夫である伯爵に裏切られましたが、王家に輿入れすることになりました

会長チェスターからの連絡事項

「王太子妃らしからぬ振る舞いはおやめくださいっ！責任を持った態度でお願いしますっ！」

　私はマリアの説教する声が聞こえて、目を開けた。目の前にはマリアがいて、怒った様子で私に小言を言っている。輿入れ先の王家の厩舎の前だ。

　私は嬉しくてマリアに飛びついた。この様子だと私は無事だったのかもしれない。そこへ馬番のオリヴァーがそっと近づいてきて、私に小さな紙を渡してくれた。

　私はその紙に書かれてあったメモをこっそり読んだ。会長からの連絡事項だ。

『キャロラインへ。

一体いつの間に王太子妃になったんだい？素晴らしい出世だね！
あの男はやっつけておいたよ。俺がやってきてからは、あの男は君には指一本触れることができなかったと保証しよう。こっぴどく脅しておいたよ。彼はもうあんなことはしないと思う。だが、軽はずみな行動はくれぐれも控えるように。マリアには何も話していない。君の忠実な助っ人のC.』

　私の目から涙が溢れてきて、体が熱くなった。会長には感謝しても感謝しても感謝しきれないぐらいだ。

　私は自分の行動を今後は戒めなければならない。マリアにもひたすら謝った。

　やがて晴れ間が去り、霧雨がまた降り出した空模様の中、私は馬番のオリヴァーにお礼を言うと、我が家であるハイベリー宮殿へマリアと共に戻った。
　
　――今日は運が良かっただけだわ、キャロライン。あなたは王太子閣下の妻よ。これからはふさしい振る舞いをしなければならないわ。

　あれほど王太子閣下に愛されていながら、私は危うく全てを台無しにするところだった。