのまれて事が進んだのだろう。でもお友達が増えるのは悪いことではないし、お花が好きなジェイくんと可愛らしいもの全般が好きなレオン様はもしかしたら波長が合うかもしれない。
「レオン様、無理に言ったのではないですか?お困りになっていますけど……」
私の隣で深くため息をついたカイ様はレオン様にそう言ってジェイくんの方を見るように促した。事実ジェイくんは困っているし視線からSOSを感じなくもないけれど……。
「あの、僕とお友達になるの嫌ですか?」
ジェイくんが困っているのが分かったらしいレオン様はジェイくんを少し潤んだ瞳で見つめながらそう言った。ちなみにジェイくんの方が背が高いのでもれなく上目遣いだ。私がこれをされたら何でも言うことを聞いてしまうだろう。
「っ……嫌、ではないです……」
それはジェイくんも同じだったらしい。その返事を聞いてからレオン様はものすごく上機嫌になって可愛らしい笑顔でお帰りになった。カイ様は少し呆れたような目をしていた。
「ジェイくん、大丈夫?」
お二人がお帰りになった後私はうなだれていたジェイくんに声をかけた。
「いや、ダメだろ」
「え?」
「もしレオン様と話す事が増えたら絶対俺はボロが出ちまうし、そしたら……」
小さな声で独り言のように何か言っていたジェイくんは言葉途切れた後に私を見た。それから「俺、頑張るわ」と言って去っていった。そんなジェイくんを私のそばにいたラナは同情するような視線で見ていた。
******************
「……ということがありまして……」
久しぶりに王宮から早くお帰りになったお兄様とお茶をしながらその日にあったことを話した。
「なるほど。つまり私の天使は男といる時間が多すぎる、ということだね」
「え?お兄様、私がお話ししたのそういうことでは……」
お茶を一口飲んで深く息を吐きながらそう言ったお兄様の言葉に私は思わず突っ込みを入れてしまった。するとお兄様は私の方を見て優しく微笑んだ。
「私の天使、君は友人に性別は関係あると思うかい?」
「……?いいえ。関係あるのは人柄だけだと思います」
「確かにそういう考え方もある。だが君の場合はそれだけでは済まないんだよ」
「どういうことですか?」
「君にはあの腹立たしい婚約者がいるだろう?」
「……ルークベルト殿下のことですか?」
「ああ。奴がいる限り君にはある程度の制限がつくんだ。その一つが友人だよ」
「…………あ!」
「分かったかい?」
「はい。ありがとうございます、お兄様」
お兄様に言われてやっと気づいた。貴族の世界では婚約者ではない異性と親しくしすぎるのはよろしくないことだ。しかも私は生き延びることができたなら未来の王妃。そんな人間がそういったタブーを犯すのはなおよろしくない。つまりレオン様やカイ様と毎日のように会うのはよろしくないことなのだ。こんな基本的なことが頭から抜けていたなんて情けないわね……。
「……ですがお兄様、私はどうすればいいでしょうか?」
「どうすれば、とは?」
「仲良くなったお友達といきなり疎遠になる、というのは寂しいですし、心苦しいです」
「会う回数を減らすことだけはした方がいいと思うよ。流石に毎日だと多すぎるからね。あとはもう少し同性の友人を作った方がいい。今はラナだけなんだろう?」
「はい。ですがどうやって作れば」
「一週間後くらいにあるお茶会に君が招待されている。今までは体調を理由に断ってきたけれど今の君なら参加しても大丈夫だろう。もちろん、無理は禁物だけどね」
「お茶会、ですか……。というか私その招待知らな」
「そ、そろそろ夕食の時間だね。行こうか」
それから夕食のときにもお帰りになったお父様とお話をすると、お父様はお兄様に大賛成だったので私はお茶会に参加することになった。それからレオン様とカイ様とは会う頻度を減らさなければいけない。お兄様とも相談してジェイくんと同じ週に一回までには減らすことになった。あとはそれをお二人に相談するのみ。レオン様とジェイくんがお友達になったことだし、三人の来る日を重ねてもいいかもしれない。会う回数が減るのは寂しいけれど、その分女の子のお友達を頑張って作りましょう!
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
<補足>
・お兄様の思惑は、妹が男といる時間を少なくしたい+妹の外聞が悪くならないようにしたい、というものです。
・フィリアさんの頭の中では殿下の呼び方はもうルカルド様に言われた通りに「ルーク様」になっているのですがお兄様の前なので「ルークベルト殿下」になりました。
⚠︎最近展開の大まかな方向は決まっているのですが細かいところでものすごく迷いながら書いているので更新が本当に遅くなっています。申し訳ございません。
「ジェイくんとお友達になりました!」
バッとこちらを向いたレオン様は元気いっぱいの笑顔で言った。一方のジェイくんは少し困ったような顔をしている。たぶんジェイくんが貴族のレオン様相手に強く出られないうちにレオン様のペースにのまれて事が進んだのだろう。でもお友達が増えるのは悪いことではないし、お花が好きなジェイくんと可愛らしいもの全般が好きなレオン様はもしかしたら波長が合うかもしれない。
「レオン様、無理に言ったのではないですか?お困りになっていますけど……」
私の隣で深くため息をついたカイ様はレオン様にそう言ってジェイくんの方を見るように促した。事実ジェイくんは困っているし視線からSOSを感じなくもないけれど……。
「あの、僕とお友達になるの嫌ですか?」
ジェイくんが困っているのが分かったらしいレオン様はジェイくんを少し潤んだ瞳で見つめながらそう言った。ちなみにジェイくんの方が背が高いのでもれなく上目遣いだ。私がこれをされたら何でも言うことを聞いてしまうだろう。
「っ……嫌、ではないです……」
それはジェイくんも同じだったらしい。その返事を聞いてからレオン様はものすごく上機嫌になって可愛らしい笑顔でお帰りになった。カイ様は少し呆れたような目をしていた。
「ジェイくん、大丈夫?」
お二人がお帰りになった後私はうなだれていたジェイくんに声をかけた。
「いや、ダメだろ」
「え?」
「もしレオン様と話す事が増えたら絶対俺はボロが出ちまうし、そしたら……」
小さな声で独り言のように何か言っていたジェイくんは言葉途切れた後に私を見た。それから「俺、頑張るわ」と言って去っていった。そんなジェイくんを私のそばにいたラナは同情するような視線で見ていた。
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「……ということがありまして……」
久しぶりに王宮から早くお帰りになったお兄様とお茶をしながらその日にあったことを話した。
「なるほど。つまり私の天使は男といる時間が多すぎる、ということだね」
「え?お兄様、私がお話ししたのそういうことでは……」
お茶を一口飲んで深く息を吐きながらそう言ったお兄様の言葉に私は思わず突っ込みを入れてしまった。するとお兄様は私の方を見て優しく微笑んだ。
「私の天使、君は友人に性別は関係あると思うかい?」
「……?いいえ。関係あるのは人柄だけだと思います」
「確かにそういう考え方もある。だが君の場合はそれだけでは済まないんだよ」
「どういうことですか?」
「君にはあの腹立たしい婚約者がいるだろう?」
「……ルークベルト殿下のことですか?」
「ああ。奴がいる限り君にはある程度の制限がつくんだ。その一つが友人だよ」
「…………あ!」
「分かったかい?」
「はい。ありがとうございます、お兄様」
お兄様に言われてやっと気づいた。貴族の世界では婚約者ではない異性と親しくしすぎるのはよろしくないことだ。しかも私は生き延びることができたなら未来の王妃。そんな人間がそういったタブーを犯すのはなおよろしくない。つまりレオン様やカイ様と毎日のように会うのはよろしくないことなのだ。こんな基本的なことが頭から抜けていたなんて情けないわね……。
「……ですがお兄様、私はどうすればいいでしょうか?」
「どうすれば、とは?」
「仲良くなったお友達といきなり疎遠になる、というのは寂しいですし、心苦しいです」
「会う回数を減らすことだけはした方がいいと思うよ。流石に毎日だと多すぎるからね。あとはもう少し同性の友人を作った方がいい。今はラナだけなんだろう?」
「はい。ですがどうやって作れば」
「一週間後くらいにあるお茶会に君が招待されている。今までは体調を理由に断ってきたけれど今の君なら参加しても大丈夫だろう。もちろん、無理は禁物だけどね」
「お茶会、ですか……。というか私その招待知らな」
「そ、そろそろ夕食の時間だね。行こうか」
それから夕食のときにもお帰りになったお父様とお話をすると、お父様はお兄様に大賛成だったので私はお茶会に参加することになった。それからレオン様とカイ様とは会う頻度を減らさなければいけない。お兄様とも相談してジェイくんと同じ週に一回までには減らすことになった。あとはそれをお二人に相談するのみ。レオン様とジェイくんがお友達になったことだし、三人の来る日を重ねてもいいかもしれない。会う回数が減るのは寂しいけれど、その分女の子のお友達を頑張って作りましょう!
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<補足>
・お兄様の思惑は、妹が男といる時間を少なくしたい+妹の外聞が悪くならないようにしたい、というものです。
・フィリアさんの頭の中では殿下の呼び方はもうルカルド様に言われた通りに「ルーク様」になっているのですがお兄様の前なので「ルークベルト殿下」になりました。
⚠︎最近展開の大まかな方向は決まっているのですが細かいところでものすごく迷いながら書いているので更新が本当に遅くなっています。申し訳ございません。
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