人形たちの箱庭

黒羽オウリ

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ムツミ_04

奉仕の練習

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 ミトとイロハは居室で過ごしていた。
 最近、ムツミの顔を見ていない。
 能力測定や接待、治験や検査などで部屋を空けることは別に珍しくはない。
 でも今回は、少し長いような気がした。
「……」
 この部屋に置かれた、誰も使用者がいない四つ目のベッド。
 でも、ムツミの荷物は、まだ片付けられていない。

 その時、不意に扉が開いた。
 警備員に連れられたムツミだった。
「ムツミ?」
 うつむいたままのムツミに、ミトが首をかしげる。
 やがて扉が閉められても、ムツミはそこに立ち尽くしたままだ。
「ムツミ? どうしたの?」
 近づいたイロハがムツミの顔をのぞきこむ。
 するとムツミは、まるでしがみつくように、イロハに抱きついた。
 そうして唐突に、大きな声を上げて泣き出した。
「ムツミ?」
 あわてるミト。
 泣きじゃくるムツミを、イロハが抱えるようにしてベッドに座らせる。
「どうしたの、ムツミ? 何があったの?」
 わあわあと泣き声を上げながら、ムツミは答えた。
「懲罰、室……わざとじゃ、ないのに……」



 ムツミはしばらくの間、泣きわめいていたが、イロハとミトに代わる代わる声をかけられ、なだめられ、やがて落ち着きを取り戻した。
 しゃくり上げながら、これまでのことを説明するムツミ。
 懲罰室で、とても寂しく怖い思いをしたこと。
 それから懲罰室に行くことになった原因。

 それらを聞くと、ミトは複雑な顔でため息をついた。
「……だから、ちゃんと覚えておいてって言ったのに」
 イロハもまた、複雑な顔でうなずく。
「無理矢理やられると苦しいから、上手いこと気持ちよくさせないと……」
「……」
 唇をかみ、顔を伏せるムツミ。
 ミトとイロハは顔を見合わせる。
「……まあ、やられてるのを覚えておけっていうのも、ちょっと難しいかな」
 イロハが言うと、ムツミはコクリとうなずいた。
 ミトが口で与える刺激があまりにも強すぎて、その動きを覚えておく余裕などなかったのである。
 ため息をついて、ミトは言った。
「しょうがないな……じゃあ今から教えてやるから、ちゃんと覚えろよ」
「え?」
「ちゃんとできれば、無理なこともあんまりされなくなるから。ね?」
「……でもっ」
 ホムンクルス同士で慰め合うことは禁止されている。
 ムツミが慌てていると、ミトが手を伸ばして、ムツミの手を取った。
 そうしてムツミの指を口に含む。
「こうやってやるんだ……」
 ムツミの指先をちゅっと吸い上げ、ミトはムツミの指を、口の奥へと招き入れた。
 それからそれを吸い上げつつ、舌を絡めながら口から出していく。
「……」
 己の指に吸い付くミトを複雑な表情で見上げるムツミ。
 やがてミトは、ムツミの指から口を離した。
「どうだ? わかったか?」
「……」
 わかったような、わからないような。
 首をかしげるムツミの前に、ミトの指が差し出される。
「ほら、同じようにやってみろ」
 ムツミは戸惑って、ベッドの傍らに立つイロハを見上げた。
 イロハが右手をヒラヒラと揺らす。
「俺は今、これだから……」
 金属とカーボンで作られた義肢。
「感覚は分かるけど、固いからムツミが苦しくなっちゃうよ」
 ムツミはミトに視線を戻す。ミトは構わないというようにうなずいた。
 意を決して、ミトの指を口に含むムツミ。
 舌に感じる他人の皮膚。
 でも、男のものよりはずっとマシだった。
「ほら、まずはそのまま、指先を舌で舐めてみろ」
「……」
 言われた通りにしてみる。
 口の中で唾液がクチュリと音を立てる。
「それから、ちゃんと口を開けて、奥の方まで誘い込むんだ」
 ムツミが口を開いて顔を前に出すと、ムツミの舌の上にミトの指が乗った。
「唇をすぼめて……吸い込むようにしてみろ」
 口全体がぎゅっとなって、舌や頰の内側がミトの指に押しつけられる。
 そのとき、ミトがちょっとだけ眉をひそめた。
「……歯が当たらないように気をつけるんだ」
「唇で歯を包むようにしてごらん」
 イロハに言われたとおりにしてみる。
 ミトがうなずく。
「うん。そうやって、頭を前後させたり、角度を変えたりして刺激するんだ」

 ムツミが迷うと、ミトがムツミの指を口に含む。
 ムツミは言われた通りにミトの指をしゃぶる。
「こうやって覚えておけば、無理なことされるのが減るから……」
 ミトとイロハに言われ、ムツミは一生懸命に、ミトの指に舌を這わせた。
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