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神誓いの儀式
8☆不安と思惑と覚悟
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儀式には陰陽寮長と古参の職員と高良と皇太子殿下がいらしていた。
「陛下も禊の時期ですしね。僕が陛下の代わりに見届け役として来ました。よろしくお願いします」
恐れ多くも頭を下げて礼をなされた。
「殿下がいらしたら、威津那の闇の力も抑えられますし、何より次代の祝皇になられるのですから、良い経験になりますよ」
すでに晴綛は人の姿になっていた。
「ところで、神の依代は一生神の依代なのでしょうか……?」
威津那は晴綛に尋ねる。
「いや、若き後継者がいれば引き継ぐことができる、神の化身にならなければな……」
「依代と化身は違うのですか?」
「一度死に、『いきかえった』時に神の化身になる。
神の具現化した肉体になるのだ。
依代は神の力のみ貸してもらえるな…まぁ、どちらも対して変わらんがな」
と、晴綛は結論づけるが、
「陛下以外に『愛してる』とは言えない契約が死ぬまで続くというだけだな」
なんともないことのように言う。
「僕は依代の方なのですよね?」
とりあえず確認すると、晴綛は頷き、
「新しい依代ができたら言えるから安心しろ。」
晴綛はニカっ!と笑った。
「ワシも、無事依代の任務が終わったら流花に囁きまくるぞ。そして、五人目最後できるかもなぁ」
ひゃっひゃと想像して笑う。
儀式を行う晴綛こそ心身禊をした方が良いと威津那は思う。
「レッドスパイを殲滅しろと言った通り、無茶難題をわざと突きつけた意地悪だが能力者の部隊は、ほぼ壊滅に追いやったお前の信頼と橘を思う気持ちを考慮して無事、神誓いをしてめざめたならば、新年明けて一族職員総出で結婚を祝ってやるからな、頑張れ」
晴綛の言葉にまだ伝え忘れている注意事項に気がついた。
「数時間で終わるものではないのですか?」
威津那は首を傾げる。
「人の世と神の世の時間は違うじゃて、長くて七日眠りから覚めないとも聞いたことがある。その場合は職員交代で威津那が目覚めるのを待つだけじゃ」
そんな長く眠るなんて聞いていない。
本当に依代になるだけの儀式なのだろうか…?と不安になる。
「っ!」
威津那は瞳を痛みで反射で瞼を押さえる。
突然瞳の奥で痛みを感じ、一瞬焔の姿を見た。
(これは、未来か?だが、動きはなく、いつもの気持ち悪い笑い……?)
さらにもっと不安なことが一瞬胸にやどった。
「レッドスパイを壊滅させたとはいえ……黒御足の一族の一番厄介なのがまだ残ってます……」
威津那は深刻な顔をする。
やな予感が拭えない。
「僕の兄の焔が襲撃するかも……」
赤い瞳よりも、感が伝える。
今さら儀式を取りやめてはいけないことだろうか?
と言おうとしたら、
「一層宮中の守りを強化する、安心しろ」
と晴綛はポンポンと威津那の肩を叩き、
「お前の代わりに焔を操り人形にしてやるのも一興じゃ」
と言って小指を見せた。
それは安心させるためだろう。
晴綛は希代の陰陽寮長。
万が一のことも考えて行動しているのだ。
晴綛の強さは威津那が一番知っている。
けれど、焔のこともよく知っているのだ……
(あいつはこの国を陛下を陥れるためならきっとなんでもやる…手を下す……)
いや、あいつを霊的に生まれ変わらせるための力を得るために…陛下をお守りする為の神の力を威津那は依代として貸していただく為に更に決意して儀式のために褥に入り眠りについた。
陰陽寮長の晴綛は臨時の掌典職員も兼ねているので秘儀を知る。
それは妻の流花を神の依代にした秘儀でもあった。
高良はその儀式を自分の代でするかはわからないがよく見て忘れないようにする。
威津那の体の上にハルの神があぐらをかき瞳を閉じている。
威津那の魂と繋がろうとしているのだろう。
瞳が開いた時、儀式は完成だ。
もし、神誓いがうまくいかなければ、ハルの神は威津那の体ごと消滅させてしまうかもしれない。
それほど厳しさと激しさ…そして、我が国を憂う慈悲深さを持ち合わせた神だと審神者の晴綛は見極める。
「力強い…神ですね……」
殿下は神の姿をはっきりと見る事が出来た。
「ですな。国一つ消すことすら簡単にできるほどの神です。その神は威津那をこの世に宿命づけた…」
「何のために…?」
殿下は薄々感じていることを思わず言霊に出してしまった。
晴綛はニヤリと苦笑して、
「将来、祝皇になられる、殿下の対となるために……」
「………うん…そうなんだね……」
晴綛の言葉はハルの神が伝えたものだと殿下は感じて改めて『世を継ぐ』重さを覚悟なさった。
「陛下も禊の時期ですしね。僕が陛下の代わりに見届け役として来ました。よろしくお願いします」
恐れ多くも頭を下げて礼をなされた。
「殿下がいらしたら、威津那の闇の力も抑えられますし、何より次代の祝皇になられるのですから、良い経験になりますよ」
すでに晴綛は人の姿になっていた。
「ところで、神の依代は一生神の依代なのでしょうか……?」
威津那は晴綛に尋ねる。
「いや、若き後継者がいれば引き継ぐことができる、神の化身にならなければな……」
「依代と化身は違うのですか?」
「一度死に、『いきかえった』時に神の化身になる。
神の具現化した肉体になるのだ。
依代は神の力のみ貸してもらえるな…まぁ、どちらも対して変わらんがな」
と、晴綛は結論づけるが、
「陛下以外に『愛してる』とは言えない契約が死ぬまで続くというだけだな」
なんともないことのように言う。
「僕は依代の方なのですよね?」
とりあえず確認すると、晴綛は頷き、
「新しい依代ができたら言えるから安心しろ。」
晴綛はニカっ!と笑った。
「ワシも、無事依代の任務が終わったら流花に囁きまくるぞ。そして、五人目最後できるかもなぁ」
ひゃっひゃと想像して笑う。
儀式を行う晴綛こそ心身禊をした方が良いと威津那は思う。
「レッドスパイを殲滅しろと言った通り、無茶難題をわざと突きつけた意地悪だが能力者の部隊は、ほぼ壊滅に追いやったお前の信頼と橘を思う気持ちを考慮して無事、神誓いをしてめざめたならば、新年明けて一族職員総出で結婚を祝ってやるからな、頑張れ」
晴綛の言葉にまだ伝え忘れている注意事項に気がついた。
「数時間で終わるものではないのですか?」
威津那は首を傾げる。
「人の世と神の世の時間は違うじゃて、長くて七日眠りから覚めないとも聞いたことがある。その場合は職員交代で威津那が目覚めるのを待つだけじゃ」
そんな長く眠るなんて聞いていない。
本当に依代になるだけの儀式なのだろうか…?と不安になる。
「っ!」
威津那は瞳を痛みで反射で瞼を押さえる。
突然瞳の奥で痛みを感じ、一瞬焔の姿を見た。
(これは、未来か?だが、動きはなく、いつもの気持ち悪い笑い……?)
さらにもっと不安なことが一瞬胸にやどった。
「レッドスパイを壊滅させたとはいえ……黒御足の一族の一番厄介なのがまだ残ってます……」
威津那は深刻な顔をする。
やな予感が拭えない。
「僕の兄の焔が襲撃するかも……」
赤い瞳よりも、感が伝える。
今さら儀式を取りやめてはいけないことだろうか?
と言おうとしたら、
「一層宮中の守りを強化する、安心しろ」
と晴綛はポンポンと威津那の肩を叩き、
「お前の代わりに焔を操り人形にしてやるのも一興じゃ」
と言って小指を見せた。
それは安心させるためだろう。
晴綛は希代の陰陽寮長。
万が一のことも考えて行動しているのだ。
晴綛の強さは威津那が一番知っている。
けれど、焔のこともよく知っているのだ……
(あいつはこの国を陛下を陥れるためならきっとなんでもやる…手を下す……)
いや、あいつを霊的に生まれ変わらせるための力を得るために…陛下をお守りする為の神の力を威津那は依代として貸していただく為に更に決意して儀式のために褥に入り眠りについた。
陰陽寮長の晴綛は臨時の掌典職員も兼ねているので秘儀を知る。
それは妻の流花を神の依代にした秘儀でもあった。
高良はその儀式を自分の代でするかはわからないがよく見て忘れないようにする。
威津那の体の上にハルの神があぐらをかき瞳を閉じている。
威津那の魂と繋がろうとしているのだろう。
瞳が開いた時、儀式は完成だ。
もし、神誓いがうまくいかなければ、ハルの神は威津那の体ごと消滅させてしまうかもしれない。
それほど厳しさと激しさ…そして、我が国を憂う慈悲深さを持ち合わせた神だと審神者の晴綛は見極める。
「力強い…神ですね……」
殿下は神の姿をはっきりと見る事が出来た。
「ですな。国一つ消すことすら簡単にできるほどの神です。その神は威津那をこの世に宿命づけた…」
「何のために…?」
殿下は薄々感じていることを思わず言霊に出してしまった。
晴綛はニヤリと苦笑して、
「将来、祝皇になられる、殿下の対となるために……」
「………うん…そうなんだね……」
晴綛の言葉はハルの神が伝えたものだと殿下は感じて改めて『世を継ぐ』重さを覚悟なさった。
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