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第25話  ルイズVS戦士グスタフ

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 戦士グスタフは、銀髪金瞳のハイエルフと対峙していた。

「小娘が! 死んでも恨むなよ!」

 隻眼の戦士が棍棒を上段に構える。

 巨漢の戦士グスタフが、棍棒を構えると威圧感がすさまじい。
 並の戦士なら、その威圧感だけで戦意を喪失するだろう。
 だが、ルイズは冷静に美しい金瞳をむけた。 

 そして、観察し終えると、即座に動き出した。

 『風の加護』が発動する。

 ルイズの肉体が風の恩寵で包まれ、超速で移動する。

 空気抵抗がなくなる上に、風がルイズを運ぶので、その速度はまさに疾風のようだ。

 グスタフは軽い驚きを示した。
 だが、歴戦の強者である彼は驚きはしたが、慌てはしなかった。

「確かに速いが、眼で追えるぞ!」

 グスタフは、ルイズめがけて棍棒を振り下ろした。
 巨大な棍棒が、ルイズの頭部を目掛けて振り下ろされる。
 ルイズの頭部に棍棒が当たる直前、ルイズの姿がグスタフの視界から消えた。

「消えた?」

 グスタフが、今度こそ、本気で驚愕した。
 敵の姿を見失うのは初めてだった。

「こちらです」

 ルイズの声が後ろから響いた。

 次の刹那、ルイズの横蹴りが、グスタフの背中に直撃した。

 ドンっ!
 という重い音が弾けた。

 『風の加護』を受けて、ルイズの横蹴りは暴風をまとっていた。
 風圧がグスタフの巨体を弾き飛ばし、彼の巨体を吹き飛ばす。

「がああっ!」

 グスタフは背中に激烈な痛みを感じた。
(馬鹿な! あんな細見の身体で、こんな威力が出るはずが……)

 有り得ない現象にグスタフは瞠目する。 
 グスタフは地面を転がり、慌てて立ち上がる。

「頑丈ですね。一応は勇者の一行という事ですか」

 銀髪金瞳のハイエルフは、どこまでも冷静にグスタフを見た。

「やるな……。ここからは本気で行くぞ」

 グスタフは、ルイズが強敵であると認めた。兜の面頬を落とし、頭部を完全に隠す。

「どうぞ」

 ルイズが冷たく応じる。

「うぉおおお!」

 グスタフが、ルイズめがけて突進した。

 全身鎧で武装された巨漢が、突撃する様は巨大な鉄塊が動いているかのようだった。

 グスタフの突撃を、ルイズは横に跳躍して避けた。
 その時、グスタフの速度が、いきなり2倍ちかく速くなった。

 動きに緩急をつけたのだ。
 わざと遅くした動きの後に、速度を急激に上げると敵は何倍もの速度に感じる。

(捉えた!)

 とグスタフは思った。

 ルイズは、グスタフを回避する為に横っ飛びになり、宙空を飛んでいた。
 いかにルイズが疾風のように速くても、宙空にいる間は急激な回避はできない。

 グスタフは棍棒を横に薙いだ。

 彼の棍棒によって、ルイズは腹部を直撃されて内臓破裂で絶命する。そうグスタフは確信した。

 だが、そう確信した刹那、風の音がした。

「なに?」

 グスタフが、目を見開く。
 ルイズがまたもグスタフの視界から消えた。

(有り得ん!)

 とグスタフが思う。
 宙空で消えるなど出来る筈が無い。

 だが、ルイズは『風の加護』で強風に身を包み、自分の肉体を風に運ばせたのだ。

 一瞬で、ルイズはグスタフの背後にまわった。

 そして、無言でロングソードを振る。
 ギンっ!

 という金属音がした。
 グスタフの兜が、割れる。

 ルイズのロングソードが、グスタフの兜を割ったのだ。
 グスタフは恐怖で動きを止めた。

(殺される)

 そう確信した。
 刹那、ゴンっという鈍い音が響く。
 ルイズが、グスタフの後頭部をロングソードの柄で思い切り叩いたのだ。

「あっ、あがっ……」 

 グスタフはマヌケな声を出して白目を剥いた。
 そして、気絶して地面に倒れた。
 ルイズは、グスタフを見た。

「うん。頑丈な人ですし、手加減したから死にはしないでしょう」

 せいぜい、たん瘤が出来る程度です、そうルイズは予測した。
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