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神誓いの儀式
9☆神誓い
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威津那は目が覚めると黄金に輝く雲海の上にいた。
そして、神棚のような門が目の前に立っていた。
淡く黄金に輝く雲と門以外何もない。
世界は明るく白く照らし清らかな清々しい朝の空気だ。
ここは神の座す世界……あの門は入口だという事が分かる。
呪詛で穢れた身なのにこんな清らかな所に来られた事が奇跡に感じる。
《それは魂の穢れがないからよ…》
男性の美声が響くように頭上から聞こえた。
声の方を見ると大きな男神がいた。
晴綛に似ていると思う。
《晴綛は私の分御霊だからな。似ているのも当然だ。私の力を貸さなくても役目を果たすことのできる優秀なやつよ》
分御霊ということは自分で自分を褒めていることになっている。
神も人間らしいところがあると威津那は苦笑するが……ハッとして、
「……考えている事が分かるのですか?」
《神だからな。それにこの世界は思考も心も筒抜けだ》
ハルの神はニヤリと意地悪げに笑う。
「嘘偽りは一切隠せない…と言う事ですね……」
威津那はうーんと考える。
自分の闇の部分全てみんなにバレてしまって、心にやましいことは無い。
むしろ、香茂家は心が筒抜けだったので気負うことも無くなっていた。
無というわけでは無いけれど……
これが魂を心を浄化させると言う事か?と思う。
だから、香茂家に浄化の部屋があって、みんな意地悪にニヤニヤして考えてる事をのぞいていたなんて!無自覚に恐ろしすぎる一族だ。
《香茂家は特殊だからの、異界に近く血筋はこの星以外の神の血が少し入ってるからな…元は阿部野の血筋だったのが入れ替わって今に至るな。阿部野は阿部野の役割があるのだ》
ハルの神は説明した。
異星人…の血が流れてるから人の心や考えさらには気を見る事ができるのかと納得する。
《お前らの黒御足も特殊な古来の神の血筋…宿命を変える力を持つ》
「はい……いつどのように使えるかはわからないですが…」
(いや、橘が白狐になる宿命を変えたい……)
それは、この神誓いの場では不謹慎か……と口元を押さえて焦って神を見上げる。
ハルの神は眉を一瞬ピクリと上げて威津那をじっと見る。
怒っているようだと威津那は感じる。
《…………まぁ、その方が御代に障りがないの》
常に考えていた強い思いにハルの神は返事する。
「陛下のためじゃなくてもいいのですか?」
威津那は馬鹿正直に聞いてしまう。考えても同じなら支障はないだろう。
威津那の天然の行動でもあるけれど……
《お前がすることは陛下の宿命を変えるのではなく、陛下をお守りするための神誓いだ…》
たしかに陛下の宿命を変える時は命の危機を回避させるために使いたいと思うが神誓いをしてハルの神の力で守れば寿命以外変える必要はない。
《橘はお前をここまで導くための糧にもなった。》
たしかに橘がいたから穢れは払われた、だが糧という言葉に威津那はムッとする。
更にハルの神は腕を組み威津那を見下ろす…いや、見下すような視線だ。
『お前の恋する女…橘が陛下を裏切るときが来たら殺せるか?』
………橘はそんなことしない………
橘を糧に威津那に質問をハルの神はわざとしている。
そして、威津那の忠義心を試している……。
これは神誓いのための試練だと気づく。
《万が一、橘が意識を操られて、陛下の命を奪うような事があったら……お前は橘の命を消す事ができるか?》
威津那の脳裏にその時の光景が広がる。
これはハルの神がその時の映像を送っている。
そんなことになったら、あの橘は心魂が壊れてしまうだろう….
橘の心を魂を穢す前に自らの手で……
もう考えることは神に伝わる。
仮にとしてもどう考えても、陛下の命も橘を守るためにもこの手を赤く染めることを躊躇わない冷徹さは黒御足の血筋のせいだと思う。
……後で後悔することになっても……
『その瞬時の冷徹さが必要なのだ』
ハルの神は人としてあっていけないことなのに満足気だ。
ここは何もかも筒抜け魂だけの世界嘘偽り誤魔化しが効かない……本質本心だけが剥き出しになる神の世界なのだ……
《橘の肉体に溺れる前でよかったの……》
ハルの神は言う。
《男は女の肉体に溺れるものだからな。忠義も忠誠も、冷徹な思考、魂をも縛るほどにな……》
肉体では未だ結ばれなくても、妻にしようと思って幸せになろうとしていることは変わらない。
そして、陛下への忠誠も変わらないと威津那は強く思う。
《まぁ、それが人としての理だ。
いや、神とて妻はかけがえなく愛おしい……》
最高神の親神の経緯を思えばハルの神は言葉を訂正する。
「神誓いはこれで終わりですか?」
威津那は案外あっさりしていると思う。
ハルの神は,威津那と同じ身丈になると、晴綛の風貌から陛下の風貌に変わり、威津那は緊張する。
《ただし、われがお前に力を貸す代償に、陛下以外に【愛している】と愛の言霊を告げるでないぞ……?
一言でもいとおしい女に向かい言おうものなら一瞬で死ぬ。
それが陛下のために尽くす力を与える鎖だ。できるか?できなければこの場でお前を消す》
陛下のご尊顔、声で迫られて、ハルの神だとわかっていても恐れ多い。神自体畏れ多いのだが威津那は顔を真っ赤にして焦り、
「いや、そんな、陛下にもそんな、言霊言えませんっ!」
震えながら土下座した。
威津那のその態度にハルの神は満足気だ。
(橘にも軽々しく愛してると言うことを恥ずかしくて言えないのに……陛下にいった時点で泡吹いて恥ずかし死にする。確実に後悔というか恥ずかし死にするっ!)
《そういうところ気に入った。》
ハルの神は姿を元に戻し、
《さぁ、誓え、陛下に愛の言霊を》
ハルの神の姿なら言える。
【陛下を魂から尊敬し、愛しております】
威津那は偽りなき言霊で神誓いをした。
《良かろう、我の力を貸してやろう…良き働きをし、陛下のために力を振るうが良い…良き陛下の御代になるために……》
そして、神棚のような門が目の前に立っていた。
淡く黄金に輝く雲と門以外何もない。
世界は明るく白く照らし清らかな清々しい朝の空気だ。
ここは神の座す世界……あの門は入口だという事が分かる。
呪詛で穢れた身なのにこんな清らかな所に来られた事が奇跡に感じる。
《それは魂の穢れがないからよ…》
男性の美声が響くように頭上から聞こえた。
声の方を見ると大きな男神がいた。
晴綛に似ていると思う。
《晴綛は私の分御霊だからな。似ているのも当然だ。私の力を貸さなくても役目を果たすことのできる優秀なやつよ》
分御霊ということは自分で自分を褒めていることになっている。
神も人間らしいところがあると威津那は苦笑するが……ハッとして、
「……考えている事が分かるのですか?」
《神だからな。それにこの世界は思考も心も筒抜けだ》
ハルの神はニヤリと意地悪げに笑う。
「嘘偽りは一切隠せない…と言う事ですね……」
威津那はうーんと考える。
自分の闇の部分全てみんなにバレてしまって、心にやましいことは無い。
むしろ、香茂家は心が筒抜けだったので気負うことも無くなっていた。
無というわけでは無いけれど……
これが魂を心を浄化させると言う事か?と思う。
だから、香茂家に浄化の部屋があって、みんな意地悪にニヤニヤして考えてる事をのぞいていたなんて!無自覚に恐ろしすぎる一族だ。
《香茂家は特殊だからの、異界に近く血筋はこの星以外の神の血が少し入ってるからな…元は阿部野の血筋だったのが入れ替わって今に至るな。阿部野は阿部野の役割があるのだ》
ハルの神は説明した。
異星人…の血が流れてるから人の心や考えさらには気を見る事ができるのかと納得する。
《お前らの黒御足も特殊な古来の神の血筋…宿命を変える力を持つ》
「はい……いつどのように使えるかはわからないですが…」
(いや、橘が白狐になる宿命を変えたい……)
それは、この神誓いの場では不謹慎か……と口元を押さえて焦って神を見上げる。
ハルの神は眉を一瞬ピクリと上げて威津那をじっと見る。
怒っているようだと威津那は感じる。
《…………まぁ、その方が御代に障りがないの》
常に考えていた強い思いにハルの神は返事する。
「陛下のためじゃなくてもいいのですか?」
威津那は馬鹿正直に聞いてしまう。考えても同じなら支障はないだろう。
威津那の天然の行動でもあるけれど……
《お前がすることは陛下の宿命を変えるのではなく、陛下をお守りするための神誓いだ…》
たしかに陛下の宿命を変える時は命の危機を回避させるために使いたいと思うが神誓いをしてハルの神の力で守れば寿命以外変える必要はない。
《橘はお前をここまで導くための糧にもなった。》
たしかに橘がいたから穢れは払われた、だが糧という言葉に威津那はムッとする。
更にハルの神は腕を組み威津那を見下ろす…いや、見下すような視線だ。
『お前の恋する女…橘が陛下を裏切るときが来たら殺せるか?』
………橘はそんなことしない………
橘を糧に威津那に質問をハルの神はわざとしている。
そして、威津那の忠義心を試している……。
これは神誓いのための試練だと気づく。
《万が一、橘が意識を操られて、陛下の命を奪うような事があったら……お前は橘の命を消す事ができるか?》
威津那の脳裏にその時の光景が広がる。
これはハルの神がその時の映像を送っている。
そんなことになったら、あの橘は心魂が壊れてしまうだろう….
橘の心を魂を穢す前に自らの手で……
もう考えることは神に伝わる。
仮にとしてもどう考えても、陛下の命も橘を守るためにもこの手を赤く染めることを躊躇わない冷徹さは黒御足の血筋のせいだと思う。
……後で後悔することになっても……
『その瞬時の冷徹さが必要なのだ』
ハルの神は人としてあっていけないことなのに満足気だ。
ここは何もかも筒抜け魂だけの世界嘘偽り誤魔化しが効かない……本質本心だけが剥き出しになる神の世界なのだ……
《橘の肉体に溺れる前でよかったの……》
ハルの神は言う。
《男は女の肉体に溺れるものだからな。忠義も忠誠も、冷徹な思考、魂をも縛るほどにな……》
肉体では未だ結ばれなくても、妻にしようと思って幸せになろうとしていることは変わらない。
そして、陛下への忠誠も変わらないと威津那は強く思う。
《まぁ、それが人としての理だ。
いや、神とて妻はかけがえなく愛おしい……》
最高神の親神の経緯を思えばハルの神は言葉を訂正する。
「神誓いはこれで終わりですか?」
威津那は案外あっさりしていると思う。
ハルの神は,威津那と同じ身丈になると、晴綛の風貌から陛下の風貌に変わり、威津那は緊張する。
《ただし、われがお前に力を貸す代償に、陛下以外に【愛している】と愛の言霊を告げるでないぞ……?
一言でもいとおしい女に向かい言おうものなら一瞬で死ぬ。
それが陛下のために尽くす力を与える鎖だ。できるか?できなければこの場でお前を消す》
陛下のご尊顔、声で迫られて、ハルの神だとわかっていても恐れ多い。神自体畏れ多いのだが威津那は顔を真っ赤にして焦り、
「いや、そんな、陛下にもそんな、言霊言えませんっ!」
震えながら土下座した。
威津那のその態度にハルの神は満足気だ。
(橘にも軽々しく愛してると言うことを恥ずかしくて言えないのに……陛下にいった時点で泡吹いて恥ずかし死にする。確実に後悔というか恥ずかし死にするっ!)
《そういうところ気に入った。》
ハルの神は姿を元に戻し、
《さぁ、誓え、陛下に愛の言霊を》
ハルの神の姿なら言える。
【陛下を魂から尊敬し、愛しております】
威津那は偽りなき言霊で神誓いをした。
《良かろう、我の力を貸してやろう…良き働きをし、陛下のために力を振るうが良い…良き陛下の御代になるために……》
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